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交易の国へ 道中の街編 4

つい先日続きを投稿した時の話です。

まさかここまで見て下さっている方が居るとは思いもしませんでした。

本当に評価及びお気に入りして下さり感謝です!そしてド素人の作品を読んで頂き感謝です!

これからも頑張ります!




 前回、クリスに対して我慢できず怒ってしまった僕に、不意打ちで攻撃してきた男性が登場した。

 一触即発になった運動場だったが、男性が僕に対して切り出した言葉で空気が一変した。




「小娘!ここギルド内でそれだけ本気の殺気を放つなんかご法度だ!新人がビビっちまうだろうが!先ほど適性検査前に説明されたはずだが?・・・聞いて無かったのか。」


 「えっ・・・言ってましたかそんな事?」


 僕は思わず聞き返す、まぁ・・・全部聞き流していたので聞いてないのは間違いない。

 男性は少し呆れたように溜息を付くと、彼から放たれていた気迫や殺気が消し飛んだ。ハルバードを楽に構え戦闘の構えを崩す。


 「冒険者ギルド室内での喧嘩や戦闘行為、それに近い威嚇や恫喝も禁止されている。どうしても荒くれ者どもが集まりやすい環境だから、昔は今見たいな殺気や威圧だけでも、大変なことになることが多かったそうだ。挙句、子供や新人に絡むことが多く問題ばかり起きた。」


 あー、なんだか想像できる。必ずギルドやそう言う場所に行くと起こるイベント、あれが多かったって事か。


 「そんで、対処しても一向に改善されなかった。そこで、そんな奴らが現れたら瞬時に制裁を与えるようにルール化した、そうした奴等には問答無用で叩き伏せると言うルールがな。乱暴なルールのように思えるが、こうでもしないと荒くれ者どもは理解しなかったそうだ。んで、それがようやく浸透して今に至る。でもまぁ、今でも馬鹿をやらかす奴が居るが・・・まさか新人の講習でやらかす奴が居るとは・・・初めて出会ったよ。」


 どうだ?分かったか?みたいな顔をして今度は「ニカッ」と笑いながら僕を見た。


 「なるほど、私の落ち度ですね。皆様、大変申し訳ございません。」


 僕は皆に頭を下げる。こういうのは早めに謝っていた方が良い、事実先ほどの説明を聞いていなかった僕が悪いのだから、反省しなくては。

 クリスの行動に少し短気になり過ぎてしまった、もっと大きな心で彼女の事を見なければ・・・そっちも反省。


 「助かりました、キリーさん。それと申し訳ございません、俺の教育不足です。」


 「いや、レーリックは間違ってないさ。聞いて無い奴の方が悪い。しかし、小娘・・・よく俺の不意打ちに気が付いたな、完全に死角からだったし余程の熟練者じゃなきゃ気付けない。大抵はあれで終わりなんだがな。」

 

 キリーと呼ばれた男は、レーリックを労いつつ、僕に先ほど自身が感じた疑問を聞いてきた。

 むしろどうやっていきなり背後に現れたのか僕が聞きたい位だ、転移魔法ほどの魔力量は感じなかったし、足音も聞こえなかった。


 「キリーさんでしたか?私はナナミと申します。先程は大変失礼致しました・・・今後は気を付けさせてもらいます。それで、貴方が感じた疑問についてですが、難しいことはしていません。身体強化をしてその場から飛びのいただけです。」


 僕は正直に答えた、ここで下手に誤魔化そうとすると返ってぼろが出る。より怪しく見えるし、何より信じてもらえない・・・と思う。すでに警戒されているから無駄だと思うが・・・。


 しかし、思わぬところから反応があった。・・・声の主は鎧少女だった。


 「バカな!あれは身体強化なのか!」


 鎧少女は驚愕した表情のまま叫ぶように言い放った。

 声を上げた後、一人でブツブツ呟いていた「身体強化だけであれほど・・・」なんて言葉が聞こえるが、無理に聞く必要は無いだろう。


 キリーは僕の返答を聞いてから、顎の下あたりを手で撫でながら何かを考え込んでいるみたいで、何も言ってこない。その間に、レーリックを盾にしながら、クリスが近づいてきた。

 

 「ナナミ・・・その・・・。」


 「申し訳ございませんクリス、私が堪えられず・・・つい、カッとなってしまいました。貴方は私の事を思って行動してくれていたのに、本当にごめんさない。」


 「いえ!私が悪いのです!ナナミは何も悪く無いですわ。」


 ・・・気まずい。

 僕は少しやり過ぎた、今になって後悔してきた。


 そんな僕達を見ていたレーリックは、キリーの方へ歩いて行く。キリーもレーリックに近づくと何やら喋っている。二人だけで話しているみたいだが、今の僕はそんなの聞けるくらいの余裕がない。

 レーリックが離れたタイミングで、壁際に離れていた他の3人も、僕たちの方に近づいてくる。

 僕は近づいてきたことに気付き改めて謝罪をした。


 「皆様、本当にご迷惑をおかけしました。申し訳ございません。」


 少年は鎧少女の後ろに隠れ、コソコソ覗くような態勢で僕を見ている。よほど怖かったのだろうか、これは完全に嫌われて恐れられただろうか。・・・なんだろう・・・小さい子や子供に嫌われたと思うとギュッと心が締め付けられる、例えるなら溺愛している孫にそっぽ向かれたような感覚?

 鎧少女は僕の全身をくまなく見ているような気がする、観察しているような感じだろうか。身体強化の事で凄く反応していたから、それでだろうか?

 青年は、・・・明らかに不愉快そうな顔をしている。それ位ハッキリしてくれた方がこちらも楽だ、


 3人からは返事が無く、少年だけが小声で「大丈夫です」と言っていたのが聞こえたくらいだろうか。少年の一言で、さっき締め付けられた心が少し回復した様な気がする、どうしたんだ僕?

少年とは違い明らかに不愉快な顔をしている者がいるので、そちらの方にはだいぶ嫌われてしまったようだ。


 クリスはすっかり元気が無くなり、落ち込んでいる。

 あー!!!ホント僕って人間はどうしてこうなんだ!!良く考えれば別にそんなに怒る事でもないような気がしてきた!一人で居るのが楽で、好きなように長い間生きて来て、自分の価値観だけで生活できた。

 でも、他人は自分じゃないんだから押し付けたりしちゃ駄目だったんだよ!話し合って解決したり、譲り合ったり、あるいは妥協点を探したりしなきゃ駄目なんだ!

 さっきまでの僕は、一方的に自分のルールをクリスに求めて押し付けて、勝手に怒っただけじゃないか!クリスは全然悪くない!


 「・・・クリス、本当にごめん。『僕』が悪かったよ。」


 「え?・・・ナナミ?」


 あ、つい素が出てしまった。まぁ・・・いいか。


 「おーい、皆!話があるからこっちに来てくれ。」


 重たい雰囲気の中に、レーリックの声がこだました。

 どうやら話がまとまったらしい、何かしらの罰を受けると思うが・・・反省の意味も込めてしっかり受けよう。


 「今回、問題が起きてしまったが・・・話し合いの結果、先に検査が終わっていた三人には引き続き能力測定の方を受けてもらう。問題なければ登録は出来るだろう、ランクは発行された認定書で確認するようにな。」


 「そして、問題起こした小娘だが・・・。」


 レーリックが今後の予定を言い終わり。少年と少女と青年は、無事にそのまま進めると安堵した。

 だが、まだクリスは検査を終えていない、たぶんクリスにも何かしらあるのだろうか?僕のせいで冒険者になれなかったら・・・どうやって詫びよう。


 「そのおうじ・・・クリスさん・・・だったか、仲間なんだって?クリスと小娘が一緒に冒険者になりたくて登録しに来たが、小娘の方に事情があるから検査と検定を免除して欲しいと願い出て、そこからこんな状況になった。大まかには有ってるか?」


 「ええ、そうですわ。それより、ナナミの事を『小娘』と呼ぶのは止めて頂けませんか?」


 「ええっと・・・やりにくいな~。」


 キリーは髪を乱暴に掻きむしりながら思案している。


 「ハッ、面倒だ!二人とも付いて来い、場所を変えるぞ。」


 彼はそう言うと歩き始める、向かっているのは運動場の出入り口だ。

 クリスも僕もお互いの意思を確認してから後ろに付いて行く、レーリックだけはなんだか苦笑いをしており。「まぁ、悪い様にはならないさ」と言ってきた。

 僕等にそう言ったレーリックの方は、ほかの3人を連れて受付のあった部屋へ向かって行く。能力測定に行くのだろう。

 鎧少女だけは何度かこちらを見ていたようだが、すぐにレーリックの後を追っていく。


 その後、完全に分かれてしまったので、その子達の能力検査がどうなったかわ分からなかった。



 

 僕とクリスは黙ってキリーの後を追っているのだが、一階に一度戻り上に向かう階段を上っていた。すでに最上階まで来ているのだが、ここはギルド職員が多くさらに下の階層とは違い少し豪華だ。

 

 ここまで来ると、もしかしてと思ってくる。

 その予測は当たりみたいで、一直線に伸びている廊下の向かう先には大きな扉があり、扉の上部に付いている部屋の名札が、『ギルドマスター』と書かれている。


 「まさか、・・・そうですわよね、ギルド内で起こした問題ですもの・・・。」


 クリスは悲愴な面持ちで待ち構えている扉を見ている。


 「とりあえず中に入れ、ここなら誰も聞かねーからな。」


 キリーは少し雑に扉を開け中に入った、その後ろを僕が続いたのだが・・・中に居るであろう人にノックも無で入ったら怒られるのでは?と思ったのだが・・・人の気配がない。


 「よーし!入ってくれ。寛いでくださいな、あ!扉は閉めてくれ、声が漏れるのはマズイ。」


 「はい・・・その・・・ここはギルドマスターの部屋ですわよね?誰も居ないようですが・・・いいのですか?」


 「いいのいいの!あっ・・・良いんですよ、『クリスティーナ王女』様。ここの責任者、ギルドマスターはこの俺『キリー・ハトミン』ですから。ご挨拶が遅れましたことをお許しください。」


 ははは、どうやら気が付いてたみたいだな。


 「な!いえ、私は違いますわ!ほら!髪の色が王女の色の金髪では無いでしょう?!人違いですわ!」


 「いえいえ、金髪ですよ。お忍びで回るのはそれでも良いでしょうが、ここでは無駄ですよその幻術魔法は。ここには王国一の幻術魔法でも、見抜ける奴らはそこそこ揃って居ますからね。今後は染めるなりカツラを被るなりする方をお勧めします。」


 だから早く変装道具を買いたかったんだよ!女王の余計な一言のせいで、クリスは王城からそういう類を一切持ってこなかったし、買い出しに行きたくてもここを優先したから用意できなかった!

 やはり、見抜ける人は居たんだな。はぁー・・・今日は反省点が多い日だな。


 「ちなみに、あの場で気付いていたのは、俺と検査を受けに来ていた青年だけでした。ただし、朝の混雑している時間帯、クリステューナ王女様が来た時は手練れの多くは貴方様を見抜いており気が付いてました。そいつ等から報告があったので、俺がずっと影で見守っていたんですよ。」


 「なるほど、どおりであんな不意打ちが出来たわけですか。しかも誰にも気が付かれない、上位の隠蔽魔法を得意としている、隠蔽魔法の手練れであれば・・・足音どころか魔力すら誤魔化せますね。」


 合点がいった、隠蔽魔法を使えばあの不意打ちも納得だ。よく僕も気配だけを感知魔法も使わずに感知出来たもんだ。、隠蔽魔法を使った相手を見つけ出すには、感知魔法が一番だが・・・キリーさんほどの腕前だと見つけにくいだろう。


 「なるほどね・・・流石だ王女の護衛をするだけの事はあるが・・・だが!自分の守るべき相手を、しかも一国の王女様にだ!あんなことすること事態ありえねーだろうが!自分の感情を上手くコントロール出来てねー奴は子供と大差ねーよ!!だからお前は小娘だ!」


 「・・・そう・・ですね。」


 「クリスティーナ王女様、とりあえずこいつは危険です。幸い戦士団がこの街に来ています、護衛を変えられた方が良い。滞在場所も把握してますから、そこまでは代わりにギルドから護衛を付けますよ。小娘は、ギルドで身柄を預かり俺が女王陛下へ報告します。」


 それが普通だ、王女だと知られているならその判断は正しい。

 僕がしたことは、国の要人である王女を危険な目に合わせたのだ・・・その罪は重い。

 講習を一緒に受けていた青年が、僕に対して不愉快さを前面に出したのも、クリスが王女と分かってたからだろう。キリーと同じ気持ちだったのかもしれない。


 反省すると決めたのだ、黙って拘束されよう。女王陛下にも申し訳ないことをするな、せっかく頑張って捏造したのに、問題を起こした元凶がまた戻ってきてしまうのだから。


 「駄目ですわ。」


 クリスはキリーを真っ直ぐ見据えて言った。


 「今回の事を、お母様や戦士団には報告しないで下さいませ。罰なら私も受けます、事の発端は私の我儘にあるのです。身勝手に事を進め、ナナミの気持ちも確認しないまま行動した結果です。」


 キリーは黙っている。何も言わずクリスを見ていた。


 「私は世界を見る旅をするために城を離れたのですわ。今はまだ公になっておりませんが、お母様に許可を頂き、ナナミに無理を承知でお願いをして、私が勝手に付いて来ているのですわ。そんな私に付き合ってくれているナナミにそんな酷いことはできませんわ。」


 ハッキリ口に出来ているが、どことなく弱々しいクリス。

 そんなクリスを見ているキリーは、少し困った表情になっている。


 「あー・・・えー・・・はぁー。」


 長い思案の後、大きな溜息を吐いてキリーは僕の方を見る、なんだよその顔は、説明しろってか?


 「・・・とりあえず、話せる範囲でかまいませんか?」


 「ああ、頼む。知らないままだと話がこじれそうだ。」


 キリーがギルマスの机にある椅子にドカリと腰を下ろし、僕は長椅子の方に腰を掛ける。もちろんクリスに先に座らせてからね。


 そこからは王都での出会いと王城での事件の事を話した、もちろん僕が孤高の魔女とは言わずにだ。クリスとの出会いは城下町で偶然知り合った仲で、家に招かれたら王城だったことと、女王陛下にまでお会いして良くしてもらったことなど、大分脚色しているが大まかに話した。

 正直、不老不死事件の事についてはどう話せば良いか分からず、滞在中に大きな事件があったとだけ伝えた。クリスが詳しく話せないと言えば、キリーは深くは追及しなかった。

僕が王都を離れる時になった時、どうしても付いて行きたくて条件付きだが女王陛下に許可を貰ったことまで話した。まぁ、既に条件はクリアしているのだが・・・そこは話さなくていいだろう。

その時に、僕との約束で「特別扱いはしないよ」と言っており、これがキリーや青年を誤解させてしまっているのではないかと推測した。付き人や護衛では無く、旅の仲間として行動していることもしっかり伝えた。


 「はぁー・・・。ツッコミどころはあるんだが、あまり踏み込まない方が良いような気がしてた。こういう時は深入りすると、ろくなことにならないからな。大体の事情は把握したよ、でもな?旅仲間ならあれ位の事であんなにカリカリするな、少しやり過ぎたかもしれないだろうが、落ち着いて話し合えば解決できたはずだ。」


 「はい、仰る通りです。私が怒りに任せて理性を失ってしまって、クリスにも他の方にも迷惑をおかけしました。反省しています・・・。」


 キリーは僕の返事を聞くと、今度はクリスに向かい話始める。


 「それで、王女様?僕としては今回の件、そちらの事情も確認し俺としても誤解していた所があり、『ただの旅仲間の内輪揉め』と言うことにすることは出来ますが・・・。ただギルド室内で起きた問題なので、表向きには処罰を下しておかなければならいない。そうしないと多方面から冒険者ギルドの管理体制が疑われます。本来は両方それぞれに対して、相応の罰を与えるのですが・・・王女様は多くの者に目撃されている為、貴方様に罰則を与えてしまうと反感が出てくると思われますので、今回は完全な被害者と言うことにして。小娘・・・いえ失礼、ナナミさんだけ罰するようにさせて頂きたいのですが?」


 キリーは僕らの話を聞いて、穏便に済ませる方法を提示してくれた。

 最後の方に僕を『小娘』と言っていたが、クリスが睨みを効かせて言い換えさせていた。普通に呼んでくれたと言うことは、思うところはあるが・・・飲み込んでくれたみたいだ。


 問題の解決の為に提示されて案を、クリスはしっかり聞いてたみたいだが。一つだけ納得していないようだ。


 「問題を起こしたのは私ですわ、あまり大事にしたくわないですし・・・ギルドマスターであるキリー殿がお決めになったご意見であれば賛成ですわ。・・・ですが、罰がナナミだけと言うのは納得できませんわ。」


 どうやら、罰則が僕だけにあるのが許せないようだ。


 「まぁ、そう言うと思いましたよ。王女様はお優しい方だと、巷では言われてて人気ですからね、・・・だから余計に罰も与えにくい。・・・よし!ならばこうしましょう。」


 クリスってそんなに人気があるのか、罰与えただけでここのギルドに大きく影響するくらいに。改めてクリスの持っている影響力に驚かされたかも。


 キリーは少し悩んだ後、何か思いついたように語り始める。いや・・・何か企んでいるようにも見える顔つきだ。


 「実は・・・、あ!これはまだ公開してない情報だから内密に。近々、少数の戦士団と協力して大規模な作戦をするんだ。場所は、少し東に行ったところにある大森林山なんだが、これに関することで少し協力して欲しい。」


 なんだか簡単に喋っているが、戦士団も関わってるってことは、かなり重要な話なんじゃないか?

 だが、なるほど・・・ゴーリラ戦士団長が来ていたのはその為か。数もそんなに多くなかった、あの人数で作戦に参加するんだろう。

 クリスの方を見ると、彼女も納得した顔をしていた。だが、クリスが知らなかったのはどうしてだろう?ここまで来る間に、クリスは数回は転移魔法で王城に戻っているし、女王陛下にだって会っている。この街に滞在することは話していると言ってたようだし・・・女王陛下はなぜ教えてくれなかった?


 「クリス?何も聞いていないのですか?」


 誰からとは言わなくても、クリスは気付いてくれた。真剣な顔をして記憶を探すように、指を額の所でグリグリしている。


 「何も仰っていなかったと・・・思いますわ・・・あっ。」


 「・・・心当たりがありそうですね。」


 「いえ、ただ『旅と言うのは何が起こるか分からない、それにぶつかるのもまた醍醐味』とか訳分らないことを、この街に来る前に言われましたわ。」


 ・・・女王陛下、分かっててあえて言わなかったな?

 しかも、クリスには訳の分からない言葉だったからそのまま放置したな?そのことについては何も言わないよ、ただよく覚えてたな。僕の言葉はすぐに忘れるくせに・・・まぁ母親の言葉は特別か。


 「そう言われたのであれば、体験してみなければ分からないでしょう。クリス?本当にあなたも罰を受けたいのですか?私だけで良いのですよ?」


 「問題ないですわ!しっかりと反省して、これからも貴方と共に行きますわ。」


 「よーし!決まりだな。」


 クリスの決意を聞いた瞬間、キリーは机より前に乗り出し勢いよく声を出した。

 クリスも僕もちょっと呆気にとられたが、すぐに正して真剣に話を聞く体制を取る。


 「そう硬くならなるなよ。あーそうそう、王女様には申し訳ないが『ただの旅人』ってことで、畏まった口調は止めとくよ?いちいち切り替えてられないから。それと、ほれ!」


 そう言って投げてよこした物がクリスまで届く、慌てて取ったクリスは目を瞬かせながらそれを見る。

 そこにあったのは簡単に髪の色を変えれる吹付タイプの髪染めだった。色は白銀に近いような色、金髪が見え隠れしても問題なさそうだ。


 「ここで付けていくと良い、幻術は限界があるからな。本当は眼鏡なんかの小物も良いんだが、綺麗すぎて余計目立つからな、眼鏡につられて顔を見られたら気が付かれる可能性もあるしシンプルで良いだろう。それに、バレる時は何やってもバレるからな。」


 感謝しますキリーさん。僕は心の中でそう言った。


 「さーて、話を戻そう。罰・・・と言うと、あの爺どもにバレたらどうなるか分からないから。表向きは仕事って事にしといてくれ。あ、ナナミ、お前は罰だからな?勘違いすんなよ?」


 「分かってますよ、話を進めてください!」


 「よし、クリスティーナ王女にしてもらうことは、先に言った大規模作戦の手伝いだ。この作戦には多くに冒険者が参加するんだが、それの後方部隊で物資の補充とかを手伝ってほしい。仕事って事で出てもらうわけだから、お望みのギルド認定書を出してやるよ。二人分な。」


 「え?!良いのですの?・・・その、検査もしておりませんわ。」


 「レーリックが言ってなかったか?別の方法のこと。ギルドマスターが直接判断する、本来なら難しくない依頼をやってもらって評価を下すんだが・・・それ以上に厄介な場合がある時は話をしてみるのさ。ナナミさんは一撃避けた時点で只者じゃないってことは分かったし、王女様連れてんだからなんかあんだろうとは思ってたが・・・。」


 キリーは一度話を止めて、ジッと僕とクリスを改めて見る。


 「はぁー・・・、普通に考えたらただの友達って仲でもないだろう?あの女王が大事な娘を危険な旅に出すのに、なんで護衛が一人なの・・・明らかになんか隠しているのは分かんだよ。」


 クリスは苦笑いで誤魔化そうとしているが、キリーは飽きれながらだが何かを探るような眼を向けたまま僕達の様子を見ている。

 ここまで言われたら、もう隠し事はしていると言った方が良いのかな?そう思い、クリスの方に確認をしてから僕が話す。


 「キリーさん、申し訳ございません。隠しているのは事実です・・・。ただ、それは教えられません。」


 「いや、悪いな。わざわざ確認することでもなかったな、嫌な言い方になっちまった。冒険者は相手の詮索はするなって暗黙のルールみたいなのがあるんだ、もうこれ以上は何も言わないさ。」


 「こちらも我儘を言いまして申し訳ございません。」


 僕が言い終えると、キリーの表情が柔らかくなった。

 すると突然立ち上がり、室内にある少し大きめの棚の前に移動する。何をするのかと目で追ったら、扉を開け棚から人数分のティーセットを出してきた。

 キリーは「事情聴取はここまで、これからは仕事の話」と言いながら、紅茶の用意を始めた。

 辺りに甘く、そして少し渋い香りが広がるのが分かる。王城でキスハさんと沢山飲んだ紅茶とは少し違うようだが・・・。


 「どうだ?少しは気分転換になるだろ?王城の一級品とは違うが、これはこれで旨いんだ。まずは一口飲んでみな、すぐに違いが分かる。」


 そう言われ、既に配られた紅茶を見る。見た目は普通の紅茶だろうが?そう思いながら一口頂く。


 「!?!?!?!?!?」


 口に入れた瞬間衝撃的だった、『激渋』匂いからは想像できない、顔を歪ませる程の暴力的な渋さだ。

 クリスも一口飲んでいたようで、同じように混乱している。なんとか噴出さないように必死で口を押さえているようだ。

 キリーの方を見やると、ニヤニヤしながらこちらを見ている。しかし衝撃的な事実に気が付く、彼も僕達と同じ紅茶を当たり前のように口にして、平気な顔をしている。


 「ごほっ!こ、これはなんですの?!人が飲める物ではありませんわ!」


 「おや?お気に召さないか?こんなに美味しいのに。」


 「キリー殿、貴方は同じ物と見せかけて実は普通なんじゃありませんこと?!」


 それならこっちを飲むか?と言わんばかりに、クリスへ自分の紅茶を渡す。クリスは勢いよくそれを飲んだのだが・・・「ウブゥッ!」とまた表情が大暴れし始めた。

 だが、クリスが飲んでくれたことで飲み物は同じだと確信したのだが。飲みなれているキリーの姿を見ると、彼の舌はどうなっているのか不安になる。

 そう疑い始めた時だったか。


 「あれ?あれだけ渋かった口の中が・・・果実の香り?いえ甘み?」


 「おっ、変わったようだな。」


 先ほどまで口の中を蹂躙していた渋さが、徐々に香り高くまるでリンゴのような甘さへ変わった。それはさらに強くなり、舌の上ではまるで飴をなめているような感覚になっていた。


 「これはな、『苦いリンゴ』っていう紅茶だ。だが、使っている葉はリンゴとは全然関係ない物でな?ここら辺の森にある高さ1メートルも無い、小さな木の若葉が材料なんだ。俺は好きで良く飲むが、口にした時の渋さのせいであまり人気が無いんだ。」


 「あら?本当ですわ・・・甘い。ただ、飲み始めが渋すぎますわ。」


 「俺は好きなんだがなー。あまりに人気が無いんで布教の意味合いも込めて、ここの部屋へ来た者にはいつも出しているんだ。どうだ?気に入ったか?」


 お得意の「ニカッ」とした笑顔を見せてクリスから戻ってきた紅茶をまた飲む。

 僕は甘さが消え始めた口に再度紅茶を流し入れたが、・・・この渋さは耐えられそうにない。この先に至高の甘い旨さが待っていたとしても、積極的に飲もうとは思わない。

 研究で気持ちを切り替えるとかで飲むなら良さそうかもしれない・・・後で購入しておこう。



 「さてっと」とキリーが改めて話す体制を取った。

 クリスはまだ渋さと戦っているのか少しに顔をしているが、手を止めてく聞く体制に入る。


 「気持ちを切り替えた所で、仕事の話をしようか。」






ここまで読んで頂きありがとうございます。

いや、本当にうれしいです。と言うか本当に呼んでくれる人居たら良いな、と軽く考えておりまして。既に僕の想像だにしない結果になっています。

次回ですが、もしかしたら遅れるかも知れません、作成時間が少し少なくなってるので今より遅くなるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。


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