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閉ざした世界に革命を。  作者: 凛月
第3章 「外の世界」
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アレン

 泉から戻り小一時間ほど経ってアレンが様子を見に来てくれた


「おはようタカキ。昨日は眠れたか?」


「うん、おかげさまでね」


「うし、じゃあ親父んとこ行くか。ほかの三人はどうする?」


 さてどうしよう。僕だけでいく・・・いやユンファは連れていきたい。となると二人も連れて行かないといけないか


「全員でいくよ。その方が話も早そうだし。呼んでくる」


「おう」


 部屋で何やら密会している三人を呼んで集会場に向かった


 向かう途中、入口の守備にむかう村守の二人人と会った。交代の時間なんだろう


「お!お前タカキだよな。昨日のはすごかったぜ。婿に来るなら大歓迎だからな!」


「だな、カサンドラさんの相手は大変だろうが頑張れよ」


 なぜか村人の中でそういう認識になっているみたいだ


 昨日大声で言ったもんなカサンドラさん・・・


「あはは、あれは冗談ですよ。五日後には村を立ちますので婿入りはしません」


「なんだ?そうなのか・・・んならあと五日よろしくな」


 握手だけして別れた。なぜか両手でしっかり握られたけどあれはいったい・・・


 後ろから強い殺気を感じながら集会所へと足を向け直した


 途中途中手を振ってくれたり挨拶をくれたりする。印象は悪くないみたいだ


 華蓮のことは全く見てなかった。というより見ないようにしていた。目を合わせたら気を失うと思ったんだろうな


「ふふふ大人気ね、タカキ」


「ありがたい・・・って言ってもいいのかわからないけどね・・・はは」


 ユンファは楽しそうにしている。他人事だと思ってるなこの人


 華蓮からの殺気は消えていた。それどころかなぜか誇らしげである。あなた怖がられてますよ?


 集会所の垂れ幕をくぐると村長とカサンドラさんが待っていた


「おはようございます。今日は長老さんいないんですね」


「おはよう。ああ、普段は家に引っ込んでるからな。出てくる方が珍しい」


 かなりご高齢だもんな。昨日は助言を伝えるためだったし、今日いないのは当然か


 ・・・カサンドラさんがいるのはなんでなんだろう


「おし、じゃあ始めるか。まずはイズモ様んとこで何があったか言える範囲でいい教えてくれ」


「そうですね。では・・・・・


 僕は旅の目的、その目的の達成するにはどうしたらいいか、それにイズモ様にも目的あることを話した


「しかしイズモ様がなあ・・・俺の印象と全く違うぜ。もしかして最初から嫌われてたんじゃねえだろうな・・・」


「そんなこと思ってないですよ・・・たぶん」


 村長に対する印象も聞いておけばよかったかな


 あの時結界の中に入れなかったのをよほど気にしているみたいだ


「まあこれからいなくなる神様にあーだこーだ言っても仕方ねえ。だが世話になったんだ恩は返す。旅に必要なものがあったら何でも言え揃えられるもんなら用意してやるよ」


「ありがとうございます。助かります」


 これで協力は取り付けられた。結局全部僕が話したけど結果よければすべて良しだ


「ちょっといいか」


 アレンだ。どうやら何か言いたいことがあるらしい。それに真剣な面持ちだ


「俺も連れて行ってくれねえか」


 それは・・・


「お前それがどういう意味か分かってんのか?村守の仕事はどうすんだ」


 アレンは村守の一人だ。それに狩りもしている


 次の族長もアレンだ


「それは・・・」


「ダメだよ、アレン。僕らの旅は最低でも2年はかかる。それにさっき話したよね命がけだって」


「わかってる。それでも親父、タカキ頼む」


 アレンは地面に頭をこすりつける


 何がアレンをそこまで動かしてるのかわからない


 村長は怒っているというより困惑のほうが強そうだ。実の息子がいきなり旅に出るというんだ。それも命がけの


 親としては止めねばならない。止めたいんだ


「どうして行きたい。その理由を聞かせろ」


 カサンドラさんは・・・冷静だ。もしかしたらそう装っているだけかもしれないけど


 実の弟で家族だ。村長と同じ気持ちなんだろう


「昨日実感したんだよ今のままじゃダメだって。これじゃ守るもんもまもれねえってな」


 ・・・昨日の試合か


 確かに弱かった。でも比べる相手が悪い


 僕は人間同士の殺し合い、異能力者同士の殺し合いを数は少ないけどこなしてきた


 でもアレンは違う。加護は殺し合いの道具ではなく、狩りの、そして生活に使われてきたものだ


 確かに制御はすごい。あの技には驚かされた


 それでも対人の訓練をしていないアレンはおそらくジンにもユンファにも勝てない


 でも今の生活なら十分なほどの戦力にはなるはずだ。なのに・・・


「もしも敵が、タカキみたいな化け物が攻めてきたとしたら俺は何の役にも立てねえ。だから強くなりてえんだ。旅についていけば強くなれるはずだろ」


「・・・今までそんなことはなかった。で終わらせられない話だな」


 敵か・・・もし僕らが侵略者だとしたらこんな村一時間も経たずに壊滅させられる


 村長は眉間にしわを寄せ俯いている。どんな感情なのかはわからない


「最低でも二年、長くねえとは言えない。だがその分だけ強くなって戻れば村のためにもなる、だろ?親父」


 アレンは本気だ。きっと反対を押し切ってでもついてくる、そういう覚悟を感じる


「・・・だが死んじまったら意味がねえ。ついていける保証もねえ。今のお前はただの死に急いでるクソガキだぞ」


「否定はしねえよ。だがそれで怯むようなら頭なんて下げてねえ」


 僕が必ず守る・・・とは言えない


 破壊の神との戦闘が待っている


 それ以前にも何か強大な力を持っている何かとの先頭がないとは言えない


 でもアレンは守られることを望んでない。ただ自分が強くなる、望みはそれだけ


「・・・いいんじゃねえか?親父。アレンが頭を下げるなんて初めてだ。我儘くらい聞いてやろうぜ」


 我儘って・・・それでいいのか。でも家族の問題だ、僕が口出すことじゃない


 村長はまだ俯いている。引き留める言葉を考えているのか、自分の納得がいく許す理由を探しているのか・・・


「・・・」


「親父!」


 アレンはまた額を地面にこすりつける。血が流れるほどに


「タカキ」


「なんでしょう」


「お前らの旅にこいつはついていけると思うか」


「今のままでは無理でしょう」


 さっき思った通りだ。保証できないのに無責任なことは言えない


 だけど、アレンの意志も尊重してやりたい


 だから


「ですが、何かを守りたいと思いは痛いほどわかります。僕がここまでやってこれたのもそれがあったからです」


 革命軍に入ったのも、捜索隊の訓練に死に物狂いでくらいついたのも全部守りたいものを守る力が欲しかったからだ


「だから僕はアレンの覚悟を無下にはしたくありません。ので・・・」


 覚悟があるというのならあれにも耐えられるはずだ


「一つ条件を付けませんか?」


「条件・・・それはなんだ」


「僕が強くなるために続けてきた運動。それを僕らが立つ四日後までに半分こなせるようになれば許可してあげてください。できたなら旅についてきても問題ないでしょう」


 アレンには特戦式体操をこなしてもらう


「運動だあ?それでホントに・・・それはどれだけきついんだ?」


 村長の言葉が少し詰まった気がした。僕の後ろを見て


 華蓮達がどうしたんだろ


 そう思ってチラッと見てみた


 ・・・とんでもない顔をしている


「ほんとにあれやらせるつもり・・・?」


「連れて行かない理由を考えるのはいいんだけど少し厳しすぎないかしら」


「俺達にまでやらせるとか言わないよな・・・」


 そこまで言う?それに一応連れていくための理由づけなんだけど・・・


 僕は村長に答えるために向き直る


 ・・・僕選択間違えたのかな


「えっと、僕が初めてやった時は汗が止まらなくなって目を回しましたね。それから顔からいろんなものが出て気絶しました」


 そういえば、こんなことあったな。まあでも鍛えているアレンならこなせるはずだ


 だからの連れていく理由だ


「・・・わかった、アレンこなしてみせろ。できりゃ許可を出してやる」


「親父!」


 顔を上げたアレンは希望に満ちた顔をしている。さてそれがどこまで続くか・・・


「タカキありがとな!どんなのかは知らねえがこなして見せるぜ!」


 後ろからはため息が聞こえるけど。無視しよう


「ふむ・・・アレンだけではどれほどのものかわからないな。あたしと親父も参加しよう」


「な、なぜ俺までする必要がある!」


「最後まで反対していたのは親父だ。ならばその身で確かめ、許可を出さねばならんだろう」


 すごい嫌そうな顔してるな・・・


 でも二人なら普通にこなせるはずだ


 僕も久しぶりにするからなあ。全部できるか心配だ


「では時間ができたらやりましょう」


「なら今すぐやろうぜ!」


 めちゃくちゃやる気だ。そりゃそうか望みが叶うかどうかかかってるんだもんな


 運動って単語だけで判断していたら可哀そうだけど・・・


「お二人はどうしますか?」


「私は問題ない」


「・・・村の見回りがあるから、少し待ってく


「いつも夕方だろう。逃げるな親父」


「わかったよ・・・」


 この村で一番権力を持ってるのは村長ではなくカサンドラさんみたいだな


「三人もやる?」


「「「やらない」」」


 お見事


 僕らは外に出てキャンプファイヤーがあったところで体操をすることにした


「では、ストレッチからやりましょうか」


 それから地獄の特訓が始まった

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