暴露
どうやらジンは今の今まで僕と華蓮が兄弟だと信じていたらしい
「どう考えても兄弟って雰囲気じゃなかったでしょ?ほんとに今まで気づかなかったの?」
「あ、いやだってほとんど兄弟なんて見たことねえし。タカキらが普通だと思ってたけど・・・違うのか?」
完全に信じてた顔だこれ。ユンファさんは気づいてたみたいだし・・・もしかしてあの時嘘ついたの皆わかってて見逃してたってこと?
何それ。恥ずかしくなってきた
「二人が兄弟ってなったら、人類みな兄弟ってのと同じ意味になるじゃない。どう考えても血のつながりはないでしょ」
人類みな兄弟って・・・そこまで大層な関係じゃないよ、僕ら
「幼馴染みたいなもんだよ。小さいころから華蓮のことを見てきたからね。そう苦ではなかったよ?」
「そうだったのか。。兄弟じゃないったなったら・・・うーん」
ジンが何やら考えている。よからぬこと・・・ってわけでもなさそうだ
この二人にならいろいろ話してもいいんだろうけど・・・まあそれは華蓮に任せよう
「どれくらいの時から面識があるの?」
「そうだね・・・華蓮が三歳くらいの時からかな?」
「そ、そう・・・」
ユンファが頭を抱えて唸りだした
変なこと言ってないけど・・・いってないよね?
「これは先が思いやられるわね・・・」
「なんのこと?」
「いいえ、こっちの話よ」
何か心配事があるのか・・・話してくれれば力になるけど・・・
そんな雰囲気しないしまかせよう
「なあ、革命軍に来る前のカレンってどんなだったんだ?」
さっきあれだけ驚いてたし、聞かれるとは思ってたけど・・・どこから話そうか
「そうだなー小さい頃は子鴨みたいにどこ行くにもついてきてたね」
あの頃はただただかわいかったなあ
「よく鼻水垂らして僕の服ぐちょぐちょにしたりさ」
こすりつけた後僕の顔見て満足そうに見て笑いながら逃げたり・・・
「家に止まった時は絶対一緒にお風呂に入って一緒に寝てたっけ」
そういえば泡ぶろが好きだったっけ。今でもしてるのかな?
「まあ小さい頃はそんなだったかなー。小学校入ってからはね・・・あれどうしたの?」
二人は僕を見てなぜか青ざめてる
そんなひどい話したかな?
「そ、そこまで引くような顔・・・」
そこで気づいた
二人が僕じゃなくて後ろの方を見ていることに
・・・ははは、ま、まさかね。だってさっき出てったばっかだし・・・
恐る恐る振り返ってみる
そこには華蓮が立っていた
俯いているけどこれは悲しみからくるものじゃない
だって方に力が入って握られた拳が小刻みに振動しているもの
それにとんでもなく耳が赤い。たぶん顔も・・・
これはマズイ
「あ、えっと。ね。二人が聞きたいっていうから仕方なくね・・・」
華蓮は無言でドスドスと足音を立てて近づいてきた
「や、あの別に悪口いってたわ」
僕は言葉途中に首根っこを掴まれて部屋の外へ引きづられた
これは誰もいないところでヤられるやつだ・・・
引きずられて外に出る最中アレンとすれ違った
華蓮の顔を見て青ざめ道を開ける。どんな顔してるんだこの子・・・
「ほ、ほどほどになぁ・・・」
今にも消えそうな憐みの声が聞こえる
帰りが早かったのは準備が整って呼びに来たからだったみたいだ
「ね、ねえ。ごめんね?別に悪気が・・・」
謝罪なんて聞き入れてくれるはずもなく、何ならつかむ力が強くなり進む速度も速くなった
引きずられる先は多分村の外だ・・・オオカミにでも食べさせるきなのか・・・ヤバい
村の外まで来て華蓮は立ち止まった。村人の声は聞こえるけど近くにはいなさそう
僕の首はそこで解放された。木に叩きつけられる形で・・・
僕はその場にへたり込んだ。異能力のおかげで痛みはないけどこのあとが怖い
華蓮は僕に近づき、壁ドンならぬ木ドンする。顔が近い・・・怖い
それに村の明かりが逆光になって表情が見えないからもっと怖い
暗視は・・・しないでおこう。これで怖い顔してたらちびりそう
「ねえ」
「は、はい」
「何考えてんのよ」
その声はドスのきいた恐ろし・・・くわなかった。逆に震えてる
「も、もしかして恥ずかしかった?」
「・・・」
あたりだ・・・
ってことは・・・許してくれない確率がもっと上がった
「私、そんなに鼻水垂らしてたの?思い違いじゃなくて?」
「え、うん。覚えてるし・・・」
忘れるはずがない。一日に数回服を変えるくらいにはひどかったんだから
「お風呂のこと・・・ちゃんとは覚えてないわよね・・・?」
「一緒に入ったことくらいしか」
数えきれないくらいには入ってるしいちいち覚えてない・・・
「あ、滑って頭ぶつけてそのまま暴走したっけ。お風呂全改修する羽目になった事件」
「それ以外は?」
また顔が近づいた。近い近い
それ以外って・・・華蓮が恥ずかしがるようなことかな
でも二人に話したのはあれれだけだし
「な、ないよ」
「ほんとに?」
「ほんとに!」
華蓮はなぜかほっとしたようで顔を離した
「これ以上話すのは禁止よ。聞かれても答えないで。次やったら責任取ってもらうから」
「は、はい」
何されるかわからないけどきっとろくでもないことだ
気をつけよ。
華蓮は満足したようで村のほうに歩いていく
叩きつけられただけで他には何もなかった。珍しい
「もう許してくれたの?」
立ち止まってこっちを向いた。さっきよりは表情が見える。普段の華蓮だ
「別に最初から怒ってないわよ。それとも何?顔が変わるまで殴られたいの?」
「いえ、遠慮しときます」
もう余計なこと言わないでおこう
「あとさ・・・」
「なに?」
まだ何か言いたげだ。でも怒ってる風には見えない
「世話とか焼かなくていいわよ。困ったときに助けてくれればそれでいい」
「うん、わかった」
「それだけ。準備終わったらしいし行くわよ」
華蓮はすでに自立し始めてたんだ。依存してるのは僕の方だった
二人の見立ては間違ってはいない。いらないお節介ってわけでもない
ちゃんと僕らのことを、華蓮のことを考えたうえで言ってくれている
大人が面倒を見てくれていればこんなことにはならなかったかもな
まあ、そんなこと言っててもしょうがないし少しずつ学んでいけばいいや
僕は立ち上がって華蓮の後に続いた




