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閉ざした世界に革命を。  作者: 凛月
第3章 「外の世界」
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壁を抜ける方法2

 僕らが戦わないといけない相手「破壊の神ガゾス」


 その神様を僕は知らない。なのに背筋は凍り付き冷や汗が出た


「狂ったあやつにはそれに興味などないはずじゃ。あやつの巨体のどこかに引っかかっていると考えるのが妥当じゃろ」


「巨体・・・ですか」


「そうじゃ。高さで言えば二百ほど、尾も含めれば三百は下らんじゃろう」


 ・・・イズモ様の言い方からするとおそらくセンチじゃなくてメートルだ


 僕は息をのむ。華蓮は何かを悟ったように僕の手を握ってきた・・・冷たい


「ただ・・・もしじゃ。あやつの体内に入っておる場合・・・な・・・」


 言わずともわかる、殺さなければならない


 神を殺す。イズモ様にさえ一撃を入れられない僕たちだ、イズモ様が青ざめ絶望するほどの相手を殺すなんて・・・


「勝ち筋が完全にないってわけじゃないのよね?」


「・・・そうじゃな。集まった者たちで作戦を練ればどうにか・・・」


「確率としてはどうでしょう」


「わからぬ。一か八か。死か生か。やらねばなんともいえぬ」


 ・・・それならばいっそのこと中に戻ることをやめて外で生きることを選択した方がいいんじゃないか


 死んでしまっては元も子も・・・


「・・・わかったわ、できる限りやってみましょう」


「華蓮・・・」


「ユンファとタオのためにもやらないと。それにイズモ様の計画も進まないでしょ」


 そうだけど・・・でも・・・


 震えているじゃないか・・・


「その勇気に感謝を。あやつは最後の最後に回しても構わないのじゃ。その間にあの方の使いが壁を抜けてくるかもしれぬ。それを待つのも手じゃ」


「その使いって言うのは強いの?」


「強い。あやつには敵わないじゃろうがそれでも確実に戦力になる」


 本気の目だ。本当に盤面を覆す力があるのかもしれない


 それなら勝機はあるか・・・


「待ったとして他の物を集めるのにどれだけかかるかわかりますか?」


「順当に行けば二年ほどで集まるじゃろう。この二百年ただ待っただけではない、一度しか使えぬが転移陣を物がある近くに設置した。もし戻るような事態に落ちいればその分時間はかかるのじゃが・・・」


 順当に行けば二年。中から使いの人が来るのはおそらく六年後


 その間の四年で戦力を集めて最後のものを・・・猶予は全然ある


「一方通行ということは進行の順序はすでに決まっているってことですか?」


「そうじゃな。時間がかかりそうなものを優先して決めておる」


 すでに場所がわかっているというのは物凄く助かる


 二百年かけて・・・か


 イズモ様の執念が見て取れる


 しかし破壊の・・・できれば相対したくない。できればどこかで落ちてくれることを願おう


「ならばできるだけ集めてみましょう。最後のものは・・・その時にということで。みんなはどうする」


 僕だけで決めるわけにはいかない


 華蓮はついてくる気がする。でも二人はわからない


「いいぜ、タカキが決めたんならついていく。けど力不足って感じたら気にせずおいてってくれ」


「・・・そうだね。無理するのはよくない。だからジンの判断で決めて欲しい」


 あとは・・・


 僕はユンファの方を見る


「もちろん行くわ。中に戻るのに必要なのだとしたら私も行かないといけない。行かないなんて無責任な選択はしないわ」


「うん。ユンファならそういうと思った。がんばろう」


 一応華蓮も・・・


「で、いつから始めるの?」


 僕の問いなど待つことはしない。華蓮ほど心強い味方はいないな


「今から・・・と言いたいところじゃがわしにも旅の準備がいる。それまで村で過ごすといい」


「わかりま・・・あれ、イズモ様はここから動けないのでは?」


 もしかしてボケた・・・なんて思うのは不敬だ


 何か方法が・・・


「そうじゃな。ワシもお主らに任せて待っているつもりじゃったが、ヨモの血を継ぐ者がいたのなら話は別じゃ。華蓮の中に身を移すことでここから離れることができるのじゃ」


 ・・・え?


「私の中に?どういうことよ」


「ヨモの血筋は獣の神を身におろし、その力を使いこなすことができるのじゃよ」


 ・・・え?


「そんなの聞いたことないんだけど。両親からも知らされてないし・・・」


「じゃろうな、純潔とは程遠く儀もしておらんのじゃろう。じゃが薄くとも流れておる、それにその赤髪と碧の瞳。これは初代のものと同じじゃ。先祖返りというやつじゃな」


 ・・・新事実判明


 華蓮は特別なんだとはわかってた。でもそれは特等級の異能力者としてだ


 ヨモに先祖返り・・・そんなこと聞いたこともない


 それに篤嶋の謎、神様との関わり・・・


 本家は確実に何か重要なことを隠している。中に戻ったあとの目的ができた


 おそらく混じり者である間は知れない情報なんだろう。絶対に聞き出してやる


 それが華蓮のは平穏につながるのであれば異能力なんて喜んで捨てよう


「・・・そう。じゃあイズモ様の力も使えるってことよね」


「いや、混じっている間は満足に使えんじゃろう。わしが入るのは魂じゃ入るのに問題はない。じゃが力を使うのには血を介す必要があるのじゃ」


「魂って・・・私に害はないのよね?」


「安心せい。わしとお主が望まねば完全に交わることはないのじゃ。交わったところでわしの自我が消えるだけ、お主に害は全くない。それがヨモの一族じゃ」


 イズモ様は華蓮を諭すように語る。少し悲しそうなのは気のせいだろうか


 そりゃそうか。自我が消えるってことは死と同意、そして二人が望むということはイズモ様がそれを受け入れるってことだ


 伝えるだけでもつらいだろう


「わかったわ、協力する。それにイズモ様がいたほうが見つけやすいんでしょ?」


「そうじゃな。陣を置いたと言ってもおおよその場所じゃからな。じゃが近づけばすぐに見つけられる」


 これで旅の仲間が一人増えた。戦力も大幅に上がって壁に二歩も三歩も近づけた気がする


 外での目標ができたのは上々だ。何もわからず進むのと天と地の差がある


 こっちに来ておそらく一か月かそこらだ。ここから六年かかるとしても早いことに変わりはない


「わしの準備が終わるまでしばし時間がかかる。そうじゃな・・・五日後に出発じゃ。それまでに準備を終わらせておけ」


「わかりました。では五日後に」


「うむ。待っておる。ミンシャも準備しておけ」


 少し離れた場所のミンシャに話しかけた


 無言でうなずく


「ミンシャもですか?」


「あやつがおれば言葉に困らぬ」


 そういえば、海村の人と会話できたのもミンシャが何かしてくれたおかげだったな


 なるほど。ミンシャの荷物は・・・オオカミに任せよう


 僕らは一礼して広場をあとにした


 島からは何もしなくても出ることができた。入るときは多分、気になれるための時間稼ぎみたいなものだったんだろう。それでも気おされたけど・・・


「すごかったな、イズモ様」


「ええ、華蓮で大きな気にはなれていたと思っていたけど本当の神様というのにはなれる気がしないわ。旅が少し心配ね」


 二人はまだ余韻が残っているみたいだ。これも血が関係してるんだろう


 イズモ様に会っていろんなことを知れた。でもその分謎も増えた


 でも今は目の前のことに集中しなくちゃな


 帰ろうとオオカミたちのほうに行こうとしたら華蓮が急に立ち止まった


 なんだろ、聞き忘れかな


「・・・何してるの?キキ」


 オオカミたちを見ると全員服従のポーズをしていた


 ・・・何してるんだ


「イズモ様関係ってことは確実だね」


「そうね。獣の神って言ってたしキキたちも感じ取ったのかも。旅、大丈夫かしら・・・」


 ちょっと不安になってきたな


 華蓮の中に入ることでどうにか気を抑えられたらいいんだけど


「とりあえず村に戻ろう。みんなが宴の準備をしてくれているらしいし」


 もう日も落ちかかっている。手伝えることがあるなら手伝おう


 ・・・日が?


 僕は空を二度見した


 ここに来たのは昼にもなってなかったはずだ


 中にいたのも三時間くらい・・・だったはず・・・


 でもそう気にするようなことでもないか


 とりあえず村に戻ろう


 華蓮達はオオカミを起こしてまたがる


 キキが走り出すとほかのオオカミたちも続いて森に走って行った


 相変わらず早い、容赦ないなあもう・・・


 僕もそのあとに続いた


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