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閉ざした世界に革命を。  作者: 凛月
第3章 「外の世界」
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壁を抜ける方法1

「わしも詳しくは知らんのじゃ」


 ・・・マジですか。


 壁について詳しいイズモ様でも中への抜け方を知らないらしい


 三人とも落胆している。僕もそうなんだけど・・・


 ユンファに至ってはこの世の終わりだと言わんばかりにうつむいてしまっている


 イズモ様が悪いわけではない。ただ一からゼロに戻ってしまっただけだ


「村の人からイズモ様は元々中の神様だと聞いたのですが・・・どうやって外に?」


「ああ、確かに中・・・というより壁の張られる前の日本に、じゃな」


 日本に神様が・・・気になる。でもそれは後だ


「それに外にで出た、というより壁が完全に閉じる前に逃がしてもらった。が正しいのじゃ」


「逃がしてもらった、ですか。もしかしてその方が中へ戻る方法を?」


「そうじゃ」

 

 イズモ様は頷く。ユンファも希望を取り戻したようにまた顔を上げた


「では、その方に会うことができれば・・・」


「そうしたいのは山々じゃ。じゃが今は中に囚われておる。じゃから詳しくはわからんのじゃ」


 中に・・・


 中にいたころに外の情報を知らないのと同じで、ここからじゃ中の情報を知ることができない


 囚われている。例えとしてはよく言えてるな・・・


「詳しくはわからないということは多少は知っているということですか?」


「ああ、知っておる。じゃがそのために必要なものが各地に散らばってしまっておっての・・・」


 だったらその必要なものを揃えれば中に戻れる。希望がゼロになった訳じゃなかった


「どこにあるのかも大体はわかるが、わしは今のままじゃ動くことができぬから集められなくてな」


「動けない・・・ですか」


 イズモ様は頷く


「今のワシじゃここで結界を張るのが精いっぱいじゃからな。歯がゆいよ・・・」


「神様というのはそういうものなんですか」


「そうじゃ。神の降り立った地、わしでいえば日本の小島じゃな。普通はそこでしか存在できぬのじゃ」


 そういって天を見るイズモ様はどこか寂しそうだ。降り立った地・・・故郷みたいなものなのかな


「わしがこうして消えずにいられるのはちょっとしたずるをしておるからなのじゃ。詳しくは・・・」


「言えないんですよね」


「いや、本当に知らぬ。ただ動いてはならないということだけは本能でわかる」


 口をはさんでしまったことに後悔する。機嫌を損ねなくてよかった


 神様も万能ってわけじゃないんだな


 こんな狭いところで二百年。僕なら気がおかしくなる


「なるほど・・・だから集めるために僕たちを待っていたということですか」


「そうじゃ」


 何を希望として待っていたんだろう


 いつ来るかもわからない僕たちを待ち続けて・・・


「集めるのを村の人に頼めば・・・。それじゃダメだったということですね」


 そんなこと試したに決まってる。できなかったからこうして閉じこもっているんだ


「常人じゃとそれを見れば気がふれるのでな、見つけてもここまで持ってこれぬのじゃ」


「それを僕たちなら気がふれずにできると」


「ああ、篤嶋の血を引いたお主ならばできる。じゃから待っておったのじゃ」


 イズモ様は真剣な眼差しで僕を見ている


 篤嶋か・・・。今は教えてもらえない家系の秘密・・・


 異能力者じゃなくなるまでお預けか


「ではそれをここまで持ってくれば壁を抜けられるということですね」


「それがの・・・」


 まずい。嫌な予感がする・・・


「使うのに必要な入れ物が中に取り残されておっての」


 ・・・感情が上下しすぎて何がなんやらわからなくなってきた


 見えた希望の光がまた閉じた


「ではどうすれば・・・」


「集めるだけ集めて中から出てくるのを待つしかないのじゃ」


 待つか・・・イズモ様は二百年間ずっと待ってた


 ここまで生きていられるのはおそらく神様だからだ


「ですが私たちみたいな人間じゃイズモ様のようには・・・」


 ユンファがまた俯く


 どうにかならないものか・・・インシーさんが言った言葉を覚えていれば何とかなったのかな・・・


「そう悲観するな。お主らが出てきたということはじきに来るじゃろう。この計画を考えたのはお主らを外に出したお方じゃからの」


「それはどれほどでしょう!」


「そうじゃな・・・こちらの時間が三年ほど早いとなると・・・六年かそこらじゃなかろうか」


 それでも六年。中で言うとおおよそ二年か・・・


 でもユンファの目には光が宿った


 もっとかかると思ってたんだ。それが二年。ユンファにとってはたった二年なんだろう


 華蓮とジンはそこまで気にしてなさそうだけど・・・


「必要な物ってどれほどいるのでしょう。それに六年で集め終わりますかね?」


「全部で六つじゃ・・・場所もある程度わかっておるしそう時間がかかるわけではない。神が持って居る可能性があるのが三つほど、そのうち二つは交渉でどうにかなるじゃろう。何を求められるかわからぬが命まで取られぬはずじゃ」


 交渉が必要ということはかなり貴重な物なんだろう


 イズモ様と違って降り立った地がこの辺の神様なら壁を抜ける必要はないもんな


 代わりになるものを渡さないといけないってことか


 イズモ様はそこで黙り込んだ


 どうしたんだろう


「それであと一つというのは・・・?」


「・・・その一つが問題でな・・・おそらくここに居る者だけでは手に入らんじゃろう」


「なにか特別な技能をもった人がいるとかですかね?それとも単純に人数が足りないとか」


 イズモ様は言いずらそうにしている。耳も尻尾も垂れ下がってしまった。眉間にしわが寄っている


「・・・戦力が足りんのじゃ」


「力を示さなければ譲ってくれないとか?」


 いや、そんなことでこんな絶望に満ちた顔はしない


「力を示す・・・あながち間違っておらん。その神は大戦時に狂ってしまっての・・・声など届かぬ」


 狂ってしまった神・・・交渉どころじゃないってことか


 イズモ様と同等だとしたら戦力は確実に足りない・・・


「私の異能力をなくしたとしても足らないってこと?」


「確かにお主の力は強大じゃ。じゃが相手が悪い」


「その相手と言うのは・・・」


 イズモ様が俯く。その顔は絶望に満ちて溢れた


「破壊の神、ガゾスじゃ」


 ・・・顔から血の気が引いていく


 その神様を僕は知らない。聞いたこともない。見たこともない


 でもその名を聞いた瞬間体が震えたのを感じた

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