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閉ざした世界に革命を。  作者: 凛月
第3章 「外の世界」
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イズモ様6

 イズモ様は何かに驚いたように僕から顔を離す


「お主は取り除いた方がよかろう。いや、取り除かねばならぬ」


 僕も?それにまた篤嶋・・・華蓮の時も家の名前が出てきてたけど、そこに何か秘密が・・・知りたい


「その様子じゃと何も知らんようじゃな。今は言えぬが取り除くときに全て知ることができるはずじゃ」


「取り除く方がよいというのはなぜなのですか?」


 イズモ様は少し考え、答えを出した


「うむ、これくらいならよいじゃろう。お主たちは生来、その血筋に与えられた「加護」がその身に宿っておる。じゃが混ざりものがあるせいで真なる力を発揮できておらん。じゃから取り除いた方がよいのじゃ」


 なっ・・・どういう・・・いや、なぜっていうのは教えてもらえないだろう


 僕たちにも加護が・・・


「その真なる力っていうのは戦える力なのでしょうか」


「そうじゃな。華蓮の場合出力が完全に押さえつけられておる。それに肉体も脆弱にされておるな」


 華蓮が脆弱!?噓でしょ・・・でも嘘を言う必要もないし・・・


「気の纏いも中途半端じゃし・・・龍脈の力も全く使えておらん」


 何やら得意げに話している。話しちゃいけないことまで話しそう・・・


「まあ、言えるのはこんなものじゃな」


 ちゃんと制御されてた・・・


「では僕のは・・・」


「言えぬ」


 さいですか・・・


「が、今とは全く違うものということだけ知っておけ」


 全く違う力・・・もし異能力をなくしたとしたらそのあと戦えるようになるまでどれくらいかかるのか・・・


「そう悩むでない。どのみちわしでは取り除けぬ、その時までに決めておくとよいじゃろう」


「わかりました」


 いつになるかわからない、か


 取り除ける人、もしくは神様に会わないことには無理ってことだよね


 決められるかどうか・・・


「しかし、如何せん使い過ぎじゃな・・・混ざりすぎて取り除くのに時間がかかりそうじゃ」


「その混ざり者に体が慣れてしまっているってことですか?」


「ああ、そうじゃ・・・よく知っておったな」


「ええ、そういうのに詳しい友人がいるもので」


 有栖が言っていた。異能力は使うにつれて体に馴染んでいくってその分強くなっていくとも言ってた


 その通りにしたおかげで僕たちは今こうして生きているわけで・・・


 そのせいで取り除くのに時間がかかるってことは、この件に有栖が関わっている線が完全にきれたことになる


 ・・・もしかしたらって期待してたし、関わってたならひょっこり出てくるって思ったけど・・・


 中に戻るまで会えないってことか・・・寂しいな


「そうか・・・混ざり者についてそこまで研究が進んでおるのじゃな・・・なるほど」


 北方の研究者にも話を聞きたかったな・・・公開されてる情報は大体知っていたけど有栖の持ってた情報以上のものはなかった


 公開されていない情報に何かあるかもしれないし・・・機会があればどうにか接触してみよう


「じゃがまあ、お主らの力を見てなぜ壁を抜けさせたのかは分かった。これで進むことができそうじゃ」


「進むってどこに・・・」


「次の段階へじゃ。お主らにも目的があるようにわしらにも目的がある。案ずるなわしらのはお主らが達成した後に用がある」


 僕らが来たから進むことのできること・・・やっぱり僕たちの加護に関係することなのかな


「そこでじゃ、お主らにはわしらの手伝いを頼みたい。これは命令ではない・・・できればじゃ」


 イズモ様は僕らに頭を下げた


「や、やめてください!そんなことしなくても!」


「それでもじゃ。わしらの目的にはお主らの加護が必須なのじゃ・・・じゃからこの通り」


 深々と頭を下げるイズモ様は悲痛な声を上げている


「頭をお上げ下さい・・・中に戻る手がかりはイズモ様に頼るしかありません。それをお教えいただけるのであれば僕の力は存分にお使いください」


「私もよ。それに強くなれるのならこっちから頭を下げるわ」


 華蓮はもういつも通りに戻っている。しかし頭を下げると・・・天津さんと同じレベルに落ち着いたんだろうか・・・


「そうか!であればわしもお主たちの目的のために力を貸そうぞ」


 イズモ様は勢いよく顔を上げ、ほっと息をついた。尻尾も機嫌よく揺れている


 まるで何百年も待っていたと言わんばかりに・・・いや、壁ができてからこっちでは二百年経ってるんだった


 イズモ様が敵対しないように友好関係を結ぼうとしてたけど、まさか仲間になってもらえるとは・・・心強い味方ができた。


 壁の通り抜けに数歩近づけたような気がする


 イズモ様の目的は僕らが目的を達した後・・・であるのなら僕は異能力がなくなってもいい・・・


 僕の目的か・・・今は三人を壁の中に戻すことだ。それからどうにかして拠点に・・・


 そのあとは・・・


 ・・・


 インシーさんのいない革命軍で何を・・・隊長ももういない


 メイさんもいないから捜索の範囲が狭まる・・・


 あれだけ牙を向けた後だ。今更本家に戻ることもできない


 はあ、無力だな僕は。そとじゃ力技でどうにかなる。でも中の文明社会では何もできない


 目的は・・・いや、それは後から考えよう


 とにかく華蓮が悲しまない環境を作ることができればそれでいい


 僕に授けられた加護でどうにかなる範囲で尽力しよう


「さて、ではお主らの聞きたいことに答えるとしようかの。向こうの二人もそろそろ慣れたころじゃろう。ともに聞くとよい」


 二人を見ると、ジンはいつもの落ち着きを取り戻したようで座ってミンシャと手をつないで遊んでいる


 ユンファはイズモ様の尻尾をじっと見つめていたけど、視線に気づきすぐに僕の方をみた


「話はすんだ?」


「ああ、これから壁について聞くところ」


 二人は立ち上がってこっちに来る。ミンシャはなぜか巨石の前から動かなかった


 イズモ様に土の椅子を作ってもらい皆席に着く


「では、何から聞きたいのじゃ?」


 悩みはないまずは・・・


「壁の抜け方を教えていただけませんか?」


「よいじゃろう。そうじゃな・・・」


「・・・」


「・・・」


「・・・」




「わしも詳しくは知らんのじゃ」



 僕らは全員椅子から転げ落ちた

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