イズモ様5
稽古が始まった
華蓮は一瞬で異能力を全開にして地面を蹴った。抉れてない・・・力のコントロールか、それともこの島に元々かけられている結界が強いのか・・・
超人の異能力のおかげか動体視力も上がり何とか捉えることができる
でもこれは・・・
初撃は右斜め下からの打ち上げだ。イズモ様は宙に舞う
あたった・・・違う完全に流されている。一回転してイズモ様は地面に着地した
「・・・」
イズモ様は黙って華蓮を見ている。その眉間にはしわが寄っていた
「もう一度じゃ、今度こそ全力でな」
「すみません・・・」
やっぱり手を抜いてたみたいだ。天津さんの時も一回目は全力じゃなかった
だからって機嫌を損ねたらだめだよ・・・まだちゃんと味方と決まった訳じゃないんだから
華蓮は一度距離をとって息を整えた
「行きます」
イズモ様は無言でうなずく。構えはない、天津さんと同じだ
今度は全力で地面を蹴る。地面は割れない、結界が強いらしい。天津さんと同等の結界か・・・これを張ったのがイズモ様なら手も足も出ないだろうな
華蓮はイズモ様の裏を取り足払いを仕掛けた。避けられる
その体制のまま飛び上がり、両手で拳を作ってイズモ様を叩きつけ・・・られない
落ちる葉のようにひらりひらりと優雅に舞いながら避けている
外野の僕たちは口を開けてみていることしかできないくらいだ
「す、すげえな・・・天津さんと同じくらいには強いんじゃねえか?」
「うん。神様ってのはみんな天津さんみたいな人かもしれないね」
「・・・そのあまつ?さんって誰?」
あ、そういえばあったことなかったんだっけ
有栖の家に行ったことがないのはこの四人じゃユンファだけだ
「天津さんはすげえんだぜ。拠点を用意してくれたの天津さんなんだってさ」
「う、うそ・・・じゃないのね・・・?」
ジンのキラキラした目に気をされたみたいだ。僕に助けを求めてきた
「嘘じゃないよ」
「そんで華蓮の師匠でもあるんだ!」
どうやらジンは相当天津さんに心酔しているらしい。目の輝きが止まらない
「そ、そう・・・すごいってことはわかった・・・一度でいいから会ってみたかったわ」
今はどうやっても会えないし・・・いつか壁を越えられれば真っ先に会わせてあげよう
それから五分ほど稽古は続いた
「終わりじゃ」
イズモ様は地面に降り、華蓮はその場に止まった
「ありがとうございました」
華蓮は一礼してその場に座り込む
「ああ、構わぬ・・・」
イズモ様は今ので何か思うことがあったみたいだ。また眉間にしわが寄っている
僕は華蓮のもとに寄った。ジンとユンファはミンシャの壁の中だ
「・・・そうか、なら・・・もしかしたら・・・いや、うーん」
また何か考えている。尻尾が垂れて揺れている
イズモ様は華蓮の前まで行き顔を合わせた
「華蓮わしの目を見よ」
「え、はい」
華蓮の頬と両手で持ち目を合わせる。長老が僕にしたのと同じように
そういえば長老はイズモ様に加護を授けてもらったんだっけ
だったら同じような力を使うのは当たり前か
「・・・やはり・・・そうじゃったか」
イズモ様は何かを感じ取ったようで、なにかを確信したように呟いた
「華蓮、お主「ヨモ」の家系じゃな?」
「ええ、そうだけど・・・」
華蓮は驚いた表情をしている
ヨモ・・・華蓮が東方の養子になる前の苗字だ
あ・・・敬語・・・諦めたな
「それがなに?」
「詳しいことはまだ言えんが・・・そうじゃな、神の気に触れても何もなかったのはその血のおかげということじゃ。貴樹が篤嶋の血筋だとはわかっておったし、華蓮もその通りじゃとばかり・・・」
言えないか・・・それもこれも僕らが混ざっている間・・・混ざり者、異能力者である限り・・・
・・・ある限り・・・?
「混ざり者でなくなったら全て教えていただけるのですか?」
「そうじゃな」
「混ざり者じゃなくなることができると?」
「そうじゃ。わしでは出来ぬが取り除くことのできるものを知っておる」
異能力者じゃなくなるっことだよね・・・つまり今の力が全部使えなくなるってことか・・・
それじゃ壁に戻っても何もできなくなるってことだから今は我慢することしかできない
でも中に戻ったとしてイズモ様がいなければどうにもならないし・・・
中の神様のことについて聞こうにも異能力者である限り教えてもらえない
・・・謎が深まっただけだ・・・
「なんじゃ、取り除きたいのか?」
「いえ、今の力が使えなくなるのは困りますので・・・」
「ふむ、そうか。華蓮は除いた方がよいが・・・どれ、貴樹も見せてみよ」
華蓮は取り除いた方がいいって・・・どういうことだ?
いや、これも聞けないか・・・
とりあえず僕もイズモ様に見てもらうことにした
顔が近い・・・それにいいにお・・・不敬!
「・・・お主、篤嶋の直系か?」
「そう、だと思います。僕の知る限りではですが」
イズモ様は何かに驚いたように僕から離れた。あ・・・なんか寂しい
どうやら僕の家系に何か秘密があるらしい




