イズモ様1
「タカキはそんなに強いのか?」
村長は体を小さくしながら問いかけてきた
「さっきのクマなら一撃ね」
「クマ?ああ、カカマクをそんな風に呼んでんだったな・・・ちょっと待てそれホントに言ってんのか?」
「まあ、あれくらいなら」
村長は黙った
・・・基準がわからなかったけどこの反応は
「ははは、冗談がうめえなタカキは!銀の獣が四頭がかりで狩るようなもんだぞ、あれは!」
・・・
「・・・」
「・・・」
「ちょっと加減してやってくれ。俺はいいから」
「逃げんじゃないわよ」
村長はさっきより小さくなり僕の心はちょっと軽くなった
「それでここからどうやって向かうんですか?」
「ああ、いつもは走っていくんだが・・・今日は一人じゃねえから昨日アレンが使ったいかだで飛んでいく」
「風の加護ですか」
「そうだ、アレンよりは荒いが歩くよりましだろ?」
昨日のは楽だったな。揺れもなかったしそれに早い
僕らはいかだに乗り込んだ。あんまりよく見てなかったけど結構使い込まれてるなこれ
「よっしゃいくぞ!」
いかだはすぐに浮いた・・・・
「待て待て待て!!!!!」
ジンが叫んだ。高所恐怖症のせいもあるけど
荒いなんてもんじゃない、これはジェットコースターだ
ユンファは落ちそうになって僕にしがみついている
「タカキごめんなさい少し我慢して・・・」
村長が不思議そうな顔でジンを見た
「そんなにダメか?まだ上がっただけだぞ」
「とりあえずいかだはなしで・・・」
村長は走れるらしいし、皆で走ることになった
三人はそれぞれ相棒に、ミンシャは華蓮と一緒にキキに乗った
ま、僕はいつも通りさ
「おっし、離れずついて来いよ!」
村長のスピードにはついていける、キキたちのトップスピードのほうが断然速い
キキがちらりと村長のことをみた
この子たちもしかして男の事嫌いなのかな。仲間ができてうれしい
ちょっとして後ろからもう一匹のオオカミが走ってきた
まさかな・・・
「うお!なんだ!?」
そのまさかでオオカミは村長の股に鼻に引っ掛け、背中に飛ばした
・・・はあ
乗ってすぐスピードが二倍ほど早くなった
「遅すぎてイライラしてたみたいよ」
「いあいや!これが早過ぎなんだよ!」
村長は振り落とされないようにしがみついた
「これじゃあタカキがついてこれ・・・」
「ははは、これが日常でして・・・一度も乗せて貰えてないんです」
・・・化け物を見るような目で見られた
だろうね、最近肉体を魔改造されたんだから。一年前の僕が見てもそうなる
村長はオオカミの背に慣れるのが早く、すぐに股をかけて座れるようになった
「いや、これはいいな。一頭譲ってくれないか」
「噛み殺すぞっていってるわ」
「な、会話できるのか!?あ、ああ生意気なこと言ってすまない」
「わかればよろしい」
さすがに無理だよなあ。たぶん乗せるのも我慢してるんだ
だと思いたい。絶対そうだ!
「これならすぐにつくぞ・・・撫でたら怒る、よな」
「片腕持っていかれたいならどうぞ」
村長はすぐに手をひっこめた
ほんとおっかないんだから、この子たちは
「銀の獣なら水のにおいに気づいてるだろ。そこが目的地だってうお!!」
オオカミたちはそれを早く言えとばかりにまたスピードを上げた
僕も千里眼で確認しておこう
この先に湖がある。大きいな、あれ、これは結界かな外から見えないようになってる
慧眼で見破ることができた
湖の真ん中に陸地がある。陸続きになっていない、もしかしたらあれがイズモ様のいるところか
村から十分程度の場所にそれはあった。十分と言っても村長の足ではもっとかかっていただろう
湖のそばに付いて、僕・・・華蓮らがキキたちから降りた
かなり澄んでる。濁りが一切ない
「よし、待ってろ今よ・・・」
言葉を待たずに張られていた結界が一部解け、陸続きじゃなかった島への橋が架かった
「っかしいな。いつもなら祈りを捧げるんだが・・・待ち人ってのは本当らしいな」
「いつもは何を祈ってるんですか?」
「大抵は豊漁豊作だな。あとは健康祈願だ」
うーん、願い事を叶えてくれるってのはわかったけどそれだけじゃ神様がどんなものなのかわかんないな
これから会えるみたいだし聞けば答えてくれるかな
「んじゃいくか、この橋った!」
中に入ろうとしたら見えない壁が村長の額にぶつかった
「いってえ。いつもなら通れるんだがなあ。やはり祈るか」
村長が膝をついてポーズをとった。これが祈りの基本かな
僕も同じようなポーズをとろうとしたとき、ミンシャが勢いよく結界の透明な部分に走り出した
「あ、あぶね・・・え」
壁にぶつかることなくそのまま中へ入って橋を駆けて行った
「な・・・なんだ?イズモ様のいたずらか?まあいい、入れるんなら!」
またしてもぶつかった
「いってえなあ、おい・・・」
何が起こってるのかさっぱり分からいみたいだ
僕も結界に触れてみることにした
「あれ、壁なんてないですけど」
すんなり通れた。違和感も何もない。村長以外の三人も試してみたけど、壁があったのは村長の時だけだった
「どうやら俺だけ拒まれてるみたいだな。待ち人以外は来るなと言わんばかりに・・・まあいい、村までの道は覚えているだろ?俺は先に帰って宴の準備をしておく、終わったら来るといい」
その言葉を聞いた後結界はまた閉じた
村長はぼやきながら頭を掻きている
「こっちからは見えるし聞こえるけど向こうからはそうじゃないみたいね」
「どうなってんだ?これ」
「・・・共和国の拠点に張られていたものに似ているわね」
確かにな・・・でもあれは天津さんのが張ったものだし・・・もしかしたら天津さんはこの神様に加護をもらっていたのかもしれない
いやでもここは外の世界だし・・・こういう技術が大昔から続いてるってことかな。剣術とかと同じように
天津さんの知り合いというなら近況を聞きたいと思ったなら今回呼ばれたのもわかる・・・
でも、それならあったことのないユンファさんはどうなんだろう
「とにかく中に行かないことには始まらないわね。進みましょう」
橋を渡って島に行くことにした




