村長
ロッジ村集会所
「よく来られた、緑の人。俺はガーバン、この村の長だ」
垂れ幕をくぐった先には二人の村人がいた
今話しかけてきたのは黄に近い黄土色の髪、オールバックにして後ろで括っている
髭の似合う中年のナイスガイ
鍛えられた肉体、それに無数の傷。長く戦ってきた証拠だ
もう一人はかなりご高齢の老人だ。たぶん女性の方ではないだろうか、村の女性がつけていた飾りをつけている
椅子に深く座って杖を握っていた
「初めまして」
僕らは軽く自己紹介して勧められた座布団のようなものに座った。柔らかい
「まさか、アレンのお父様が村長さんだとは思いませんでした」
髪の色でなんとなく察していたけど・・・来る前に言っておいてくれよ
「ははは、俺の倅はちょっと馬鹿なとこがあるからな!容赦してやってくれ」
「親父、息子に対してそれはひでえよ」
「うるせえ、事実だろうが」
うん、親子って感じだな
・・・なんだかローガンさんに似てる気がする
「それで、なぜ僕らは呼ばれたのでしょうか」
早速で悪いけどこれは聞かねばならない
ことによっては構えなければならないから
「ああ、長老の予言でな。「山の頂、緑の子、一と十の魂。解放の鍵、道に至る者。古き友人にことを伝えよ」とな。予言は大方当たってきた、大抵意味の分からんことだが起これば気づく。これも意味は分からんが、お前らが来たってことは何かあるはずだ」
村長は胡坐をかき、ひげを触りながら僕らを値踏みするように見ている
予言・・・最近よく聞くな
「お前らのことはまだ信じとらんが長老の言うことはこの村の総意とみなしている。とりあえず話を聞かせてくれ。何者かくらい知らんと俺らもどうしたらよいのかわからんのでな」
「確かにそうですね。まずは信用してもらうことから始めましょうか、何でも聞いてください」
それから小一時間質疑応答を繰り返した
どこから来たのか
何を目的に旅をしているのか
銀の獣についてのあれこれ
それから情報のすり合わせ
「なるほどな・・・しっかし緑の子ってのがただの緑色の服着た人間だとは思わなかったぜ。神様からの使いかと思ったがそうでもない、謎が深まるばかりだぜ」
村長さんはずっと真剣な顔で話を聞いていた。そりゃそうだ、村の存続がかかっているかもしれないんだから
「まあ、敵意がないってことはわかった、次はお前らの番だ、何が聞きたい」
さて何からにしたものか・・・
考えてる間にユンファが口を開いた
「アレンから壁に詳しい神様を知っていると聞きました。取り次いでいただけないでしょうか」
僕たちの最終目標はそれだし最初に聞いておくのもありだったか・・・
「おい、アレン。そんなことまで話したのか」
「いやいや、最初に言ったのはミンシャだ!俺はイズモ様の名前出しただけだ!だよなユンファ!?」
「ああ、そうだったわね。ごめんなさい、訂正するわ」
ユンファは少し困惑したような表情だった
言っちゃだめなことだったのか、これ
村長はため息ついて空を見た
「・・・ミンシャが言ったなら問題ねえか。しかし、ミンシャに気に入られるとはな」
村長が手放しで信用してるってミンシャって何者なんだ
「確かに面識はある。だが難儀な方でな・・・土産物がないとあってはくれねえ」
「土産物ですか・・・何を好まれているのか分かりますか?」
なんだろう…珍しい食べものとかだったら僕らわかんないかもな
「大昔の残骸とかだな。奇麗にのこっているものなら相当喜ばれる」
何だそれ・・・コレクターみたいな人なんだろうか
「ただ、好き嫌いがあってだな・・・話を聞いてくれるかはそれ次第ってとこだ」
「今まではどんなものを?」
大昔の残骸・・・おそらく大戦中のものだろう。向こうから持ってこれたもので代用できないかな
「最近で言うと、棒状のものがなこうさーと開くやつでな、中にうっすい皮か何かがが織り込まれたものだ」
・・・扇子だな。間違いない
けど持ってないなあ。作れもしないし・・・
「んでその前は・・・あれだなカンラシュで手に入れた・・・あー「カタナ」ってやつだな」
「なるほど・・・残念ながら持ち合わせてないものばかりですね・・・」
刀に扇子・・・日本人っぽいな。もしくは日本が好きな外国人
「まあ、同じものは受け付けてくれねえがな」
日本に関わるもので作れるものか・・・木刀でも作る?いや誰でも作れるものはだめだよなあ
「いや・・・珍しいものなら何でも持って来いって言ってたか。あんたらちんけな恰好してるしあってくれるかもな」
「そんな簡単に行きますかね・・・」
「まあこっちから攻撃しなけりゃ殺されやしねえ。難儀だが優しい神様だからな」
なら、行ってみるだけでも価値はあるか
「案内してもらうことってできますか?」
村長は難しい顔をした。神様っておいそれと会えない存在なんだろうか
自分たちで探すとなると骨が折れそう。このあたりにはいると思うけど・・・
「・・・連れて行っておやり」
全員の目線が長老に集まった
ここまで一言も言葉を発しなかった長老が急に話しかけてきたんだ。驚いた
まあ、華蓮とジンもそうなんだけど
「イズモ様の待ち人じゃ。連ねばおしかりがあるやもしれん」
「そうか・・・だったら案内しないわけにはいかねえな」
案内してくれそうだ。よかった
長老とミンシャの発言力が村長より大きいみたいだ
何かあったら華蓮に頼んでミンシャに伝えてもらおうかな・・・それはダメか
「案内には感謝しますが・・・お叱りってそんなに怖いものなんですか?」
渋ってたのにお叱りと聞いてすぐに了承した
村長として避けなければいけない何かなのか
「ああ、俺が若いころ機嫌を損ねちまってな。数日狩りができなくなっちまったんだ。海も森もな」
なるほど、何をしたかはわからないけどきつかっただろうな・・・
僕らも損なわないように気を付けよう。村に被害は出て欲しくない
「んなら、行くか!」
村長はいきなり立ち上がった
「い、今からですか?」
「ああ、こういうのはさっさと済ませたほうがいい。隠してると思われたらおっかないからな」
そんなに短気なのかイズモって神様は・・・大丈夫かな、華蓮との仲が心配だ
「ではすぐに準備・・・といっても何もないですね。みんなは大丈夫?」
三人もうなずいて了承してくれた
まだ朝だし暗くなる前に帰れるだろう。アレンのいかだに乗ってくのかな
「よし。アレンはカサンドラと守につけ。ミンシャはどこにいった?」
「・・・村の入り口にいるわね」
「わかんのか、まあ入口ならちょうどいいな」
「連れて行くんですか?」
「ああ、イズモ様はミンシャくらいにしか口聞いてくれねえんだ」
声を出さないミンシャと会話してどうやって聞き取るんだろう・・・文字かな?
神様か・・・どんな人なんだろう




