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閉ざした世界に革命を。  作者: 凛月
第3章 「外の世界」
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空飛ぶイカダ2

 西暦じゃない。アレンの言葉を聞いてすべてを察した


 王歴っていうのは多分大戦後にできた年号だろう


 ユンファも多分同じことを考えてる。頭を抱えてる


 華蓮とジンはそもそも話を聞いていないけど・・・



 色んな認識の違い


 見たことのない植物と虫


 そして巨大な動物たち


 木製のいかだ。海岸の村の建物も遠目から見ると木でできている


 それにアレンの麻でできたような服



「ユンファ・・・」


「ええ、私も同じことを考えてると思う」


「何をだ?」


 アレンはまた不思議そうな顔だ


 それは仕方がない、だってこれは僕たちにしかわからないんだから


 時代が進んだ僕たちにしか



 外の世界は文明が一度滅んで二百年近く時が経っていると言うことを



「・・・ごめん。ちょっと頭の整理が追い付かないや」


「同じくよ。これからの算段は全部白紙だもの」


 これじゃ、中に戻るなんて夢のまた夢だ


 まずはこっちの世界のことを知ることから始めないと


「すまねえ、俺なんかまずいこと言っちまったか?」


 本当に申し訳なさそうな顔をしているけど、アレンは何も悪くない


「そうね、今すぐここから飛び降りて夢かどうか確かめたい気分よ」


「ちょ!それはまずいからやめてくれ。死んじまう」


 さすがにやりすぎ思うけど、それでもこれは頭が痛い


「言葉がわからないのは障壁外だからって納得してたけど、知らない単語ばかりなのがまさかね」


「言葉についてはそうだね。でも、そうかあ。文明が・・・」


 この頭の働かなさは行軍の終わりに転移地点を作っていた時と同じくらいだ


 文明が一度滅んでまた新しい文明が繁栄していく、それはよくある話


 でもこれは規模が違う。世界各地でこれが起きているはずだ


 僕たちのいるクレーターがいくつも存在するように


 その数だけ滅んでいるんだから


 絶滅状態だったんだろうな。人類は


 動物たちの大型化は専門外だけど、きっと滅びに関係しているはずだ


 大気も大地も、おそらく海も何もかも汚染するものがいなくなった


 地球はありのままの姿を取り戻しつつあるってことだ


 神様・・・とやらの存在はよくわからない


 もしかしたら文明人の生き残りがそう名乗っているのかもしれない


 そうなるとゴーグルがどうやってってことも・・・


 いや加護に説明がつかないか


 ああ、僕の頭じゃここが限界だ


「ユンファどう想像した?」


「私はそれどころじゃないわ。当分帰れないって思うと・・ね」


 向こうのことは考えないようにしてたけど


 ここまで来ると思い出さずにいられない、ユンファは妹のタオを置いてこっちに来てしまったのだから


「そうだね、ごめん。考えなしだった」


「いいわ、あなたも動転しているのよね」


 確かにそうだけどユンファほどじゃない


 有栖の会えないのは寂しいけど、ここには華蓮がいる


 だから僕は大丈夫なんだ


「・・・待って?こっちの世界で二百年以上たっているってことは」


「時間の進むスピードが違うわね。どれだけってことはわからないけど」


 なぜかはわからないけど向こうのほうが進むのが遅い


「戻れるのがいつになるかわからないけど、私よりもタオの寂しさが小さくなるっていうのは救いがあるわね」


 ユンファは寂しそうに障壁の方を見つめている


 できるだけ早く戻れるように尽力しよう


 ジンも戻りたいだろうし


 おそらくは華蓮もだ。自分の部屋が戻ってきてあれだけ喜んでいたにもかかわらずまた失ってしまったんだから


「とにかく戻ることを優先して進もう」


「ええ、そうしましょうか」


 アレンは空気を読んでなのか、村のほうを向いて舵をとっている


 詐欺師と疑ったのは悪かった。申し訳ない


 ずっといいやつだったんだなこの人


「それほんとなの?・・・貴樹、ミンシャが帰り方知ってるかもって言ってるわ」


 華蓮がミンシャと何やら話していたようで僕にも教えてくれた


 なるほど帰る方か・・・聞いてみる価値・・・


「「それ本当!?」


「あぶねえからだろ!暴れんじゃねえ」


「すみません」


 普通に聞き流しそうだった。ユンファもそれどころじゃない風な顔してたけど二人して詰め寄ってしまった


 ミンシャが震えて華蓮にしがみついている


「ちょっと、怯えちゃったじゃない。大丈夫よ、ミンシャ。襲ってくるようならお星さまにしてやるから」


 顔を見て、落ち着いたようでまた座りなおした


 ・・・さらりと怖いこと言うのやめてよ


「村の村長が壁び詳しい神様?と面識があるそうよ。会えるかもしれないわ」


「あーイズモ様のことか?もともと中の神様らしいし、しってるかもな」


 イズモ様・・・ウーシュ様と同じ神様か・・・


 障壁の中にも神様って存在がいたんだ。知らなかった


「珍しいものとか人とか探してるそうだからな。お前らみたいなへんちくりんだったら話くらいさせてもらえるんじゃないか?」


 へんちくりんってなんだよ


「でも思いがけず手がかりがてに入ったね。ありがとうミンシャ」


「どういたしましてだって」


 腰に手を当て胸を張った。エッヘンのポーズだ


「あれ、そういえばジンは?」


「ここにいるわよ?」


 華蓮が少し身を動かすと丸まって怯えているジンがいた


「もしかして高いとこ苦手なの?」


「・・・・」


 返事はないけど小刻みに震えている。ジンにもかわいいとこあるんだな


 元からかわいくないとは思ってないよ?

 

「そろそろ着くからちょっと身構えてろ。降下には慣れがいるからな」


 身構えるってどうやって?と思ったらミンファが教えてくれた


 アレン以外ジンと同じポーズで丸まった


「よーし、降りるぞ~」


 言葉と同時にいかだがゆっくり降下を始めた


「エレベーターと同じようなものね」


「そうだけど、何か背筋に来るものがあるわ」


 確かにそんな感じだ。四方が空にさらされているからか変な感じがする


「下手したら放り出されるかもね」


「~~~~~~~~~~~~」


 ちょっと脅かしたらジンが声にならない悲鳴を上げた


 ミンシャはなぜか小躍りしている。楽しいみたいだ


 地面に着くとき、少しふわっとした、完全にエレベーターだこれ


 とんでもなく怖かったようでジンは着く前に飛び降りた


 一息ついて落ち着いたみたいだ。僕らが降りる頃には通常運転になっていた



 そんなこんなで僕たちはロッジ村に着いたのだった

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