表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
閉ざした世界に革命を。  作者: 凛月
第3章 「外の世界」
77/100

空飛ぶイカダ1

「俺はアレン!ロッジ村の使いだ」


 そう名乗った少年は黄に近い黄土色の髪にバンダナを巻き、その上にゴーグルをつけている


 なんだか・・・いや何でもない


「あ、僕はタカキです」


「おう、よろしくな」


 手を出してきたので握手しておいた


 これは変わらないんだ


 アレンは一緒に来た女の子を見る


「あそこでじゃれ合ってんのはミンシャ。神子様だ」


 華蓮になでられて嬉しそうにしてる緑髪おかっぱの小さい子がミンシャっていうらしい


 なぜか顔に紙を貼っている。何か書かれている・・・文字かな、読めないけど


 いきなり現れた見慣れない格好の少年と少女


 敵意は感じないと言ってたけどいつでも逃げ出せるようにしておこう


 もしかしたら詐欺師かもしれない


 こっちに来て初めて出会った人間で、言葉も通じなかったし


 眠りかけていた頭が少しずつ回りだした


「えっと、いろいろ聞きたいんですけど・・・何から聞いたらいいか」


「とりあえず村に来ねえか?そのために迎えにきたんだ。あれなら全員乗れるだろ?」


 後ろのいかだっぽい乗り物?を親指で指した


 混乱が止まらない


 会ってすぐによくわからない車に乗せられようとしている感じだ


 怪しさがどんどん増してくる


「三人と相談していいですか?」


「おう、待ってる」


 悪いやつはみえない。でも詐欺師あるあるだ


 みんなで相談しないと。これは一人で決められない


 三人ともミンシャってことじゃれ合ってる


 もしかしてこれも・・・


「えっと、話があるんだけど」


「村に行くかってことでしょ?いいんじゃない、もともとそういうつもりだったじゃない」


「いかだに乗ればあそこまで三十分らしいわ」


 え、何で知ってるの


「全部この子が教えてくれたわ」


 キキのお腹の上で大の字でミンシャが寝ている


 ・・・自由だなぁこの子


 もう少し危機感持った方がいいと思うんだけど、この子も皆も


 でも、華蓮が言うなら大丈夫そうかな


 もし何かあっても戦力的には申し分ない


「じゃあ、そういうことで」


「よっしゃ早速行くか。お前らの宿も準備してるからよ。まあちょっと空きが出そうだが」


 オオカミたちをみてははと笑っている


 宿の準備?僕たちを迎えに来る前にってどういうことだ


 空きが出そうって、なんだ?もしかして僕らの中の誰かを・・・


「色々聞きたいことはあるだろうが生きながら話そうぜ」


 そんな心配も抱きつつ僕らはいかだに乗った


 ジンは何でか躊躇している


 オオカミたちは乗れないので走ってもらうことになった


 キキいわく楽勝だそうだ。すごいなこの子たち


 ミンシャは華蓮の膝の上に座っている。何でこんなに子供に好かれるんだろう


 いかだは思った以上に快適だった。揺れもないし風も感じない。それにすごく早い


 あの悪魔の乗り物を考えたやつに見習ってもらいたいものだ


「すごいですね、この乗り物」


「ま、これはただのいかだだけどな。普通は飛ばねえよ」


「アレンは風を操れるんだって、それでこれを浮かせているらしいわ。ミンシャが言ってる」


 声出してないのになんでわかるんだ


 オオカミと同じ要領なのかな。この子もしかして動物だったり・・・ないか


「風の異能力者ですか」


「異能力?これはウーシュ様の加護だぞ。お前ら知らねえのか?」


「加護?ウーシュ様・・・聞いたことないですね」


 アレンは信じらんねぇって顔をしている


 異能力を知らない・・・それに僕たちの知らない単語


 何かおかしいような感じはするけど嘘を言ってる風には見えない


「風の神様の名前を知らねえってお前らどっからきたんだよ」


 神様?また知らない単語だ


「私たちはあの障壁の向こうから来たんですよ」


 ユンファはここからでもよく見える障壁を指さした


「障壁?拒絶の壁のことか。そりゃ信じらんねぇな。まあ何かとあんだろうが、詮索しねえよ」


 拒絶の壁・・・また聞いたことのない単語だ


 七十年間違う時間が流れてきたんだ、文化の違いがあるのはわかるけど


 言葉も通じなかったし神様って言うものとそれの加護ってのも気になる


 華蓮はまたミンシャと顔を合わせている。会話してるのかな


「ああ、そっちの三人の名前教えてもらっっていいか?」


 各自で自己紹介をした


 すんなり覚えたみたいだ


「うーん、タカキといいカレンといい馴染みのねえ響きだな。ジンってのはカンラシュあたりのやつか?」


 何やらぶつぶつ言っている


「そういえば、アレンの苗字はなんと?」


「苗字?なんだそれ」


「え、名前の前についたり後ろについたるするやつですけど」


 アレンはまたしても何ってんだという顔をした


「そんなもんねえぞ?きたこともねえ。俺はアレン。それだけだぞ」


 苗字の文化がなくなってる・・・文明が衰退したっていうのは知ってたけどどこまでなんだこれは


「七十年たっても・・・大戦はそんなにも激しかったのね」


「七十年?大戦?なんだそれ」


「え?世界大戦よ。そのせいであの障壁ができたんでしょ?」


 アレンのこの顔さっきと同じだ


「聞き覚えねえな。婆なら知ってるかもしんねえ、ついたら・・・いや明日にでも聞くか」


 ご老人なら知っているかもしれない。大戦時に生きていなくてもアレンのように若い人よりかは知識がある


 もしかしたら中へ入る方法も知っているかもしれない


「拒絶の壁が七十年前にか、信じらんねえ事ばっか話すよなお前」


 普通だったら、こっちの普通かはわからないけど学校で習うことなんだけど


「もしかして学校って言うのもなくなってますか?」


「知らねえな」


 やっぱりないんだ


「みんなで集まって勉強するところなんですけど」


「勉強か、皆で集まってってのはないな。あるとしたら王国じゃねえか?いったことねえけど」


 王国か、いずれ行ってみないといけないか


 ロッジって村で全部分かれば楽なんだけど


 アレンは僕らの服を見た


「一度王国の人間が来たことあったけど、こんな格好してなかったな。あっちの人間でもなさそうだし」


 まだ中から来たとは信じてくれてないらしい


 村にも来るのか。でももう一度来てくれるかわからないし期待しないでおこう


「服、触っていいか?」


 僕の服を指で触る。引っ張ったりもしている。どんなものか確かめているんだ


「はあー、上質な布だな。それに頑丈そうだし、色もムラがねえ」


 アレンの着ているものは言ったら悪いけど、粗末なものだ。バンダナはよさげなものだけど


 それにゴーグルは服とは似使わないほどに近代的だ・・・


 年代がちぐはぐなファッションだ


 其れも何十年、もしかしたら百年以上・・・


 でもメインの服が古すぎる


「そのゴーグルってどこで?」


「これか?これは加護をもらったときにウーシュ様から授かったもんだ。加護もちは大体こういうの持ってんだ。それも知らねえか」


 加護もちの証。ウーシュ様って何者なんだ


 汎用的なものではないみたいだし・・・


「・・・あの、今って西暦何年ですか?」


 アレンがまた何でそんなことも知らないんだといった顔をする。まさか、ね


 だって七十年だ。中との差は少しあるかもしれない


 しかしそれだけの年月が経っているにもかかわらず近代化しているそぶりがない


 それどころか衰退している。それもちょっとやそっとじゃない


 七十何経っても百年以上前の生活から抜け出せていないんだ


「西暦?ってのは知らねえが。今は王歴百九十八年だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ