障壁の向こう側2
調味料がなくて女の子たちはがっかりしていた
「まさに野生って感じだぞ、食べられるようになったらたらふく食わせてやる」
「それに栄養もね。野草の知識はないのよね」
なるほど。つまり原始的な生活を送っているわけだ
「狩りってどうしてたの?そういうのって知識が・・・」
ユンファとジンはそろって同じ方を指さした
あ。
「気配消して、こう、すっとして終わり。簡単よ」
ここに野生児がいること忘れてた
「ほんと、カレンがいてくれて助かったわ」
カレンは誇らしい表情をしている。サバイバルには必須だね
「あとは住む場所だけど。定住は避けようと思うの」
「確かに、ここの事まだ何もわからないからか」
ここは障壁の外側。授業では人の住めない土地って言われてたけど、この自然を見るとそうは思えない
「今は華蓮に狩野序に森を見て回ってるもらってるけど、かなり深い場所にあるみたいで終わりが見えないらしいわ」
華蓮はうんうんと頷いている
お腹がすいていなければ疲れ知らずだもんな
「あなたが起きたら障壁反対方向に川を伝ってみることになってたの。もしかしたら海につながってるかもしれないし」
海に出ればいろいろ手に入りそうだ
それに途中で食べられそうな野草を見つけられるかも入れない
「ごめん、僕のせいで」
「仕方ねえよ。あれだけやった後だ、ピンピンしてる方が怖え」
「そうね。十何日寝てないのにあの戦闘。疲れていないほうが怖いわ。それに中であったことはもう忘れましょう。私たちは進むべきよ」
優しさが目に染みる。僕も乗り越えよう
「ここからの移動はタカキが回復してからするわ。それまでゆっくりしましょう。時間はたっぷりあるから」
直近の目標は周辺の探索か。定住できる場所も見つけられたらいいな
・・・男一人か。ちょっと居場所にこまる。そこはおいおい考えよう
それにしても
「冬なのに寒くないね」
「そうなのよ。中と外で気候が違うのかしらね。助かりはするけど」
「確かに・・・凍えて死んだら元も子もないな」
それもまた調べないといけないか。服もどうにかしないと
みんな戦闘服だからちょっとの間は大丈夫だろうけど、いつかは着れなくなるし
まあユンファならそういうことも考えてそうだ
僕にできるのは・・・異能力使うくらいか
力仕事は華蓮にかなわないし。料理はできるけど焼くだけなら誰でもできるからなあ
そろそろ立てそうだ。痛みもかなり引いてきた
立って肩を回して首を動かしジャンプしてみた
「うん、大丈夫そうだ」
三人のほうを見てみると、口を開けてポカーンとしている
「やっぱお前バケモンだろ」
「そうね・・・信じられないわ」
華蓮は黙ってる。変なものみて言葉がでないみたいだ
「あ、いや。確かにおかしいよね。でも痛みも全部ひいてるんだよ」
「もしかしたら「超人」の影響かもね」
華蓮がポツリと呟いた
・・・そういえばインシーさんの最後の断罪
異能力の譲渡って言ってたな。それからだ体がおかしくなったの
「ほんとに僕に譲渡されたのかな」
「でも、そう考えるのが妥当でしょうね。いくら何でも早すぎるもの」
「じゃあタカキも特等級ってことになんのか・・・バケモンの次はなんだ?変人か?」
ジン、それはさすがにひどい
「これなら明日にも移動できそうかしら」
「うん、大丈夫かな。疲れも全くない・・・それに」
「それに?」
「できてた足の豆が消えてる。きれいさっぱり」
あれだけ痛くてどうにかしてた豆がどこにもない。戦闘の時はアドレナリンが出過ぎて気にならなかったけどこんなに早く治るものじゃない
「確定ね。これで私と同じじゃない。戦い方教えてあげるわ」
「ははは、お手柔らかに・・・」
華蓮が目を輝かせている。死なない程度でお願いします
「よし、じゃあさっきの続きしましょうか。川に魚を獲りに行ってたよ。タカキもそこで体洗いなさい。さすがに匂いがきついわ」
言われて匂いに気が付いた。これは・・・ありえない
「華蓮が少しずつ拭いてはいたけど、さすがにそれだけじゃ落ちないわね」
「あ、ちょユンファ!」
顔を真っ赤にして言いよっている。さすがに恥ずかしかったみたいだ
でもありがとう
じゃれ合ってる彼女らを見てたらジンが寄ってきた
「ほんとに大丈夫か?空元気とかないか」
「うん全然。何ならまた肩車してあげようか?」
「それはいい考えだけど・・・先に川だな」
「ははは、早速行こうかな」
「連れてってやるよ、こっちだ」
ジンの後をついていき、無事川についた
「よし、まあとりあえず全部脱げ」
僕は体を隠した
「え、何で!?」
「は?洗うために決まってんだろ。全部やってやるから脱いで川に入れ」
なんとも男らしい・・・っくジンが男ならどれだけよかったことか
「わかったよ・・・でも替えの服があるからとってくるよ」
「あれは華蓮が着てるぞ」
「え?なんで?」
・・・まあ華蓮が一番戦ってたもんなあ。仕方ないか
「脱ぐからあっち向いてて」
「おう」
素直に目をそらしてくれた。僕も後ろ向いておくとしよう
体は赤まみれだったところどころ泥がついてるし、なんだこれ藻?川渡ったからかな
でも少し拭かれた跡がある。華蓮が拭いてくれてたってユンファが言ってたもんな
ありがとね華蓮
最後に残った下着を脱いだ時、華蓮と目が合った。ユンファは驚いた顔をしている
「このヘンタイがああああ」
華蓮に殴られそのまま川に落ちた
結構深い。それにかなり澄んでる
魚もいっぱい泳いでる。川岸のほうは浅くなってるからそこでとってるっぽい
ちょうどいい水温ですごく気持ちい
行軍の時にわたった川は濁って戦闘服着てたから不快で不快で仕方なかった
手でこすってみたら少しだけ落ちた。もうちょっと入ってたらふやけて浮いてくるかな
髪の毛もべたべただ。なかなか取れない。シャンプーとかボディソープってすごかったんだ
これから使えないとなると。ちょっと憂鬱だな
女の子の三人はもっと苦痛だろうな・・・華蓮は異能力のおかげで奇麗になるんだった
僕もそうならないかな。なってたらすでに奇麗か
超人の能力って肺活量も強化されるみたいだ。いつまでも潜っていられそう
この異能力なくなったチャールズ使い物にならなさそう。拠点のみんなもちょっと安心してくれるだろうな
・・・今は考えないでおこう。それは帰る算段がついてからだ




