障壁の向こう側1
夢を見た
涙を流す少女がいた。誰かはわからない
その両手にはコップを持っていて中には真っ赤な何かが注がれている
少女は僕につぶやいた
「お前が見つけろ」
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目が覚めた。日が高い、お昼くらいかな
そこは見知らぬ森の中で近くから水の流れる音が聞こえる
暖かい、そばに薪が燃えていた
ここ、どこだ、っつ
頭が痛い。全身も焼けるように熱い
それにこの感覚久しぶりの筋肉痛だ
・・・最後見たのは・・・華蓮
そうだ、華蓮!
「かれん、どお・・・」
のどが嗄れて、声が出ない
薪があるってことは誰かが近くにいるはずだ
少し待とう
ちょっと整理だ
今は多分、障壁の外側。インシーさんが開けてくれた穴を通ってこっちに来た
と言っても僕は通った記憶がないから、多分華蓮が担いでくれたんだろう
隊長はもう。
インシーさんはどうなったんだ
カーリアさんも、ぞれにジンにユンファさんも・・・
「タカキ?」
後ろから声が聞こえた
ユンファさんだ
「ゆんばざん・・・」
「しゃべらなくていい。待ってて二人を呼んでくる」
そういってまた来た道を戻って行った
二人・・・華蓮はいる・・・よね・・・生きてた。幻だったら・・・いや、絶対いる
あと一人は、多分ジンだ。あのまま残る意味もなかった
こっちに来れたのは僕含めて四人だけか
インシーさんもカーリアさんも・・・多分
少しして木々がざわめき、何かが逃げる鳴き声が聞こえた
ああ、よかった
「貴樹!」
華蓮が森から出てきた。よかった幻じゃない
目に涙が溜まっている
「起きたのね。体は平気!?痛いところは?おかしなところはない!?」
「華蓮、落ち着いて。起きてばかりなんだから少し静かにしなさい」
「そ、そうね。ごめん。でもほんとによかった。五日、眠りっぱなしだったんだから」
五日!?あれからもうそんなに立ってたのか
体が痛いのはそのせいもあるな
「お前ら・・・ちょっとくらい待てよ」
全身ずぶ濡れのジンがシャツを絞りながら歩いてきた
「おはよ、タカキ」
僕はまだ声が出ないから頷いて応えた
ずぶぬれってことは水が・・・
「はい、これお水」
ユンファさんが水の入ったボトルを差し出してくれた
気遣いの塊だ
今すぐ飲み干したいが、こういう時は少しずつ。隊のみんなからそう教わった
隊のみんなは拠点に転移できてたし無事だろう。あそこは天津さんが近くで守ってる
「ありがとうございます。助かりました」
気づいたらこのボトル、僕の背嚢に入っていたものだ。名前が書いてある
あたりを見たら背嚢が置かれていた。無事だったんだ
「華蓮、ジン。心配かけてごめん」
華蓮は泣きそうになって我慢している
ジンは薪に向かって体を乾かしていた
「カレン、ずっとあなたの事看病してたのよ。感謝しなさいね」
「ありがとう、華蓮」
「そんなこと当たり前よ。それより体調は?」
「頭が少し痛いのと筋肉痛かな。あとは寝たきりだったから体が重いくらい」
「どこか動かないってことは?」
「うん、大丈夫かな。全身動くよ、ものすごくだるいけど」
ものすごく優しい。最近、丸くなったとは思ったけど今回はほんとに心配かけちゃったみたいだ
「ありがと、華蓮。なんともないから安心して」
「そうね。うん。わかった」
少し肩の力が抜けたみたいだ。五日だもんな華蓮がそんなことになったら僕でもこうなる
「落ち着いたら今の話しましょうか。背嚢の中にあったゼリーとってあるからそれ食べなさい」
あれなら寝起きの体でも大丈夫そうだな。これを見越しておいておいてくれたんだろう
皆のおかあさんだ。言ったら怒りそうだから黙っておこう
「ありがとうございます。いただきます」
「食べさせてあげるわ」
持ってきた華蓮が提案してきた
「いやそこまではいい・・・」
「ほら」
有無を言わさず吸引部を口に押し当てられた。まあ悪くはない
「ありがとう」
「ん」
行軍の時は何だよこれってなったけど、今はこれがありがたい
発明してくれた人に感謝だ。原材料は聞きたくないけど
「それで、今どうなってますか?」
「・・・タカキ。敬語はいいわ。これから長いこと一緒にいるんだし。そういうところから仲良くしましょう」
「そうですか・・ああ、いや。わかったよ、よろしくユンファ」
「ええ」
ユンファは枝を拾って地面に周辺の地図を書きながら説明してくれた
「今は障壁からちょっと離れたところにいるわ。華蓮がいち早く川の音を聞き分けてくれたおかげで川に近くで野営できているの」
川を見つけたのは華蓮だったのか。サバイバルで活躍するとは
「水の問題は解決できた。食の問題も・・・一応は解決。この森結構動物がいるし川にも魚があるからお腹を満たす分には問題ない」
生きられる分にはどうにかなってるってことか
「一応って何か問題が?」
皆ため息をついた、なんだ?
「調味料がないからただ火を通しているだけなのよ」
・・・そこまで大事じゃなくてよかった




