止められない超人
光の話はにわかに信じがたい。それでも・・・
一度みんなのところに戻ろう
戻る途中起きている人はいなかった
が、例外はいつもあるものだ
「おい、お前。なんだそりゃあ、赤髪みてえになってよお」
「どいてください」
「俺がそれで退くと思うか?」
超人は僕の威圧にひるむことなく睨み返してきた
退くなんて思わない
直後僕は殴られた
だけどなぜか反応できた
攻撃が見える。超人の動きが見える
異能力を全部使って応戦した
でも技術が足りない。経験値不足だ
僕は戻りたいと思った方向に蹴り飛ばされた
以外にも痛みは少なかった
「タカキ!大丈夫か・・・血が」
ジンが心配そうにこっちを見ている。どうやら意図せず戻ってこれたようだ
「平気だよ。全部返り血だから」
僕は体制を立て直し、皆の元へ向かった
「インシーさん。ここから引く案思いつきましたか?」
少しの沈黙の後
「はい、ですが――
「みんな下がって!」
ユンファさんの声で頭を下げた
超人だ
僕は体で止めた。今ならそれができる
超人の方拳を両手で止めた。やはり重い
「っは!赤髪ほどじゃねえな・・・あ?よく見たらこの間腰抜かしてたガキじゃねえか」
どうやら僕のことを覚えていたみたいだ
「自分が殺し損ねた相手は覚えてるってことですか」
「あたりまえだろ?殺すまで覚えてらああああ!」
空いていた逆側の拳が僕の腹にめり込んだ
いや、当たっただけだった
当たっただけだけど重い。少し後ろにずり下がる
「硬えのは赤髪そっくりだなぁ。お前何もんだ」
「僕だって不思議ですよ。何でこんなことになってるか」
「まあいい。お前が死ぬまで付き合ってやるよ」
重い。猛攻が止まらない
「おいおい、さっきまでの威勢はどうしたあ!!」
言い返せない
さっきみたいな全能感が消えている
多分あれは異能力の暴走だったんだ
力も少しずつ落ちてきている気がする
でもまだ異能力は使える
幻覚を見せた
「あああ?なんだこれ?なんだ?お前・・・ローガンじゃねえかってなんで三人もいんだ?」
攻撃は止まって超人は空を見ている
今のうちにインシーさんのところに
「すみません。あれだけかっこつけたはいいもの限界が来てしまいました」
「いや、少しだが休息が取れた。敵の数もだいぶ減らしてくれたようだな。充分だ」
隊長はよくやったと言ってくれた
「それでインシーさん・・・
「あああああ!!しゃらくせええ!気持ち悪いもん見せやがって!!」
また異能力を・・・さすが特等級といったところか。しぶとすぎる
超人はまたこっちに突っ込んできた
こっちはもうそろそろ限界だっていうのに
「ここから逃げるには一つしか方法がありません。ただそれも博打です」
インシーさんは口早にそういった
多分それしか方法はないんだろう
「どうすれば」
「障壁ギリギリまで逃げてきてください」
「わかりました」
何をするかは、わからない
でも今は従っておこう
僕は超人を足止めし、インシーさん達は二百メートルほど離れた障壁にむかって走りだした
「準備ができ次第私が叫ぶ。どうにかして追いつけ!」
「・・・了」
返事はしたものの・・・いや、彼らだけでもどうにか
「なんだ?逃がすつもりか?まあいいここまでつぶされりゃあ逃がしたところで上も何も言ってこねえ」
「僕はあなたがただの戦闘狂に見えてきましたよ」
「ははは!そりゃあいい、俺にぴったりな言葉じゃねえか!」
豪快に笑う超人は自覚があるようだった
これが議員の主席とは世も末だ
「まあ。お前を殺して間に合うんなら上々だ、さっさとやろうか・・・」
耐えろ、耐えるんだ
あいつが言ったことが正しいならきっとどうにかなる
超人の攻撃どんどん重くなっている
いや。僕のほうが弱っているんだ
さっきの力は何だったんだ。答えてくれよ・・・
「おいおい、殴り返して来いよ。つまらねえだろうが!」
重い一撃が腹に入った。今度はしっかりと
「っぐふ・・・!!」
痛い・・・さすがにあばらが折れたか
でもまだ立てる。戦える
「タカキいいいいいいこおおおおおおおおいいいいい!!!!」
隊長の咆哮が聞こえた。竜人の咆哮はかなり響く
僕は超人に異能力をかけた。同じものはきっとかかりずらい
千里眼を共有した
これは使ったことがないと自分が何をしているかわからない
・・・華蓮でも数分動けなくなった
僕は壁に向かって走った
超人は天を仰いでふらふらしている。成功だ
オンオフを切り替え続けながら走った
「よくやったタカキ」
「はい。で、どうするんですか」
「障壁を破ります」
・・・・・え?
「正気ですか?」
「はい」
でも、それ以外に方法はない。馬鹿げているとは思うけどやってみないとわからない
「では、信じます」
うなずき合ってインシーさんは障壁に向いて手を掲げた
「カーリア。よろしくおねが・・・」
「どうしました?」
カーリアさんが体に触れようとして止まった
「・・・・いえ。何も」
「おああああああ!!!!」
もう慣れてしまったみたいだ。もしくは強靭な精神で消し飛ばしたか
このくらいの距離あいつにとったら何ようなもんだ
「私が行く。タカキもう限界であろう下がっておれ」
確かにもうほとんど体力が残っていない。ここは任せるしか
「健闘を・・・」
タツマさんなら少しは時間を稼ぐことができる
でも・・・
「世話になった。生きろよ」
迫る超人に隊長は向かっていった




