逃げた先
飛んだ先はどこのかはわからないけど障壁のすぐそば。平地だ
「こんなところに指標を置いた覚えはない・・・けど」
メイさんの意識が飛びそうになっている。転移で体力を消費してしまったんだ。拠点に戻れれば治療はできた。きっと医療班が待機してくれているはずだったから
一か八か。外れを引いてしまった
「メイ。こんなことになってしまって申し訳ありません。すべて私が・・・」
もう力が入っていない。倒れこんだところをインシーさんが受け止めた
撃たれていないほうの腕もだらりと下がっている
血が、止まらない
たぶんもう・・・
「い・・え・・いいんで・・・すよ。こうなることは・・かく・ごしていましたから」
インシーさんの腕の中で力なく答える
「・・・ロ・・ガンに・・おつた・・えください・・・たたかった・・・と・・・それに」
「あい・・していると」
目から光が消える
インシーさんはメイさんの目をそっと閉じた
人の死を目の当たりにしたのは初めてじゃない
それにメイさんと親しかったわけじゃない。言葉を交わしたの数えられるくらいだ
でもこうして仲間が死ぬのは堪える
ソウさんの時もそうだった。ただ目の前ではなかったから実感が分からなかった
気分のいいものではない。それだけはわかる
「メイはよく戦いました。皆を守るべく戦いました。勇敢なる死に哀悼を、そして祈りを」
僕らは全員手を握り胸を叩いた。革命軍式の追悼だ
関わりの深かったみんなは泣いている
インシーさんは特に、ユンファさんも泣いている
・・・僕のほおには流れなかった。目にたまることもなかった
だけど胸に何かが深く突き刺さった
多分杭だ。逃れることのできない。僕をつなぎとめて離さないそういうものだ
たとえ、革命が成功したところで抜けることはない。死ぬまで刺さり続ける杭だ。これからも刺さり続けるだろう。ずっと重くずっと深く
「悔いは残ります。ですが連れ帰ることはできません。タグを持ち帰りましょう。彼女は土葬を」
そういって首につけたタグを一つとった
大戦時に使われていた識別方法らしい
きっと、これを思いついた人も残らぬものに悲しんだんだろう
「タカキ、私は許すことはできません。いいですね」
「はい・・・覚悟はしていました」
これで爺さんは完全に敵になった。僕には止められない
・・・いつかこうなることはわかったてた。爺さんもそれが仕事なんだ。それでも僕は革命軍として抗うよ
たとえ僕が手を下すことになっても華蓮と共にあれるなら容赦はしない
僕たちは埋葬する穴を掘ろうとした
「なあ、まだか?お別れくらいさっさと終わらせろよ」
聞き覚えのある声
僕らは声のした方を振り向いた
そこには絶望がいた。絶望たちがいた
「ずっと待ってんのに気づかねえなんてよ。間抜けにもほどがあるぜ」
華蓮はすでに全開だ
全く予想などできていなかった
誰が予想できたものかこんなこと
メイさんの死によって全員が意識をそこに向けていた
ほかのことに気づかなかった
華蓮でさえもだ
こんなことになっていたのに
こんな・・・
全方位から囲まれてその中心に「超人」が
そしてその後ろに「光速」が
その他数十人に僕らは囲まれている
日本の全戦力が集まっていた
向こうにいなかったはずだ。だってここにいたんだから
「つい先ほど仲間が旅立ったものですから。埋葬くらいさせてくれてもよかったのではないですか?」
「っは!どうせその辺吹き飛ぶんだ。その肉塊ごとなあ」
何でそんなことが言えるんだよ。人間じゃない、こいつは。人の皮をかぶった悪魔だ
「そうですか。それもそうですね。しかいし気持ちの問題だったんですよ」
超人は首を掻きながら、めんどくさそうな顔をしている
服は着替えたのかきれいになっていた
どうしてここにいるのか
どうしてここで待ち伏せしていたのか
そんなことはどうでもいい
少し頭に血が上っているのを感じる
「華蓮。超人」
「わかってる」
とにかくあいつだけは殺さなければいけない。甘かったんださっきのは、無理をしてでも殺しておくんだった
僕と華蓮しかいないならやれたのかもしれない
でもこう思うのはやっぱりメイさんが助からなかったからだ
わかってる。さっきは華蓮さえって思ってた。でも、それでも・・・
もういいやとにかく殺せばいい
「いま」
華蓮はその瞬間地面を蹴った
音は置き去りに。風圧も何もない
ただ一直線にあいつの喉を狙って
怒っているんだ華蓮も
自分が殺しきれなかったことに
僕は目を見開いた。できる限り長く超人を止めるために
「おっとっと、ちょっと待ちなよ嬢ちゃん」
華蓮の爪は防がれた
「光速」が間に割り込んだんだ
「邪魔よ」
弾き飛ばした時にはすでに超人の後ろにいた
「チャールズ、やっぱ無理。任せる」
「だからいっただろ?お前は速いだけで軽すぎんだよ」
「いやいや光の速さってそういうの関係なく貫けるんだけどな。硬すぎだよあの娘」
「赤髪は俺の獲物だ、邪魔すんなよ?」
「ハイハイ見てるよ見てる」
茶番に付き合わされていた
頭に血が上りすぎてまた回りが見えなくなっていた。気づいていた。でも制御できなかった・・・
気をつけなくちゃいけなかったのに
茶番が終わり周りに煙幕が張られた。華蓮の姿も誰の姿も見えない
透視ならば・・・
その直後とんでもない明るさの光が僕の目に集中して充てられた
透視で開かれた目を瞬時に閉じて隠すことができなかった
目が使い物にならない
「くっそ!!」
「タカキ!落ち着きなさい。私の目は見えています。ほかのみんなも」
はっ!そうだ、共有
「すみません。見えるようになるまで借ります」
視界が広がった
相手は日本の戦力だ。もちろん東方も、そして父も
僕の目が対策されているなんて分かりきっていたはずだ
冷静になれ
「相手は日本。タカキの異能力を把握している方もいるでしょう。注意していきましょう」
「はい。ですが数人と共有できることを向こうは知りません。隙は多いと思います」
「わかりました。冷静になればあなたはよく頭が回る、何かあれば教えてください」
冷静に。あたりを見渡せ
千里眼なら目が潰れていても使える
大丈夫まだ戦える
向こうが知らない異能力もまだある
「とにかく「金縛り」を共有しておきます」
「はい。わかりましたね、みなさん」
「うむ」
「はい」
隊長もジンも共有には慣れている。難なく使えるはずだ
「私は皆さんに壁を」
「あ、えっとリーダー後ろにいるのでつぶさないでください」
・・・カーリアさんは戦闘要員ではない。また気絶しないといいんだけど・・・
「わかっていますよ。では行きましょう。煙幕の処理お願いします」
「招致」
隊長は龍人の力で煙幕を吹き飛ばした
晴れた先、華蓮は一人で戦っている
華蓮にも共有した
訓練の成果か共有したことを華蓮は感づくことができるようになっている
どんな異能力を渡したのかも
ほんとに華蓮の成長能力には驚かされる。その分力強い
なぜか光速は手を出さない。理由はわからないけど超人に釘を刺されたからか。怒らせると怖いと思っているのは向こうも同じみたいだ
「私は少し前に出る。隙を見て断罪を使え」
「はい。お願いします」
隊長はそのまま前に出た
向こうには隆則さんがいる。いくら隊長でも貫けない
自信が囮になることで何とか断罪の条件を満たそうとしてるんだ
「俺は・・・」
ジンはできることがなくてあたりをきょろきょろしていた
「ジンは僕を守ってくれないか、目が見えなくてさ」
「お、おう任せろ」
ジンに元気が戻った。小さいけど戦場によく出ていた。ちょっとのことではへこたれない
たのもしい
ジンの異能力なら飛んでくるものは大抵切り落とせる
ユンファの壁にあたるものもおとすことができれば耐久値の現象を少しでも抑えられるだろう
「できるじゃないですか。やはりあなたに任せるのが正解らしい」
「何か作戦が?」
「いえ、まだその時ではありません」
きっと何か考えがあるはず
大丈夫断罪は使うことができればたとえ特等級の異能力者でも消滅させることができるはずだ
信じて待とう




