華蓮VS超人2
二人の戦いで地面が裂け始めている
すでに陥没している地面は踏み固められてもはやコンクリート、森だった場所はすでに更地だ
転移の指標はかろうじて残っている。メイさんが転移できるようにあの場所だけは守らなければならない
ユンファさんの壁があとどこまで耐えられるかのかが問題だ
この距離の転移には四十分はかかる。そして向こうに戻るのにも四十分
この際華蓮だけでもどうにか逃がせないか・・・そんなこと華蓮自身が許さないよな。だったらここを切り抜ける手段を探そう
静止を誰かに共有すれば・・・インシーさんは無理だと言っていた。じゃあ隊長は・・・
いや連日の華蓮と訓練しているものの目で追うことはできていない
やっぱり戦闘が止むのを待つしかないか
熾烈な戦いはどんどん勢いを増していき二十分ほど経った後超人が地面に叩きつけられることで止まった
チャンスだ!
「インシーさん!」
反応がない
立ったまま気絶している。カーリアさんはすでに泡を吹いて倒れていた
さすがに耐えきれなかったみたいだ。カーリアさんは仕方ないにしてもインシーさんまで・・・
僕だけでも力にならないと
超人と華蓮は何やら話している。服はもうボロボロだ
超人だけ
華蓮は傷ひとつついていない
そんなに力の差がついていたのか
天津さんとの訓練はそれほどまでに・・・
とにかくインシーさんを起こさなければどうにもならない。戦闘が止んだ今、圧も多少ゆるくなっている
「インシーさん!起きてください!」
「う。うぅ・・・わたしは」
意識が戻ってきた。でもこの状態じゃ断罪は使えそうにない・・・
どうにか・・・今起きている四人でどうにか・・・
「つながった!」
思案している最中メイさんが戻ってきた
拠点に転移するまであと四十分待たないといけない。それまで何とか耐えられれば、あとは華蓮を呼んで飛ぶだけだ
「ああ、メイ。よく帰ってきてくださいました。皆さんすみません、気を失ってしまうとは・・・」
インシーさんはしっかりと意識を取り戻した。戦いが止んだおかげだ
「はい。それでは準備に入ります。それまでどうか耐えてください」
メイさんは再び目を閉じ指標の指定に集中する
今の華蓮なら超人を吹き飛ばしてこっちに退避してくることくらい余裕だろう
超人を倒さなくていい。今は逃げることが最優先だ
「わかりました。私はもう一度断罪を行使できるか試してみます」
「そうですね。倒せるならここで倒しておきたいですし」
しかし、さっき気を失っていたせいかまだ頭が回っていないみたいだ。ふらふらしている
試すとは言ったもののこれじゃ・・・
「ううっ!!!」
メイさんが突然うめき声を上げた
「な、何が!」
「どうしました!?メイ!」
「撃たれたみたいだ・・・致命傷ではないですが・・・」
右鎖骨部分に何かが貫通したような跡がある
地面には何かが抉れた跡が・・・
「鉛玉・・・ユンファさん!」
「わかってる!」
華蓮と超人の方向にだけ集中して出していた壁を全体に張り直す
直後また鉛玉が飛んできた
鉛玉・・・「狙撃」。爺さんがどこかにいる。それも僕の目が届かない範囲に
何で数十キロ先のメイさんを打ち抜けたのかはわからない
そんなことより
「これでは・・・拠点までの転移ができません・・・」
喧騒はどうにかできても体を貫かれては・・・痛みで集中ができないんだ
「メイ、ならば指定せずに飛べますか」
「できますが・・・どこの指標に飛ぶのかわかりません」
「もしかしたら有栖さまがつけてくれたものがまだ使えるかもしれません」
確かにあれが残っていれば・・・でもあれはおそらく天津さんの力が・・・いやそんなことよりこの場から逃げないと
鉛玉が絶え間なく撃ち込まれている。これが華蓮に向けて撃たれてはさすがに形勢が傾く
「試してみましょう。うまくいくかもしれません」
このままとどまってしまったらメイさんが持たない。拠点に飛べるかは博打・・・それでもここにいちゃ危険だ
「華蓮を呼んできます。すぐに飛べるようにしてください」
「ええ、できるだけ早くお願いします」
超人もここまで連れてきてしまう可能性も捨てきれない。だけど華蓮を見捨てることは論外だ
・・・例えほかの人が犠牲になろうとも華蓮だけは守ってみせる
できるだけ二人に近づいて叫ぶ
「かれええええええええんんん!!!!戻ってこおおおおいいい!!」
姿は見えないけどこの距離なら聞こえるはず・・・
・・・聞こえないか。もうすこし
直後轟音と共に地面が揺れた
聞こえたみたいだ
くぼんだ地面から華蓮が姿を現し僕を抱え、一瞬でみんなの元へ戻った
超人がくる気配もない
「飛びます!」
僕たちはどこに飛ぶかわからないけど転移した




