表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
閉ざした世界に革命を。  作者: 凛月
第2章 「革命軍」
60/100

驚きの連続3

 お昼。一時間ほど走って有栖の家に来ていた


「・・・ってなって、僕も参加することになった」


 全員驚きやしなかった。むしろそうだよねって感じだ


「ま、そうなるわよね」


「だな」


「言ったでしょ。行くことになるかもって」


 反対意見がない。もしかして心配じゃないの僕の事


「でも、やり切れる気がしないよ僕」


「何言ってんだよお前。自分が連中と同じ化け物になってるって気づいてねえのかよ」


「え?そんなことあるわけないじゃん」


 みんなしてぽかんとしてた


「貴樹。一度その防具脱いでみなさい・・・有栖体重計あったわよね」


「あるよ。天津!」


 僕は防具を脱いで隣に置いた。これ脱ぐとほんとに羽が生えたみたいになる


「で、何するの?」


 華蓮はこの十キロある防具を軽々持ち上げて天津さんが持ってきた体重計に乗せた


 ゴスっ音と共に計測が始まった


「防具の重さ計ってどうするのさ、十キロでしょそれ・・・まさか」


 疑われてるのか、ちょっと軽くしてるかもって


「ずるなんてしてないよ!?もらったときのままだから!」


 僕の弁明虚しく。三人とも体重計を見ている


 信じてくれてないらしい


 計測が終わって彼女たちは顔を見合わせた


「これ、やっぱり・・・」


「そうだな」


「私は知ってたよ?頼んだの私だもん」


 華蓮とジンは有栖を見てあきれ顔でため息をついた


「貴樹、これ見なさい」


 僕は恐る恐る数字を見てみた。減ってませんように・・・



        五十五キロ



「え?これ体重計壊れてるよ?」


 十キロの防具が五十五キロなんてこの体重計乗ったら誰でもボディービルダー並みの体重になるぞ


 華蓮とジンはため息をついた


「じゃあ、タカキが乗ってみろよ」


 これに乗ったら百キロ行っちゃうじゃん


 訓練が足らないとか言わないでよ・・・



        七十二キロ



 えっと。マイナス四十五キロだから僕の今の体重が


「二十七キロ?」


「そんなわけないでしょ」

「んなわけねえだろ」


 二人に頭を叩かれた


「現実見なさいよ。これが十キロと思ってる方が馬鹿げてるわ」


 でも見た目は支給されたときと変わんないんだけど


「天津に頼んでちょっとずつ重さだけ変えてもらってたの」


 そんなことまでできるの天津さん


「いや、いくら何でも気づくでしょこんなに重くなってるなら」


「お前が鈍感なのか馬鹿なのか。俺だってあり得ねえよ」


 ジンのあたりがきつい。いつも通りだけど


「・・・なんでかどうかは今はいいじゃない」


「いいの!?」

「よくねえだろ!?」


 ジンと二人顔を合わせた。息ぴったりだ


「とにかく、化け物入りおめでとうってことよ」


 なんか煮え切らないなあ


「有栖は何か知ってる?」


「え?なに?」


 有栖は重い防具を持ち上げようとして両足で踏ん張っている。かわいい


「何で僕が気づかなかったのか」


「貴樹が馬鹿だからね!」


 絶対何か隠してる


「お前ら俺にも秘密にしてたのかよ」


 ジンが悲しそうにつぶやく。ちょっとかわいそう


「聞かれなかったから興味ないのかと思って。いいわ、こっち来なさい」


 華蓮とジンが壁際のほうに行って耳打ちをしている


「な、な、なにいいいい!あれってそういう・・・・俺てっきり・・・」


 え?なに。僕も聞きたいんだけど


「貴樹には内緒ね」


「い、言えるかこんなの!」


 気になりすぎるけど絶対教えてくれないだろうし


「このことあとは誰が知ってるの?」


「タツマだけ。さすがに教えないわけにはいかないもの」


 最近隊長が無茶を言わなくなったのはこれのせいか


 捜索に参加させるといったのもこれが・・・余計なことしてくれて


「でも実感わかないな。普段の生活も変わらないし。ちょっと重いもの持てるようになったのは訓練のおかげだと思ってたし」


 お風呂で脱ぐときも全然変わりなかったしな


「そうね・・・じゃあ私の事持ち上げてみなさい」


 いつも唐突なんだからこのお嬢様は。確かにこの三人の中なら華蓮が一番重い。そんなこと言ったら怒るから黙ってよ


「なによ。文句あるの?」


 顔に出てた。さっきローガンさんにちゅいしろって言われたばかりなのに


「い、いや何も・・・それじゃしつれ・・・


「あんた脇抱えるつもりじゃないでしょうね」


「え?」


 ああ、そういえばこの前くすぐろうとしたときめちゃくちゃ嫌そうな反応してたっけ


「じゃあ、こう?」


 僕は膝立ちになって両手を少し広げる


「それに決まってるでしょ・・・」


 華蓮も横になって僕の両腕にすっぽりとおさまる


 あり大抵に言えば「お姫様抱っこ」である


「じゃ、持ち上げるよ、一、二の三!うおっとっと」


 華蓮は小さいながら肉付きがよく筋肉質だ、おそらく五十キロ届くか届かなかくらいのはずだ


 それが持ち上げてみると羽のように軽い


「え、え?華蓮ちゃんとたべてる?」


「毎日見てるでしょうが」


「そうでした」


 にしても軽い、このまま垂直ジャンプで一メートルは飛べそう


 ちょっと屈伸してみる。全然余裕だ


「ほんとにちゃんと筋力はついてるね。こんなになってるなんて思わなかった」


 少し回転してみた。全然余裕だ


 歩いてみた。普通に歩いてるのと一緒


 かれこれ二分くらい持ってるけどまだこのままでも行けそう


「次私やって!」


 有栖が両手を広げてせがんできた


 これは高い高いか?小さいと言っても百四十はある。いけるかな・・・


「じゃあおろすよ」


「ま、待ちなさいよ。・・・えっと、そう!ジャンプがまだね!やってみなさい」


「わ、わかった。落としても何も言わないでよ」


 華蓮は頷いて僕の首に腕を巻き付けたちょっと苦しいけどこれなら落ちない


「行くよ、せーの!」


 予想通り一メートルくらい飛べた。この部屋の天井が高くてよかった


 フローリングに靴下だったから転びかけたけど何とか踏みとどまった。あぶないあぶない


「ごめん、ちょっと危なかった」


「いいわ、そのくらいでケガするほど軟じゃないわ」


 それもそうか。僕は華蓮をゆっくりおろした


 少し顔が赤くなって胸に手を当てている。ケガしないとはいえさすがに怖かったか。ごめん


「次は有栖だな」


 有栖はそのまま脇に手を入れて持ち上げた。持ってる感じがしない。羽のついた天使のようだ


「有栖も軽いね」


「貴樹が力持ちになったからね」


 笑顔がたまらない。勢いあまってそのまま上に放り投げてしまった


「や、やば」


 天井すれすれで止まって僕の腕に収まった。華蓮と同じ状況だ。つまりお姫様抱っこ


「た、たかき・・・いくら私でも怖いものがあるよ?」


「ご、ごめん・・・」


 華蓮の目線がきびしい。有栖を下ろすことにした。危ないことしてごめんなさい


 怖かったけど楽しかったのか有栖は笑顔で華蓮の膝に乗っかった。いいね、かわいい


 一言かければよかったな。ならば楽しいだけだったかもしれない


 視界の端でジンがもじもじしている


「ジンもなにかする?」


「いいのか!?」


 待ってましたと言わんばかりの食いつきだ


 大人びてるとはいえまだ華蓮と同じ年だからな・・・と言ってももう高校生になる年だぞ、いいのかそれで


 まあいいか


「じゃあおぶってくれ!」


 三者三葉みんなリクエストが違う


 腰を落として背中を開けた


 ジンも軽かった。華蓮より少し軽いくらいかな


「おお。すごいな。次!肩車してくれ」


 おっと二つ目の注文だ。これはありなのか?


「私も!」


「私も・・・」


 ありだった。順番にやったげよう


「おお!すげ高けえ!」


 僕はそれほど背が高いほうではないけど、ジンの高さもたされて中々目線の位置が高いみたいだ


「さすがに、これは動きまわれないな」


 飛んだり走ったりは危なそうだからゆっくり歩くことにした


「これはいいな。今度一回拠点の中・・・はハズイからいいや」


 さすがにそれほど子供じゃなかったみたいだ


 今度タオにやったげようかな・・・いやローガンさんの肩乗せに喜んでたから僕じゃだめだな


 次は有栖にやってあげた


「わ~すごい。でも天津には勝てないね」


 二メートル近い天津さんと比べないでよ・・・というか肩車は僕じゃなくて天津さんにやってもらえばいいのに


 少しだけ歩いて華蓮と交代だ


 華蓮も二人と同じく持ち上げる


 華蓮も結構背が高いからバランスをとるのが難しい


 でも筋力でカバーできるくらいには鍛えられてるみたいだ。実感がわいてきた


 華蓮が太ももで締め付けてきた


「二人とも怖がらなかったけど、やっぱり怖い?」


 締め付けが強くなった


「んなわけないでしょ」


「ご、ごめん」


 怖いかどうか聞くのはやめることにしよう


「そういえば、ずっと華蓮に担がれてたけど今度は僕が担ぐ番が来るかもね」


「・・・その時は頼むわね」


「うん」


 任せなさい。頼りないとは思うけどがんばるからね


「少し筋力がついたことはわかったよ。三人ともありがとう


「自覚できたみたいでよかったよ。私は気づかないまま作戦に行ってほしかったけどね」


 やっぱり鬼だ。このこ


「はじめは俺がすっ転がしてたんだけどなあ、差つけられちまった」


「ジンも十分強いと思うけどな」


 僕はジンが勇敢に戦うところをちゃんと見てた


 だからまだジンには追い付いてないと思ってるよ


「で、いつになったら下ろしてやるんだ?」


 あ、華蓮乗せたままだった


「ごめん、違和感なさ過ぎて忘れてた」


 華蓮の締め付けもなくなってたから完全に忘れてた、手で足持ってたのに


 僕はゆっくり華蓮を下した


 華蓮の顔が真っ赤だった。ごめんその年で長いこと肩車されたら恥ずかしいよな


「・・・重くなかった?」


「うん全然」


「なんか違和感とかは?」


「なかったよ。なんで?」


「ううん。それならいいの。お風呂入ってくる」


 それだけ言って部屋のほうへかけていった


 何があったんだろう


「ま、あれだな」


「うん、あれだね」


 あれって何ですか


 まあなんにせよ、僕が多少強くなったことはわかった


 これくらいで喜んだりはしない。まだまだ足りない


「天津さん、これからもお願いします」


「かしこまりました」


 知っちゃったから重くなったことがわかっちゃうかもしれないけどやらなくなるよりましだもんな


「そういや、このあと天津さんと稽古するんじゃなかったっけ。何でお風呂いったんだ?」


「女の子にはいろいろあるんだよ」


「そうだぜ。詮索してやるな」


 そっか。ジンの事男だと思ってた僕が女の子の機微なんてわかるはずないや


 女の子事情は二人に任せよう


 心許せる友人ができてよかったね。華蓮


 あれ、そういえば


「僕たちって友達だよね?」


「当たり前よ!」


 有栖は勢いよく答えてくれた。うれしい


 あれ、ジンは?


「俺はちげえ」


 目をそらされた


 許してもらえたと思ってたけど友人とは認めてくれてないらしい。つらい・・・


「そっか・・・」


「・・・まあ別に嫌いってわけじゃないぜ」


「ほんとか!?」


 なるほど、革命軍の仲間って括りなのか。納得がいった


 なんにせよ、ここにいる三人くらいは守れるようになろう


 あと一か月。作戦開始まで気を抜かずに頑張ろう




 そのあとの華蓮の稽古はいつも以上にとんでもない迫力だった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ