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閉ざした世界に革命を。  作者: 凛月
第1章 「平和な世界」
6/100

訪問者1

 華蓮がなぜ実家である東方本家ではなく近衛家に住んでいるのか


 訂正、住んでいるのではなく住みついているの方が正しい


 ニュアンスは違うが簡潔に言うと、彼女は東方の窮屈な生活に我慢できず中学入学前に飛び出してきたのだ


 もちろん戻ってくるように説得するため、本家から相当の異能者やに西方家当主を連れて押し寄せて来た


 異能力を使って抵抗しようものだからみんな手を出せなかった


 本気で暴れればどうなるかわからないからだ


 だけど僕の言うことを聞くのならということでお許しが出た


 華蓮は僕に懐いていたから。・・・懐いていたんだけどなあ


 三年のあいだに何があったのか。なんかしたかなあ僕


 何はともあれ、それからはずっとこの生活が続いている


 彼女はもちろん家事なんて手伝わない


 やっていることといえば食べて寝て・・・それくらいだ


 それでも別に僕は彼女に不満を覚えたことはない・・・断じてない



 僕は今、居間のソファで寝転びながらテレビを見ているご主人様にご飯を作っているわけなんだけど・・・


「ご飯の前にお菓子食べるなってなんか言ったら聞いてくれるのさ」


「いいじゃない、別に。いつも出されたご飯全部食べてるでしょ」


 そういう問題じゃない気がするんだけど


「そんなのでよく太らないよね。女の子ってその辺大変だって聞くけど」


「私は異能力のせいですぐ消費されるから大丈夫なの~」


 そうだった、結構燃費悪いんだよな華蓮の異能力


 空腹で機嫌が悪くなるよりはいいか・・・ 


 出来上がった料理を皿に移し、二つの茶碗にご飯をよそって完成だ


「ほら、できたよ」


「ほわーい」


 だらしない返事でそれとはまったく違う機敏な動きでテレビを消した


 異能力なしでもあの身体能力だ。うらやましい


「「いただきます」」


 二人で一緒に手を合わせて言葉を合わせる。いつものことだ


 小学校のころから家事全般を僕がしているから、料理はそれなりにできる方だと思う


 正面に座っている華蓮の箸の動きを見る限り、今日も満足いただけているようだ


「何見てるのよ」


「いえ、何も」


 自分の料理をここまで豪快に食べてくれる嬉しく思う


 女の子らしさの欠如は別として


 と、急に華蓮が箸を止めた


 さすがに見過ぎたか、と思ったけどそうではなかったらしい


「そういえば、利明(としあき)さんと隆美(たかみ)さんは次いつ帰ってくるって?」


「何もなければ十二月には帰るって言ってたよ」


 利明さんと隆美さんというのは近衛家の現当主とその妻である。今頃合衆国で寝る間もなく働いているだろう


 異能力の研究に北方家の人間が参加しているため、それの護衛ってわけだ


 僕たち二人を残して夫婦そろって家を空けるほどの重要な仕事だ


 区切りがついて北方の人間が帰るときにしか帰ってこれない


「そっか」


 表情は全く読めなかったが、何か気になることでもあったんだろうか


 それで会話は終わってまた豪快に食べ始めた


 元から食事中はほとんど喋らない


 もくもくと食べ続ける華蓮を視界に収めながら僕も食べる


 食事が終わり、食器を洗ったあとは少し休憩だ


 部屋に戻って明日の準備やら、探索に持っていくものの準備をしておく


 諸々してたらもう二十二時を回っていた


 そろそろお風呂入らないと


 リビングを見ると華蓮はテレビを見ながら笑い声をあげていた


「早く寝なよ?」


「わかってるわよ~」


 わかってるんだかどうだか


 けど僕がお風呂から出る時には部屋に帰っている。意外と聞き分けはいい


 体を洗って、湯船につかって落ち着いてたらインターホンが鳴った


 華蓮は絶対出ないしからなあ、とりあえずタオルだけ巻いて出よう


 リビングまで行くと華蓮はまだテレビを見ていた。何かの特番でもしてるのかな


 もう遅い時間なのに誰なんだろ。宅配・・・ではないだろうし


 インターホンの液晶を見てみると東方本家の人間が立っていた


「すみません。ちょっと待っててください」


 超特急で体をふいて服を着る


 本家の人間となると長く待たせるのはまずい


 風呂上りで寝間着だけどご容赦願いたい、アポなしなんだから


 華蓮は誰が来たかを察して自分の部屋に逃げ込んでいった


 家出事件のとき一悶着あったからそこから苦手になったみたいだ


 急いで扉を開けた先にはさっき見た通り、冷たい夜の中その人は立っていた


「お待たせしました、お風呂に入っていたもので」


 もう23時を過ぎているのにスーツ姿だ。仕事帰りかそれともその最中か、多忙な人だ頭が上がらない


 門のところには護衛の二人がこっちに背を向けて立っている


 そちらもお仕事ご苦労様です。


「こんばんは。貴樹君。夜遅くにごめんなさいね」


「いえ。気にしないでください早苗さん」


 突然の訪問者は東方家次期当主が長女、東方早苗(さなえ)


 1等級「御雷(みかづち)」の異能力者


 本気の華蓮には劣るがそれでも日本屈指の異能力者の一人だ


 早苗さんを居間まで案内し、座ってもらう


「わざわざ家に来るということは何か重要な話ですか?」


 早苗さんのために温かいお茶を入れながら話す。暖房は入ってるけど外は相当冷えてたはずだ


 華蓮についての報告はいつも電話で済ませているからそれではない


 早苗さんがここに来たのだって家出事件のとき以来なのだ


「久しぶりにあった余韻には浸らせてはくれないのね。残念」


「盆に会ったじゃないですか。それに僕は明日も学校がありますから夜更かしはちょっと・・・」


「そうね。それじゃ本題に入らせてもらおうかしら」


 早苗さんは神妙な面持ちでふふっと笑みをこぼしながら、隣に置いてあったカバンから紙束を取り出した

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