捜索隊との訓練2
「おーい。大丈夫かー」
顔面に水をかけられて目が覚めた
まだ息が苦しい
「あれ、ぼく」
「ははは、見事に気絶してたぞ!隊長のおふざけにまんまと騙されたな」
「おふざけ?」
なんだそれ
「あの体操のことですか?」
「体操は日課だ。最初からってやつだよ。叫んで立ち上がったと思ったらぶっ倒れたぞ。ははは」
そんなに笑わなくても・・・そうか最初からって冗談だったのか
日課・・・てことは明日もやるのかあれ
最終決戦の死に際みたいな頭の中だったのに・・・これから毎日最終決戦か・・・
タイガーさんに笑われていたら小柄で茶髪の女性が近づいてきた
「ほら、タオル。君とんでもない顔してるわよ」
僕は悲鳴を上げる体を起こしてタオルを受け取る
「ありがとうございます」
顔をぬぐったら汗と涙と鼻水の混ざった液体がタオルを濡らしていた。とんでもない顔になっていたのもこれのせいだ
これは人様に見せられるような顔じゃなかっただろうな
「しかし結構粘ったね。初めてで第五まで行く人いないよ」
え、そうなの・・・?
どうやら僕はそこそこ頑張れていたらしい
「私はサーバル。よろしくね」
「はい。よろしくお願いします」
緑髪の男の人も近づいてきた
「軟弱って聞いてたけど結構根性あるじゃん。俺はタートルだ」
握手した。めちゃくちゃニコニコしている。優しそうな人だ
みんな涼しい顔をしている。慣れてるんだ
「タツマさんは第六までって言ってましたけど、あの体操ってあとどれだけあるんですか」
「十だね。それを三セットで体操終了」
あれの二倍を三セット・・・できる気がしない
「まあ、俺かて全部やれるようになったの二年目やったからな。ちょっとずつ気絶しながらやりな」
青髪で長身の男の人が水を持ってきてくれた。独特な話し方だ、方言かな?
「ありがとうございます」
早速いただこうと口に含んで吐いた
「なんですかこれ!?」
めちゃくちゃ塩辛い。大量に塩入ってるなこれ
「あははは!引っかかりよった、アイタ!」
「ボロボロのやつにいたずらすんな」
濃いオレンジの髪の女の人が青髪を引っ叩いた
「私はチーターよろしく」
「俺はハイエナや」
青髪はハイエナっていうらしい。あんただけは許さない
みんなが話しかけてくれているあいだに息が落ち着いてきた
「そういえば皆さん特戦の時の呼び名なんですね。もう防衛隊員ではないのに本名にしないんですか?」
「ああ、もうこれで慣れてしまってな。急に変えたら誰が誰かわからなくなる」
なるほど。何年もあだ名で呼んでたら元の名前をいいずらくなるってことかな
本名で呼ばれても気づかないこととかありそうだし
「まあ隊長はドラゴンって呼ばれるんがこっぱずかしいゆうてリーダーに名前考えてもろてたけどな!」
「聞こえているぞ。ハイエナ。続きをやりたいか?」
「了!いいえ。勘弁ください・・・」
この人何で特戦に配属されたんだ・・・
「休憩は終わりだ走れ。二周でよい」
「了!」
「りょう・・・」
ここからまだ走るんだ。走れるかな・・・
隊員は外周を走り出した
一周三キロ。二周で六キロ・・・いつも七周走ってるけど今は足がボロボロだ
でもやらないわけにはいかない・・・
一周で足が動かなくなった。むりむりむり
「くっそ・・・」
何とか足を前に出すけど走っているとは言えない
「歩いてもよい。とにかく二周だ」
「・・・わかりました」
なんだか悔しくてできるだけ体を動かす
二周が終わるころにはまた立ち上がれなくなっていた
タイガーさんとサーバルさんは汗すらかいていない。他の隊員は肩で息をしてるけどちゃんと立っている
ここまで二時間半。休憩五分
濃い。濃すぎる。体操が最後までだったらもっとか・・・地獄だ
タイガーさんが話しかけてきた
「どうだ、タカキこれが体力トレーニング。ここから各自で異能力の訓練、必要ならば立ち合いだ」
これが日常・・・作戦がない日はこれをこなさないといけない・・・
でもこれをやりきることができれば絶対に強くなれる
できるようになって、立ち合いもしてもらえるようになろう。死んでなければ
「僕は座っても異能力の訓練ができるのですが、それでもいいですかね」
「ん?そうなのか、どんな異能力なんだ?」
タイガーさんは不思議そうに僕を見てきた
あれ、インシーさんに聞いてないのか。あ、今日戻ってきたばっかりだし話もろくにできていないんだ
「目を媒介にして行使する異能力です。相手の動きを止めたり、暗視や透視ができます」
全部は教えなくていいか。ありすぎ説明に時間がかかる。少しずつ教えていこう
「ほー。どれ俺の事止めてみろ」
タイガーさんは手を横にして上下に振り始めた
「じゃあ行きます」
僕は「金縛り」を使った。静止って言ってたのは「金縛り」って異能力の効果だったらしい
タイガーさんの体はピタリと止まった
「おお。これはすごいな。口以外動かない」
僕は「金縛り」をといた。タイガーさんは腕を振ったり飛んだりしている
後遺症がないか確認しているみたいだ。今までに一度もなかったから大丈夫だと思う
「素早く動いているものに対してはどうなんだ?」
「目で追えていれば止めることができます。目に映っていなければ止められせん。瞬きでもとけますね」
「ほう。素早く動いているものを止めてといた後はどうなるんだ」
「一度完全に静止するので勢いも全ぶ消えますね。かけられた人によると変な感じがするらしいです」
「なるほどな。おーいチーター!軽く異能力使って走ってくれ」
遠くでストレッチしているチーターさんに伝えた。やっぱり声が大きい
「なんでー!!」
「なにも聞かずにやってくれ!!」
不審に思うのは当然だけどチーターさんは仕方ないといった感じで軽く異能力を使ってくれた
「あいつの異能力は「高速」時間が経つにつれてスピードが上がるものだ。止めてみろ」
「わかりました」
チーターさんは早いけど華蓮ほどじゃない。許容範囲だ
言われたとおりに止めてみた
「おお、しっかり止まったな」
「ではときます」
チータさんは転びそうになりながら立ち止まって次はこっちに走ってきた
「今の何!?」
どうやらお眼鏡に適ったようでものすごく興奮している
少し怖い




