しんせいかつ1
地下街にいたはずの僕は地面が青く光った次の瞬間には見知らぬ場所に立っていた
「ここは・・・」
この現象は天津さんの時と同じような感じがする。おそらくどこかに飛んだらしい
「ここはユーラシア大陸を分断する障壁に一番近い共和国の最北端です。少し北上すれば連邦に入ります」
地下街のあった南第二区から真反対の土地だ。ってことは数千キロを一瞬で
天津さんもすごいけど。メイさんの異能力は規模が違う
彼女はオレンジの髪をした四十そこそこのすらりとした女性の方だ
「話をしたいところですがこの人数です。忙しくなりますのでまたあとで。タカキはカレンと共にメンバーの指示に従って行動してください」
「わかりました」
インシ―さんはそのまま人ごみの中に消えていった
ローガンさんも仕事に言ったようで華蓮が僕の近くに寄ってきた
「地下街も広かったけど、ここも相当広いわね」
「そうだね、日本とは違って土地がたくさんあるからこういう施設も作れんだろうな」
それにしてもすごい数だ。四千ほどって言ってたっけ、各地から集まった人も先にここで匿われているってことはまだまだいるし施設もこの広場だけじゃなくてもっとあるんだろう
「おい、タカキ・・・カレンお前らは俺についてこい」
僕らを担当するのはジンらしい、後ろに数十人の地下街出身の人たちを連れている
まだ華蓮にはビビっているみたいだ
とりあえず黙ってついていこう。こういうのはスムーズに済ませたいだろうから
僕らはそれからありえない広さのエレベーターに乗って上に上がった
この施設は縦にも長い。エレベーターの操作盤に20階まで表示されている
「ここにはすでに解放された二千人が暮らしてる。今回の四千人は予想外の予想外でな、受け入れの準備はしてあるがそれでもたりねえ。まあ地下街からそのまま持ってくるもんもあるから明日には普通に暮らせるだろうよ」
何か所か回って二千人だったのか。今回の地下街は本当に異常な広さだったんだな
僕らは五階で降りた。そのさきにはとんでもなく長い廊下にとんでもない数の部屋が並んでいた
「一部屋二人用から六人用まで。家族連れは同じ部屋か多い場合は隣同士で分けてある。今から番号書いた紙渡すからそこの部屋に行ってくれ。荷物はあとで届く手はずだ」
仕事が板についている。やはり彼はしっかり者のいい奴らしい
「お前らはとりあえず同室だ。兄弟なら我慢してくれ」
渡された紙を受け取ろうとしたら横から華蓮にかっさらわれた。ちょっと怒ってそう
そうだよね。思春期の女の子が兄弟みたいに育った僕と同室なんかいやだよね
肩を落としながら華蓮についていくことにした
部屋は二人用で八畳くらいの広さだった意外と広い壁はないけど脱衣所があるから着替えには困らなさそうだ
ベットが二つ置いてある。トイレ風呂別だ。キッチンだってある。普通にアパートのアパートと同じ作りか
華蓮は何も言わずシャワーを浴びにいった。さすがに匂いが気になる。戦争の後だ早く汚れを流したい
これが四千人分あるって・・・ここどれだけ広いんだ
ベットに生活上の注意書きがおいてあった。そんなに特記するようなことはなかった
近所迷惑な行為は慎みましょうだとか、ゴミは回収日に出しなさいとかそのへんだ
施設内部の地図もある。なんだこれ、普通のショッピングモールみたいじゃないか
仕事についても書かれてある。大体ここ施設のお店で働けるようだ
地下に工場みたいなのもあるらしい、給金もでる
ここまでは地下外と同じように思えるが外に出れるというのが大きい。外にもいろんな設備やら施設があるみたいだ。窓からいろいろ見える
にしても広い。なぜこの場所が政府にばれていないのか気なる
そして、どうやってこんな大規模なものを作れたのか全く想像できない
華蓮が風呂場から出てきた何やら不機嫌な顔をしてるなと思ったれ髪はびしょぬれで服はさっきと同じだ
そういえばタオルもなければドライヤーもない着替えなんてもちろんない
自業自得ではあるがさすがに可哀そうだな
そんなこんなしていたら部屋のインターホンが鳴った。インターホンまでついてるのか
音声機能やら液晶はついてないので異能力で外を見てみた
そこにいろいろなものが乗ったカートとジンが立っている
とりあえず何もなさそうだしドアを開けることにした
「よう、お前ら何も持ってこれてねえだろうからいろいろ持ってきたぞ、とにかくその匂いと服どうにかしてくれ」
鼻を抑えながら言ってきた。さっきまで我慢してたんだろうかそれとも自宅だから匂いが気になりだしたのか。
まあどちらにせよジンの優しさを受け取っておこう
「ありがとう助かるよ」
「おう、まあこれからは仲間だしな、よくて・・・
華蓮がすごいスピードで服とタオルに洗剤をカートから抜き出しまた風呂場に向かっていった
と、なにかを忘れたかのように脱衣所から顔をのぞかせ
「たすかったわ」
それだけ言って頭をひっこめた
「お、おう。どういたしまして」
「すみません。うちの妹が・・・」
「いや気にすんな。そいやお前いくつだ?俺と同じくらいだろ」
「今年で十七です」
ジンはあっけらかんと
「まじかよ。年上かよ・・・生意気な口聞いちまった」
マジかよ年下かよ。それにしては大人びいてるな。生き方の違いってやつかな
「あーまあ敬語は必要ねえっす。すんませんした」
急にしなしなになった。ちょっとかわいそうだ
「気にしてないよ。それにさっきまでの君のほうが何だかしっくりくる」
「そうか?なら今まで通りだ。よろしくなタカキ」
「ああ、よろしくジン。ところで君は何歳なの?」
「十五だ」
華蓮と同い年だった。ちょとはこの落ち着きを見習ってほしいものだ
ジンはまだやることがあるようですぐに行ってしまった
とりあえず手だけ洗ってカートの中身整理しておこう
中には着替えにタオルにドレイヤーまで入っている。あとは諸々の日用品
それからお弁当が入っていた
今はもう十八時だ。飛行機の中で食べた後何も口にしてないし何なら吐いてしまったから腹ペコだ
華蓮は何も言ってこなかったけど、おそらく相当お腹がすいているはずだ
本当に助かった
今度の風呂は短かった。さっきのでほとんど気にならなくなっていたんだろう
それよりも出てきたときの僕の匂いが気になってたんだろうな
僕は華蓮にドライヤーと弁当があることを伝えて風呂場に向かった
風呂場に入ったらバスタブの中に華蓮が着ていたスーツが脱ぎ捨てられていた
直接戦闘はしていないからあまり汚れてないけどどうしても血はついてしまっていたし匂いもこびりついている。
洗ってほしいんだろう。ちょとがんばったような跡があるから断念したみたいだ。前までだったらこんなこともしなかったのに。少しずつ成長してくれてるのがわかる
僕のも放り込んでおいた、あとで洗ってみよう。もしかしたら今後使うことがあるかもしれない。北方製のこれは結構貴重だ。それにおそらくかなりの値がする
とにかく今は匂い落としだ。シャワーの栓をひねる
今日も朝からいろんなことが起きた。多分短い人生で一番濃い一日だったと思う
爺さんや兄さん姉さんたちをおいてこっちに来てしまった
それに光もか、言い訳どころじゃなくなったな。南の人間だしいつか会うことになるかもしれない
有栖もそうだ。たった三日、実質二日の付き合いだったけど、いろいろお世話になった
助言もそうだし、異能力についてもかなり教わった
今回切り抜けられたのだって、有栖のおかげだ
多分今後会うこともないだろう。ちゃんとありがとうって言っておけばよかった
学校もそうだなあ。もう絶対戻れないな。皆勤賞逃してしまった。でも意外と気にならない、それまでのことだったってわけだ
いろいろ後悔はあるけど、華蓮を守るっていう一番大切なことは果たせていると思うからそれでいい
匂いも気にならなくなったところでスーツを洗うことにした
かなりすんなり落ちた。性能のおかげかな。
華蓮のものはところどころ傷がついている。おそらくかなり力を込めてこすったんだ
頑丈なスーツをこんなにするなんて・・・不器用にもほどがあるな
落ちたところで浴室乾燥させることにした朝に外干しすることにしよう
脱衣所から出たら髪を乾かし終わって弁当を食べている華蓮がいた
すんすんと遠くから匂いを嗅いできたけど気にならなくなったようで、箸を進めている
僕も食べることにしよう
おそらく外はまだ割り当てで忙しいだろう。でも出て行ったところで何もできないから部屋でおとなしくすることにした
食べ終わったあとすぐ眠気が襲ってきた。昨日もろくに眠れなかったせいか体に限界が来たみたいだ
革命軍のみんなもっと忙しかったはずだ。だけど今日はもう無理だ。許してほしい
歯だけ磨いてベットに寝転がった。食べた後すぐに寝ちゃだめだよといつも言っているけどそんな気力はない。
華蓮はすでに夢の中だ
目を閉じるとすぐに眠りに入ってしまった




