革命軍2
「それでは、話を始めましょうか」
ローガンさんがもってきてくれた椅子に腰かけて、四人向かい合いインシ―さんの話を聞くことになった
「一番最初は私が鎮圧に赴いたことがきっかけでしたね。
一等級の異能力者が暴動を起こしたためそれを治めよというのが政府からの指令でした」
「そこに俺も家から指示されて同行した。あと数人いたが顔も知らねえ連中だったな。まあ全員死んだがな」
仲間が死んだ話を目の色も変えず淡々と話すローガンさんは少し怖かった
「一等級異能力者シェン。革命軍のもととなった組織のリーダーの処理が任務でした」
「シェンさんは今どこに」
「死にました。私と共に派遣された一人のものと相打ちとなって」
そうか。でも、仕方のないことなのかもしれない。戦争なんだから
「暴動の目的はシェンから直接聞いたわけではありません。
その時シェンの補佐をしていたミヤから伺いました。シェンはよく予知夢をみたそうです。
異能力は関係ありません。そういう体質だったのだと言っていました」
予知夢か。異能力とはまた違う根拠のないものに何があるんだ
「シェンは頻繁に見て、それらすべてが現実に起こったそうです。くだらないことから大きな事件まで。
あの日私が派遣されることも、そして自分が死ぬということも」
「自分が死ぬと予知しながら、暴動を起こしたんですか」
「彼にとってよっぽどのことがあったから行動に移したのでしょう。自分にしかできないと知っていたから」
「あいつの異能力は「分解」ありとあらゆるものをもとの素材へと変えちまうんだ。かなりてこずったぜ」
「最初私たちは普段通り鎮圧を行いました。順調なものでしたよ。あの時は殺しが正義でしたから。今思えば最低な行為だったと、そう思います。彼と対面した時、彼はこういいました。俺のことはどうなってもいい、だがこの先にいるやつらのことはどうか、どうか解放してやってくれ。と」
議会の処理。管理できないと判断した異能力者の排除。つまるところの処刑
「命乞いにしか見えなかったな、あれは。自分はいいが仲間は助けてくれと。よくあるやつだ」
「私も最初はそう思いました。しかし、相打ちとなって死にかけている彼は最後も同じようなことを言っていました。ただ一つひっかかったのです。「この先」というのがどういう意味なのか。それを彼に問いました。彼は地下にある扉を開けてくれとそれだいって息を引き取りました。今となってはあの時生きてくれていればと後悔してます」
扉の先。おそらくこことはまた別の地下街の話だろう
「鎮圧隊で生き残ったのは俺たちだけだったからな。シェンのもとに集まってた連中もそんな数はいねえし戦う気力もなかったし、なら遺言通り扉の先というものを見てやることにしたんだ」
「その扉の先には、ここより小さい地下街がありました。それまではよかったのです。
ただ地下にシェルターを作って生活している人達がいるとしか思ってなかったものですから」
黙って聞いていることしかできない。華蓮は警戒を解いて聞き入っている
「解放してくれって言ってたからな。とりあえず住人に話を聞こうと降りて行った。んなら、そこら中から人がわんさか出てきて、こう叫んだ解放者だ!夢の話はほんとだった。外の世界はあったんだとってな。訳がわかなかったぜ。俺らがドンパチやってた音を音楽かなにかと勘違いしてガキどもが躍ってたな」
ローガンさんはさっきと違う、弱弱しく悲しそうにつぶやいた
殺し合いの音で子供が躍っていたなんて知ってしまったらやるせなくなる
「解放者とは何か、夢の話とは何か。彼らは快く答えてくれました。彼らはそもそもこの地下街こそが世界のすべてだとそう信じていたそうです。この閉鎖された空間が、空も雲も風もない、雨も降らないこの地下街がすべてだと。しかしある時から、全員が全員同じ夢を見始めたようです。外の世界の夢を。空と海とそして行きかう人々見知らぬ乗り物、すべてこの地下街にはないものだったと。そしていつか解放者が扉を開きここから連れ出してくれる、そんな夢をみたそうです」
「全員ですか」
「ええ、各地の地下街余すことなく全員です。通信手段も何もないというのに」
これはもう偶然なんかで片付けられるものじゃない
何かしらの意志はかじられるけど、何かはわからない
「それから私たちはシェンの下に集まった者たちと話し合いをしました。つい先ほど殺し合っていた中です、当たり前ですが、敵意を感じました。だけど彼らは仕方のないと何かを受け入れているように応じてくれました」
普通は話し合いに応じることも戦いをやめることもしないだろう、でも
「それも予知夢で知っていたってことですか」
「はい、彼が死んだあと話し合いをしなさいと皆に言っていったそうです。・・・私がこのあと導いてくれる存在になると」
「馬鹿な話だぜ。シェンは最初から話し合いを望んでいたんだよ、俺達は命乞いだと言ってきかなかったがな
少しは抗おうとしてたようだが、結局予知夢の通りになっちまった」
絶対に現実になる予知夢。抗おうとしたことすらも予知されていたんだ
「自分が死んだ後の予知夢は見ていなかったそうです。ですが、私なら導いてくれると彼はなぜか信じていたとミヤはいっていました。皆、彼の事を信頼し愛していたのでしょう。歯向かうものもいませんでした。このまま殲滅をと、考えなかったわけではありませんがただ政府に疑念を抱いてしまって少し彼の言う通りにしてみようと思いました。ローガンは反対していましたがね」
「んなもん、政府に真っ向から対立するやつを止めないわけにはいかねえだろ」
インシ―さんは笑顔で言っているがローガンさんが正しい。僕が言えたことではないけど
「それから回を重ねるごとに疑念はたまっていき、今ではこうして革命軍のリーダーをさせていただいています。私たちの大義名分は隔離されたものたちの解放です。異能力者の差別を許さないと世では言われているようですが、政府が書き換えたのでしょうね」
やはり考えなしのテロリストではなかったということだ。それを聞いてひとまず一息つけた気がしる
「しかし、解放といってもこの人数をどうやって匿うんですか。地下街は使い物にならなくなるみたいですし」
この大きさの地下街を解放したとなるときっと議会が押し寄せてくるだろう。逃げ道はどこに
「ちゃんと脱出ルートは確保してあります。そうでなければ今までの解放もできていませんよ」
確かにその通りだ。頭が少し抜けていた
「今慌ただしいのはルートの確保のためですか」
「今のあなたに教えるわけにはいきません。話を聞いて革命軍に加わるなら共に、そうでないならここにそのままお残りなさい。あなたたちはまだ子供です。今聞いた情報を聞き出したということであの行為も許してもらえるでしょう」
「殺さないんですね」
「言ったでしょう。私たちは無用な被害は出さない。これくらいの情報でつぶれるような組織ではありません。それにあなたたちはまだ子供です。本当は巻き込みたくないのですよ。今いる子供たちもここにいるべきではないのです。ですがあなたが自分の意志で私たちに組するというのであれば、止めはしません。歓迎しましょう。答えは私たちがここを出るまでに決めておいてください」
「いえ、待つ必要はありません。僕も加えてください。最初からそのつもりでいましたから」
インシーさんは驚いた後、笑いかけてくれた
「急ぐ必要はなかったのですが・・・そうでしたか最初から」
「信用はできませんでしたが、僕も華蓮もあのままではいられませんでしたから」
「確かに嬢ちゃんの異能力は使いつぶされるだろうな。今も制御できておるようだし
手まで握っちゃってなあ、なんだ?お前の女ってわけか?ははは」
ローガンさんは高く笑った
まずい、そんなこと言ったら華蓮が何するか・・・
が、何も起きなかった。僕の尻がはれたぐらいだ。イタイ
でも調子が戻ってきたようだ
「私もこいつと一緒に行くわ。おいてかれるわけにはいけないもの」
「ええ、歓迎しましょう。それからあなたを使いつぶすつもりはありません。あなたの意志で守りたいものを守ってくれればそれでいいでしょう。たまに力を貸していただけると嬉しいですがね」
「それでいいわ」
なんとも高慢な態度だがこれがいつもの華蓮だ。文句をゆうやつは僕が眠らせてサンドバックにしてあげよう
「まあお前らは箱入りみたいだからな。鍛えなおしだ。嬢ちゃんの相手は俺ぐらいしかできねえ、選ぶことはできねえぜ」
「そうね・・・戦い方は私も教えてもらいたい。お願いするわ」
「ははは、よろしい!ではあとで段取りを決めるとしよう、つらくなってもやめさせなあからな」
「望むところよ、あんたこそ壊れないでよね」
あの二人は何か同じ人種な気がする。仲良くなってくれるのはありがたいけどほどほどにね華蓮・・・
「早速仲がよろしいようでうらやましい限りですね。私はかなり苦労しそうです」
「まあなれればそうでもないですよ。人懐っこいところはあるので」
「そうですか、では私も少しづつ距離を縮めることにしましょう。あなたとはすぐにでもと思いますがね」
「ええよろしくおながいします。タカキと呼んでください」
「はい、これからよろしくお願いします。タカキ」
僕はインシ―さんと固く握手を交わした
「リーダー準備できました」
こちらの話も済んだところで、ヨウが走ってきた
「ありがとうございます。では行くとしましょう。タカキもこちらに」
僕はインシ―に連れられ人が集まるところに向かった
華蓮は何やらローガンさんと真面目な顔で話しながらついてくる
僕ではああいった話はできないからありがたくもうらやましい。僕も鍛えることにしよう
「どこに向かうんですか?」
「まあ起きてからのお楽しみということにしておきましょう」
起きてからの?どういう意味なんだろう
地下街の真ん中に歩いてくと全員が一か所に集まっていた
「なんだ、ついてくんのかお前」
ジンだ、不機嫌そうな顔で話しかけてきた
「ええ、タカキです。よろしくお願いします」
「そうかい、足引っ張んならおいて・・・
途中で黙ってそっぽ向いてしまった。なぜか震えている
後ろを見たら華蓮が仁王立ちでガン飛ばしていた。そりゃああなる
「ま、まあ、これからよろしくな」
ジンが手を伸ばしてきたので握手しておいた
なんだかんだ優しそうな人だ。疑り深い目も仲間思いの証なんだろう
華蓮と同じタイプのような気がする
「では行きましょうか。メイ、お願いします」
「はい。では起動します」
メイと呼ばれた女性が床に置いている宝石のようなものに手を触れる
そうすると床に光が広がり全員が入った瞬間僕は見知らぬ建物の中にいた