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閉ざした世界に革命を。  作者: 凛月
第2章 「革命軍」
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日常の終わり1

 案内された司令部は簡素なものだった。いやそんな言葉で片付けられるものじゃない


 テントとその中に地図を敷いたテーブルが一つだけだ


 これが鎮圧隊の司令部・・・?にわかには信じがたい


「ご助力感謝します!」


 目の前に居る人物、鎮圧隊の指揮官 (リー) が神妙な面持ちで迎え入れてくれた


 「日本の防衛隊の皆さまのお力をお貸しいただければこの暴動もすぐに抑えられるでしょう」


 暴動・・・革命ではなく暴動か・・・共和国ではそういう認識らしい。それともこの人に伝えられているのがそこまでなのか


「こちらとしてもこの件が日本に及ぶ可能性を消しきれませんでしたから当然のことですよ」


 爺さんはそう答えた。まだ若い李に対しても物腰柔らかい


「挨拶もいいが、状況を教えてくれ。緊迫していると聞いたが」


 隆則さんは威圧的・・・体付きでそう捉えられる物言いになってしまっているけど普通に聞いただけだ


 一刻も早く、被害が出る前に沈めなければならないから


「で、ではこちらに」


 李さんは明らかにおびえていたけどしょうがない、相対したら誰でもああなる


 優しい人なんだけどな彼


 案内されたところにはこの辺一帯を記された地図が広げられていた


「現在暴動を起こしている者たちは、すべてここにある施設内に侵入しております」


 指さしたのは盆地に構えられた巨大な建築物だ


「ここに王がいることも確認されています」


 ここなら三千弱いる革命軍でも入りきるだろう。王は全員が集まれる場所を探していたのかもしれない


 何のためかはわからないけど


「政府の指示でこの建物へ被害は最小にとどめねばなりません。ですが我々ではそれができず・・・」


「集まる前に制圧はできなかったのか」


「やつらの使う隠密用の異能力が予想をはるかに上回る性能でして見つけるのが困難になりとり逃してしまいました。通行規制もしていたのですがことごとく・・・」


「等級以上の異能力者がいたということか。最近耳にしたところだ。なあ吉宗」


「ははは・・・今はやめてくれよ隆則」


 緊張状態をほぐすために言ったセリフが顔と言い方のせいで脅しのようにしか聞こえない。難儀な人だ


 等級以上の異能力者か・・・確かに世界中で僕だけっていうのは考えられない。今回みたいに出てきてもおかしくない


「吉宗殿の異能力は我々も把握しております。高台に拠を構えておりますのでそちらにて待機ください」


 ここまでお膳建てしてくれていればあとは合図を待つだけか


 しかし被害を最小限に・・・よほどのものがあそこにあるらしい


 これが兵器なのだとしたら隠すのは当然だ。だが世界政府が守ろうとしているのだからその可能性は低い


 ならばなにか・・・いや僕の頭じゃ思い付きはしないや


「隆則殿とその他日本の防衛隊の皆さまは先行した我々の後ろについて建物への被害を抑えてください」


 隆則さんの「守護」はその対象に干渉した事象をなかったことにする能力だ


 中国の先遣隊が行使した異能力で建物が破壊される前に異能力をかき消すのが隆俊さんの役割になる


 もっとも、それ以外の使い方もできるが自国の問題は自分たちで解決するという中国の意志だ


 隆則さんが全力を出すのはどうにもならなくなった時だけだろう


「あい、わかった。では我々も早々に行動開始することにしよう」


 ここから狙撃位置まではかなりある。それに建物もここららだとそれなりに遠い


 革命軍に参加している異能力者がそれほどまでに強いということだ


 離れていなければ消し炭になる程度には・・・その証拠に基地の前方に数キロにも及ぶえぐれた跡がある


 おそらくあのあたりに拠を構えていた鎮圧隊が全滅したんだろう。遠くに基地を移し、日本の防衛隊を呼んだのはこのためだ。市街地まで届く可能性もある。早急に解決しなければならない


 ただ、こちらの被害はそれだけみたいだ。ほかに使われた痕跡ものない。ほかの異能力が使われた気配もない


 もしかしたら「断罪」のように制限時間があるのかもしれない。それも呼んだ理由に入りそうだ


 だけどこんなに大地がえぐられるような異能力保持者なんていなかった気がする


 異能力の複合が原因なのか、とりあえずもう一度資料を読み返してみることにしよう


 僕たちは山道を走行可能な車両に乗り換えて目的地に向かった


 この車両戦時中の戦車みたいな装甲してるな。木もなぎ倒してるし。これが兵器になっていないのは銃火器がついていないからか


 乗り心地は最悪だ。クッションが備わってるおかげでお尻への負担は軽減されているけどそれでも痛い

 それにめちゃくちゃ揺れる


 爺さんはついたころには気絶していそうだ


 護衛についてきた二人も青い顔をしている


 僕もかなり来ている


 これは兵器にはならない。逆に戦力が下がる


 華蓮は耐えきれなくなって外に飛び出していった


 車両についていける速さと体力があってうらやましい


 窓から見た華蓮の体に薄くエネルギーを纏っているのが見えた


 外に出たついでに訓練をしているみたいだ


 昨日家に有栖がいる間にこつでもつかんだのか、かなり自然な感じだし蹴った地面もそれほどえぐれていない


 たった数時間でここまでコントロールできるなんて思わなかった


 天才っていうのはこういう人のことを言うんだろうな


 目的地に着いた僕らは全員吐いた。運転していた鎮圧隊の人もだ


 爺さんに至ってはやはり気絶している。作戦開始まであと三十分だ。それまでに治るのかなこれ


 華蓮は情けないわね、って言いながら僕の背中をなでてくれている


 君も耐えきれなくて降りたんじゃないか・・・ここまで停止せずに我慢した僕をねぎらってくれてもいいんじゃないか?


 っていうか、誰だよこの悪魔の乗り物考えた人。絶対あたまがおかしい。試運転してない絶対


 そんなこんなあったけど開始五分には全員持ち直していた


 爺さんも大事なく異能力を使えるまで回復した


 千里眼と透視で僕の眼はすでに王を捉えている


 爺さんの目の位置に僕の眼を合わせて準備完了だ


 直線状二メートルが爺さんの異能力の限界。風向きは関係ない


 この作戦の第一段階は僕の異能力操作にすべてがかかっている


 切り替えは以前から練習していた。華蓮を守るため力になるかもしれないから


 人を殺す手伝い


 手は震えている。震えないわけがない


 失敗しても多分爺さんは咎めない。それどころか鎮圧隊に何を言われようが自分の力不足だと僕をかばうだろう


 そんなこと爺さんにさせられない


 プレッシャーに押しつぶされそうだ


 大丈夫、やれる


 これは”守る”ための行為だ


 仕方がないことだ


 緊張で吐きそうだ


 開始の十秒前


 気づけば華蓮が手を握ってくれていた。さっきとは違って優しく


 震えは止まった


「貴樹、3,2,1,今」


 爺さんの手に持った数センチの鉛玉が一直線に飛んだ


 一キロメートルの距離を一秒で


 壁を貫き王の頭に向かった







 はじかれた。





 「防壁」に阻まれた


 そのあと別の人物に打ち込んだがことごとく弾かれた


 不可能と判断し、突入隊に通信を送った


 僕は人を殺さなかった


 膝から崩れ落ちた僕の眼には建物に入っていく隆則さんが見えた


 爺さんは僕の肩に手を乗せ


「相手のほうが一枚上手だったようだ。私のじゃあれは貫けない。よく頑張ったよ貴樹」


 僕は安堵した。人を殺さなかったことに


 僕は落胆した。覚悟を決めたのにやりきれなかったから


 爺さんはこれからの話をするべく通信機のほうに下がって行った


 僕は見ることしかできない


 音の聞こえない遠くの戦場を


 まだ死傷者は出ていないみたいだけど時間の問題だ


 でもそれは僕の・・・


 気づいた思い出した僕の手を握っている存在に


 華蓮がそこにいることに


 僕は泣いた


 手を握っている手は背中をさすって売れているその手はとても暖かった


 何で泣いているのかなんてわからない。いろんなことが終わった


 泣き止むのに何分もかかった


 僕が落ち着くのを待っててくれていたのか爺さんが次の行動を伝えに来た


「これから僕らも加勢しに行く、貴樹は待機でも構わないと向こうと話はつけてある。キャンプ地に戻る車両の中で考えておきなさい。といってもあんな中で考えるなんてできないと思うけどね。ははは」


 爺さんは笑顔で話しかけてきた。ジョークも加えて


 待機でもいいのなら僕はもう・・・でも爺さんも中に行く


 僕がいればこの眼で守れるかもしれない。助けられるかもしれない


 でも怖い。華蓮に支えられてなきゃ何もできない僕が行っても足手まといにしかならないはずだ


 でも僕が行くことによって助かる人もいるかもしれない


 でも。でも。でも。かもしれない。かもしれない。かもしれない


 考えれば考えるほど頭がおかしくなっていきそうだ


 車両に乗れば何も考えられなくなるか。ちょうどいい、向こうについたら自然と答えが出るかもしれない


 そんなこと思いながら僕は乗り込んだ


 予想通り、中で考え事なんてできなかった


 だけどまた吐きそうになる。やっぱり悪魔の乗り物だこれは。でも今は悪魔の助けがありがたい


 それにまだ僕の手は握られている


 行きとは違って華蓮がずっとそばにいてくれている


 見たことのない顔をしているからか、自然に笑っていた


 ついたころにはさっきとおなじ状態だった


 爺さんは気絶し、御付きの二人と運転手は吐いている


 もちろん僕も吐いている


 さっきと違うのは僕の隣で華蓮も吐いていることだ。


 さすがに手は放していた


 でも答えは出た。車両のせいではない


 僕はいつも自分が限界になったと時は忘れてはいけないことを忘れてしまう


 だけどすぐに思い出す


 僕の一番大切なこと


 僕が第一に考えなければいけないこと


 僕が絶対に守らなければいけないこと守りたいこと



 ”華蓮を絶対に泣かせない”


 ”華蓮を絶対に一人にしない”


 僕は待機でいいと言ってくれた


 でも華蓮は戦力になる。爺さんはあの時の華蓮を見ているから


 ちゃんと使えているのを見たのはあの時だけだ


 あそこまで行かなくても今の暴走しない華蓮は連れて行かないわけがない


 だから僕も行く


「爺さん。僕もいくよ」


 爺さんが気絶から起き上がっていることを失念していた


「そうか・・・心強いよたかk・・・・・っう」


 急にしゃべらせてしまったせいかそのまま吐いた


 申し訳ないと思いながらも僕の心は晴れていた


 もしかしたらまた殺しに加担するかもしれない、それどころか直接手を下すことになるかもしれない


 華蓮を守るためにしなければいけないなら、僕は迷わない


 やれるだけやってみよう


 ああでも僕が死んじゃったら元も子もないな・・・


 華蓮がなくかもしれないな。それじゃダメかもな


 また迷てるよ。僕


 でも危なくなったら全部無視して能力全開で自分も華蓮も守ればいいか


 そこで思い出した、頭の隅に置いていたことを


 有栖の助言を


 はは、そういうことか、でも有栖。助言は必要なかったみたいだ


 僕自身で答えは出せたよ


 そして僕らは加勢に向かった


 建物について僕は早速透視を使ってみた


 ・・・そこは地獄のような光景だった


 そこら中に死体が転がっている


 先行した隊の人のも革命軍の人のもそこら中に


 入る前から華蓮は鼻を抑えている。ガスマスクでどうにかなればいいけど


 とにかく華蓮一人で行かせなくてよかった


 吐き気はあっただけど我慢できないほどじゃない


 爺さんの付き人を先頭に僕らは突入した

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