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閉ざした世界に革命を。  作者: 凛月
第2章 「革命軍」
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はじまりの音2

 車内は静かなまま僕らは空港に着いた


 空を見る。僕の心境など知らぬと言わんばかりの快晴だ。最高のフライト日和と言える


 空港について最初に声をかけてきたのは早苗姉さんだ


「貴樹・・・ごめんなさい。私」


「いいんだ姉さん。僕のためだったんでしょ」


 姉さんはバツの悪そうに僕の前に立っている


 僕に資料の一部を渡さなかったのを咎められたんだろう


「僕のことは構わないでいい。だから姉さんもやるべきことを」


「ええ、ええ。ごめんなさい貴樹」


 今にも泣きそうだが涙は見せない。強い人だ姉さんは


「貴樹お前で最後だ。早くいってこい」


「わかった」


 兄さんはせかした。姉さんがこらえられなくなる前に


 姉さんの肩をたたいて飛行機に向かった


 後ろですすり泣く声が聞こえたけど僕は振り返らない


 もどってきて笑顔で会うために


 中に入るとみんな揃っていた


「貴樹」


 見回していると爺さんがよってきた


 その身には北方傘下のメーカーがつくった戦闘服を纏っている


 爺さんは細身だからなんだか着せられてる感がすごい


 これほど似合わない人はいるんだろうか


 いや、僕も似合わないだろうな・・・


「爺さん」


 両手を広げて胸を開けたが遠慮しておいた。残念そうな顔をしている申し訳ない


 僕は別に爺さんのことが嫌いってわけではないが華蓮が唸り声をあげていたのでそれを止めておかねばならない


 これもまたあの事件のせいだ。ここには華蓮の苦手な人しかしない


 とりあえず手をつないでおくことにした。僕を無視して突っ込んでいったりしないだろう。しないよね?


 爺さんの気遣いで華蓮には個室が用意されていた。まあ檻なんだろうなこれは


 離陸して安定した後、挨拶周りに移行としたら握っていた手が捻りつぶされそうになった


 すぐに帰ってくるといったら素直に話してくれた。耳は下がって尾は垂れてたような気がした


「貴樹」


 爺さんがまた寄ってきた。さすがに今回は抱擁した


 やはり久しぶりに孫と会うのはうれしいようで笑顔だ


「爺さんも元気そうだね」


「ああ、元気だとも。会いに行きたいんだけど、あいにく忙しくてね。時間ができて会いに行こうにも華蓮が嫌がるだろうからし」


 爺さんはかなり大人しい性格をしている。頼りないと言われるがその実、頭が切れる


 ひい爺さんの子が吉宗爺さんしかいなかったのもある。なるべくして当主になった人だ


「あんなことをしてしまったからね。私の落ち度だ、しようがない・・・」


 あからさま落胆している


「そいつが隠し子か吉宗」


 爺さんの後ろにいたのは西方の当主西方隆則(たかのり)さんだった


 二メートルを超える巨躯に服がはちきれんばかりの筋肉。齢六十とは思えない


 吉宗爺さんと同じものを着ているとは思えないほど、戦闘服が似合っている


「隠し子というか、隠し孫だね。ははは・・・」


 爺さんが冗談を言ったが顔色一つ変えない。というか西方の一族は表情が硬い。隆盛先生もそうだ


利光(としみつ)は知っていたそうじゃないか。俺だけ仲間外れか?」


「や~、それには事情があったんだよね。事情が」


 険悪な雰囲気はない。爺さんと隆則さん、それから南方前当主の利光さんは幼馴染だそうだ。年もあまり離れてない。


「ふむ、あとで詳しく聞かせろ」

 

「ああ、そうしようか」


 ここには東方以外の人間は隆則さんしかいない。こちら側も僕のことを知ってる人だけのようだ。


 爺さんの人選だろうな。


 軽く会釈するとみんないい顔で返してくれた


「貴樹、といったな。今作戦では世話になる。その実力いかんなく発揮せよ。お前は俺が守ってやる」


「は、はい。よろしくお願します」


 その体躯もあって威圧感たっぷりだが激励してくれているようだ。お願いします隆則さん


 緊張してあんまり話せなかった


 あとは東方本家の面々、みんなあの時いた人たちだ。華蓮が唸らないわけがない


 少し話て華蓮のほうへ戻った


 部屋に入ろうとしたとき、着替えがおいてあった気がしたからもしかしたらと思いノックをした


 華蓮からの返事があったから入ると着替え終わったところだった


 ノックせず入ったら飛行機がどうなっていたかと考えるとぞくっとした


 僕も着替えようとして華蓮に出てもらおうとしたけど、出て行ったのは僕だ


 通路で着替えることになった。あいにく誰も見ていなかったので助かった


 いや、別に恥ずかしがる必要なかったな


 着替え終わったとたん華蓮に部屋へ引きずり込まれた。ちょっと痛い。


 そのあと、着陸するまで黙って手をにぎってあげることにした


 着陸した後解放されたが握られていた部分が真っ赤になっていた。もしかしたら飛行機が苦手だったのかもしれない


 僕らは向こうが手配してくれてた車に乗り、目的地に向かった。ホテルなんかではなくキャンプ地に直行だ。それだけ事態は進んでしまっているんだろう


 僕は華蓮と爺さんと同じ車に乗ていた


 華蓮は仕様がないとぼやきながら、窓の外を見ている


 解放されていた右手はまた不自由な身になっている。痛い


「貴樹は鎮圧に参加するのははじめてだったね」


「はい。でも覚悟はしています」


 爺さんは優しく話しかけてくれた。みんな僕のことを心配してくれている。不甲斐ない僕自身に嫌気がさす


「そうか、私もはじめてはそんな感じだったよ」


「爺さんもそうだったんだ」


 そうだろうな。いや、直接手を下す分明らかに爺さんのほうがきつかったはず


「最初のことはみんな覚えているもんさ。僕らは東方の人間だからね避けては通れない。僕の子はもう経験してる。貴樹の兄弟は・・・貴令だけかな。あの子の異能力は向いていなかこれからもないだろうね」


 みんな、経験してるんだ。あの優しい姉さんも。多分貴央兄さんも


 貴令兄さんの異能力は「伝達」自分から遠くの相手に思念を送り込める能力


 でも受信はできないし、伝えられる範囲に限界がある


 東方では珍しい。攻撃的ではない異能力だ


 兄さんはそのせいで苦労していたけど、異能力などなくても仕事はできると今は父さんの近くで当主となるべく勉強している


 僕の兄弟はみんなすごい人たちだ。へこたれてなんかいられない


 「貴樹は何も考えなくてもいい。全部私に任せなさい」


「そういうわけにはいかないよ爺さん。僕だって東方の人間だ、ちゃんと向き合わなくちゃいけない」


 僕は逃げたくない。優秀な兄さん姉さんに負けないように。華蓮を守れるように。強くなくちゃいけないんだ


 爺さんは少し驚いたようだった。それからまた優しい顔にもどった


「そうか、やっぱり強くなってな貴樹は。はは、みっともなかった私とは真逆だ」


 自虐して笑っている。でも爺さんは身っともなくなんてない


 全部を乗り越えてここにいる彼を笑っていい人間なんていない


「僕は爺さんを尊敬してるよ。だから自分の事悪く言わないで」


「・・・お前の父さんにも同じことを言われたよ。血は受け継がれるものなんだねえ」


 僕と爺さんはキャンプにつくまで他愛ない話をして緊張をほぐした


 華蓮は面白くなさそうに窓の外を見ていたけど。右手は相変わらず痛い


 目的地に着いた僕らは鎮圧隊を指揮している人のもとへ案内された

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