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閉ざした世界に革命を。  作者: 凛月
第1章 「平和な世界」
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閑話「貴樹の異能力」

 僕は近衛貴樹


 東方の分家、近衛家当主の長男


 人体の五感、その一つの視覚を拡張して目視した対象のカモフラージュを見破る異能力


 二等級管理名「看破」の異能力者だ


 東方家の令嬢であり僕の幼馴染である華蓮の護衛という名の世話係である


 

 でもそれは東方家当主が用意した偽の肩書だ



 僕は「近衛」の子供ではなく、「東方」次期当主の三男で


 僕の異能力はそもそも登録されていない


 区分も管理名も本家が用意した仮初のものだ


 登録は義務とされているけど何故か認定書が届かなかった


 これは本家の人間でも一部しか知らない


 南方家の一部も知っているけど三人だけだという



 なぜ隠されているかには理由がある


 異能力が特殊過ぎるんだ


 正直言って保有者の僕でさえ全容を把握できていない


 でも判明しているものだけでも十二分に社会に影響をもたらすことができる


 悪用されるとなると多大な被害が出ると自分でも思う


 今僕が使えるのは



 対象としたものを見破る看破


 対象の全体が目に映っている間停止させる静止(瞬きしている間に見失うと効果は切れる)


 数秒後の未来をみる未来視(酔う)


 その場で過去起きたことをみる過去視(使用時ほかに動いているものがあるとき酔う)


 見たものを記憶する(時間が立つと忘れるし、記憶できるのは同時に四つまで)


 暗所でも昼間のように見られる暗視(昼に使うと目が潰れそうになる)


 透視(三メートル以上の厚みがあるとできない)


 対象と視界を共有することができる、異能力も共有することができる


 目を合わせれば対象を眠らせることができる催眠(効果時間は対象によるし、この能力を知っている場合眠るのに時間がかかって目をそらされれば眠らせられない)


 

 熟練度は一つずつ違うけど一応は全部使うことができる


 使える異能力は今だ増えている。まだまだ未知数だ


 そしてこれらの異能力は二つまで同時に使うことができる


 暗視を共有したり、暗視しながら透視したり


 できる組み合わせはまだ少ない 


 でもこれだけじゃ脅威にはならないよね


 僕の異能力は他の異能力と組み合わせることで真価を発揮するんだ


 例えば、そうだな・・・


 王印序の「断罪」と合わせてみよう




 「断罪」はその名の通り罪を裁き、罰を与える異能力だ


 この異能力の行使には条件がある


 1、罪を把握していること


 2,対象に触れていること


 3.罪を犯したもの、犯しているものが行使者の視界に入っていること


 4,直近の刑の執行から二十四時間が経過していること


 それらの条件が満たされたとき行使が可能になる


 触れる対象は被疑者だけにとどまらない


 犯行の際に使用された物、刃物であったり、鈍器であったり、犯行現場もその対象だ


 罪の重さは関係ない。どのようなものでも行使者が罪と判断すれば「断罪」の対象となる



 じゃあこれをぼくの異能力と組み合わせてみよう


 過去視を共有すれば、時間が立っていても一番難しい”3”の条件を満たすことができる


 ”1”と”2”さえ押さえていて、クールタイムさえクリアしていれば異能力を行使することができる


 まあ、そんな感じだ


 異能力には条件付きのものが少なからず存在する


 そういうのは大体、等級が高い。すなわち危険ということだ


 条件を緩和することで等級が上がる異能力もある


 だから僕の異能力は悪用されるととても危険なんだ


 世には「洗脳」という異能力もある


 そういうものから遠ざけるために僕の存在は秘匿され続けているということだ





 ・・・それももうすぐ終わる。十七年間ずっと幸せだった


 本家の仕事がなかったわけではないけど、生活が丸まる変わることなんてなかった


 寝不足で学校に行ったり、ごはんを本家の人に任せたら華蓮の機嫌がすこぶる悪くなって抑えるのに苦労したとか


 そんなしょうもないことで悩んでいたのもこれからはなくなる


 もっと嫌なことで悩んで苦しむことになることだろう。でもそれは本家の人間にとって普通のことだ


 華蓮にも我慢を強いることになる。それがかなり気がかりだ


 僕と華蓮は近衛から本家へ引っ越すことになる。だけど本家は華蓮の苦手な人間の巣窟だ


 母屋ではなく別棟で生活することになるだろうけど、一触即発に変わりはない


 僕も世話をやいてる暇はなくなるだろう。華蓮の身の回りの世話は本家の侍従に任せることになる


 ・・・言うこと聞けばいいんだけどなあ


 生活自体は近衛と変わらないはずだ、厳しい縛りはない


 縛れば何をしでかすかわからないし、僕がいないときに暴れたらと思うとぞっとする


 華蓮は十五の少女である前に特等級の異能力者


 甘やかしは受けて当然。でも増長はさせずに今まで世話をしてきた


 侍従はきっと怯える


 きっと本家を飛び出して近衛に来たあの夜のことをみんな知っているはずだから


 そこから人を見下す態度をとり始めるかもしれない



・・・はは。自分のことより華蓮のことの方が心配になるなんて


 世話が大変だと知っているからこそ侍従には同情するよ


 嫌だったわけじゃない。むしろ楽しかったし充実していた


 言うことはあまり来てくれなかったけど、大事なことはちゃんと聞いてくれた


 それに僕が落ち込んだり悩んだ時もそばにいてくれたんだ


 幸せでないはずがない


 が、それは”僕”の時であって侍従に当てはまるかはわからない


 我儘で横暴で唯我独尊で凶暴な獣はそう簡単に懐かない。だからこその同情だ




 この生活ももうあと少し。日常を噛みしめながら過ごそう





 ・・・ちょっと甘やかしてあげようかな

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