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閉ざした世界に革命を。  作者: 凛月
第1章 「平和な世界」
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転校生2

 教室もにぎやかになってきていた。部屋の温度が少し上がった気がする


「貴樹はよ~」


「おはよう。髪の毛はね過ぎじゃない?」


「うげ。まじかよ」


 話しかけてきた茶髪のチャラチャラしてる人は小南光(こみなみみつる)


 南方の分家、小南家の次期当主


 僕のたったひとr・・・親友だ


「ったく、廊下で笑われてたのこれかよ」


 スマホのカメラで自分の髪を見た光はカバンからワックスを取り出して直している


「家でやってこればいいのに」


「今日は時間なくてな。そうそう”あれ”少しならわかったぞ」


「ほんと?じゃあ昼にでも聞かせてよ」


「おう」


 光は髪を気にしながら自分の席に歩いて行った


 僕は彼に小南の力を使ってよく調べ物をしてもらっている


 と言ってもしょうもないことばかりだ


 ”街外れの小屋に幽霊が出るらしい”


 ”船着き場におそらくただものじゃない大きな黒い影が出るらしい”


 ”ショッピングモールのエレベーターに行先不明のボタンがある”


 ”深夜の地下鉄で誰もいないのに人のうめき声が聞こえる”


 といった感じ


 たまーに事件に巻き込まれることはあるけど今日まで無事に生きている


 まあそんなときは大体光は職員室に呼び出しをくらう


 光だけだ、僕は我関せず教室に居座る


 キーンコーンカーンコーン


 始業開始のチャイムだ


 けど先生はまだ来ない


 このクラスの担任は本当に教師かレベルで時間にルーズだ。五分は前後する


 今日は早く二分くらいでドアが開いた


 年中取れないクマにこれ以上ないほどの猫背、いつ切るんだという長髪。だけど不潔ではない


 毎日違う糊のきいたスーツにお手本のようなネクタイ、輝くほどに磨かれた革靴


 ・・・まあヤル気はなさそう。いつも通りだ


 だけど、今日は後ろに一人連れている。制服を着た女の子だ


 くすんだ金色の無造作に伸びた長髪と、伸びた前髪からチラリと見える虚な赤い瞳


 まるで日に当たったことがない、と言わんばかりに真っ白な肌の小柄な少女だ。


「はい。転校生です」


「・・・」


「はい」


 先生は黒板に名前を書き始めた。生徒が書くものだと思ってたんだけど


龍見有栖(たつみありす)さんです」


「・・・」


「はい」


 ピクリとも動かない・・・寝てる・・・?でも瞼は空いてるな


「右端の最前列、君の席ね」


 僕の前の席だ。友達・・・になれるか・・・


「・・・」


 ふらりふらりと近づき・・・突っ立って椅子を見ている


 だ、大丈夫かな。もしかして椅子が引けないほど疲れてる・・・とか?


 とりあえず椅子を引いてあげた


「ぁ・・がと」


「あ、うん」


 とんでもなくかすれた小さい声で感謝された


 風邪・・・かな?この様子だと相当辛そうだけど、すこし気にかけておこう


 席に着くと微動だにしなくなった


 うん。何かあったら手伝ってあげよう





「はい。終わりです」


 HRが終わって数人が龍見さんの席に群がった。転校生だもんな、みんな気になる。僕も例外じゃない


 何もせず聞き耳立てるのはあれだしスマホひらいておこう


 それから質問攻めが始まった。どこから来た、どの辺に住んでる、部活は?とかいろいろ。みんな興味津々だ


 ・・・だけど龍見さんが答える気配はない。それどころかさっきから微動だにしない


 やっぱり体調が悪そうだ。ここは・・・


 バゴオオオオオン


 止めようとしたら机が粉々に砕けたんじゃないかってくらいの音がした


 それを聞いて教室がざわめき始めた


「てめえ。ふざけてんのか!?シカトこいてんじゃねえぞ!」


 声の主は高田恭子(たかだきょうこ)。気の強い女の子だ・・・手も早い


 炎系統の異能力を持った彼女の拳は轟々と燃え盛る炎を纏っている


 熱気がここまで伝わってくる。まずいな・・・


 「ま、まぁ落ち着きなよ恭子ちゃん!ききき、緊張してるだけかもしれないじゃない!?」


 今にも殴りかかりそうな高田さんの腹に両腕を回しどうにか止めようとしているのは鶫宮子(つぐみみやこ)


 おどおどはしているが正義感の強い女の子だ。


 「防壁」という異能力を持っているから転校生を守ることはできそうだけど・・・


 「宮子は黙ってろ!」


 「は、はひぃ」


 鶫さんの能力はそのときのメンタルの強さに深く関わっているようで、異能をまともに使えているところを見たことがない


 というか、許可なしの異能力行使は禁止されてるんだけど。高田さん


 このままじゃ転校生が消し炭になりかねない


 近衛家の男子が目の前で女の子が殴られるのを黙ってみていたと噂になれば、僕のご主人様に全力で殴られることになるだろうし、家名に泥を塗ることになってしまう


 それにこのまま高田さんが拳を振り切れば僕に流れ玉いや、流れ拳が飛んでくる


 止めるために立ち上がったと同時に授業開始のチャイムが鳴った


 教室の扉が開き、一限目授業担当の教師が入ってきたときには、高田さんは炎を消した拳を制服のポケットに収め、自分の席に向かっていた


 舌打ちをしながら・・・


「騒がしかったが。何かあったのか?」


 一限目の世界史担当教師である西方隆盛(たかもり)先生が教室の扉を閉めた


 高田さんのことをみている


 四大名家の一つ、西方家本家の三男


 日本の治安維持を担う本家の人間、生活指導担当おそらくこの学校で最も畏れられている教師である


 異能力の無断使用がばれればただじゃすまない


「いえ。なにも」


 高田さんは僕の目の前で起こった傷害未遂事件をなかったことにした


 僕の正義感はどこへやら・・・まあ止めに入ったところで殴られるだけだったから助かった


 西方先生は僕に目を向けなにがあったか目で問いかけてきたけど、目をそらして何もなかったですよ、という風な反応を見せて席に着いた


 授業開始のチャイムが鳴り、クラス委員である鶫の号令で授業が始まる


 龍見さんはそのあとも動くことはなかった

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