表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
閉ざした世界に革命を。  作者: 凛月
第3章 「外の世界」
100/100

別れと旅立ち

「はい、これで全部です。どうでした、か・・・って聞かなくてもわかりますね」


 運動が終わり立っているのは二人だけ


 村長は転がっている。しゃべる気力もなさそうだ


「はあ、はあ・・・確かに・・・これをこなせるならば旅に出るのを許可してもいいだろう・・・」


 カサンドラさんは肩で息をしているものの普通に立てている。さすがとしか言えない


 アレンはというと・・・


「これどうすんだ?」


 ジンに枝でつつかれても反応できないほどには疲れている


 二セット目の第三で限界が来た。さすがにこれ以上はということで寝かせてある


「あと三日。気合で乗り切れますかね」


「あれだけ覚悟はできていると啖呵きっていたからな。諦めはしないだろう」


 戦力が増えるのはありがたい


 しかし今のままじゃ足手まといだ、これじゃ同行はさせられない


 ・・・でも、アレンが諦めない限りはしっかり見てあげよう


「で、タカキは全部やるのか?」


「そうですね・・・久ぶりにやってもいいんですけど・・・」


 ぐうぅ


「すみません。朝食べていないのでお腹が持ちそうにありません・・・」


 華蓮達は僕らが運動している間に済ませてもらった


 さすがに付き合てもらうのは悪い


「ははは!いくら化け物じみていても空腹には勝てないか!」


 大爆笑だ


「昼にはまだ早いな・・・私は村の見回りでもしてくる。またな」


「はい。お疲れさまでした」


 そういって村守の方へ歩いて行った


 もしかしたら三セット全部できそうだな、カサンドラさん


 さて、ごはん食べよう。久しぶりにいい運動もしたし美味しく食べられそう


「汗臭いわ。水浴びしてきてくれない?」


 ユンファに嫌な顔されながら言われた


 ごはんはまだ先になりそうだ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 三日後、出発前日


「さて、どうします?」


「そうだな。親父も倒れていることだ私が許可を出そう」


 アレンは気合で乗り切った


 二セット目はほとんどできたとは言えない。だけど走り終わるところまで耐えたのだ


「疲労もあるにもかかわらずここまでやり切ったのだ。親父も文句ないだろ?」


「あ、ああ・・・・・・・いい・・・だろう・・・許可する・・・」


 アレンの同行が決定した


「やるじゃねえか。化け物入りおめでとう!つってもきこえてねえな」


「加護の扱いについては旅の間に考えるとして・・・イズモ様も協力してくれるはずよね」


「おそらくね。戦力になりうるんだから出し惜しみはしないと思う」


 初日のお昼にイズモ様を訪ねて同行者が増えるかもしれないというむねを伝えた


 僕の記憶を呼んで少し引かれながら許可をもらった。あの体操そこまで言われるものかな・・・


 風の加護・・・どこまでの力になるのか僕らにはわからないけど、イズモ様がいるなら強化の方は大丈夫だろう


 二年。それだけあれば強くなれる。僕だって半年ほどで戦えるまでになったんだ


 基礎ができているアレンならすぐに成長する。僕はそれを見守るだけだ


「では、出発の準備をよろしくお願いします」


「ああ、しっかりさせておく」


 明日はいよいよ出発だ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 当日朝


 僕らは入口で村人に囲まれている


「またいつでもこい。お前たちなら大歓迎だ」


 村長は僕の肩を叩きながら激励をくれる。その目は子を見るようなものだった


 この村にいたのはたった六日だ。それでもこの人達はこんなにも親切に接してくれた。頭が上がらない


「狩りの手伝いありがとう。助かったよ」


「料理も教えてくれてありがとね」


 僕らも何かしようとできるだけ村の仕事を手伝った。たぶんそれもあるんだろう


 あとは・・・


「カサンドラとの契りはいつでもできるように準備しといてやるからな!」


「タカキが来てくれりゃあ村も安泰だ」


「二人の子供なら恐ろしく強えのが生まれてくるぜ」


 否定し続けたけど結局収まらなかった。もし次来ることがあれば本当に婿入りする勢いだ


 断固として拒否する


「アレン、強くなれ」


「わかってる」


 二人の会話はそれだけだった。昨日のうちに全部話し合ったんだろう。もう迷いの目はない


「タカキ」


「カサンドラさん。どうしました?」


 初めて会った時とは表情が全く違う。ずっと柔らかくなった


「教わったことは村守の強化に使わせてもらう。感謝するぞ」


 後ろの皆さんがざわついた。おそらく村守の人たちだろう。がんばってください


「ほどほどにしてあげてください」


「ああ。・・・旅についていけないのが残念だ。私がいなくなってしまえばいざという時に対処できんからな」


 村長が狼狽えている。やめてあげてください


「アレンが強くなって帰ってきたなら、今度は私を連れて行ってくれ。できることなら私も強くなりたい」


「そうですね。戻ってこれたのならその時は・・・」


「ああ。ではな」


「はい、では行ってきます。皆さんお世話になりました」


 僕らはみな一礼し村を去る


 後ろを見るアレンは少し寂しそうだったけど、前を向いた時にはいい顔をしていた。きっとこの旅に期待を持っているんだろう


「さて、イズモ様のところに行くんだけど・・・アレンも走ることになるのかな」


 オオカミたちは僕と村長を乗せることを嫌がっていたし多分アレンも・・・


 ・・・アレンのほうにオオカミがすり寄っているのは気のせいか


「お、おお・・・やっぱでかいな・・・」


「あの夜は全く怯えてなかったじゃない」


「それは銀だとはおもってなかっ・・・うへえ」


 近づいたオオカミがアレンの顔を舐めた


「その子が乗せてくれるらしいわ。喜びなさい」


「ま、まじか・・・よ、よろしくな」


「ぼふ」


 ・・・華蓮達にする返事と同じ感じだ。僕の時はもっと威圧感がある


「名前つけてやれよ。喜ぶぞ?華蓮はキキ、ユンファはダイン、俺はシルバーってつけた」


「そうなのか?うーん、そうだな・・・お前雌か、ならリルカだ。おふくろが好きだった白い奇麗な花だ。どうだ?」


「きゅるるる」


「気に入ったらしいわ」


「そうか。よろしくなリルカ・・・というかカレン銀の獣の言葉がわかるのか?」


「ええ、なぜかは知らないけどね」


 ・・・いいなあ


 あと三匹・・・見向きもしてくれない・・・


「ほら行くわよ。イズモ様が待ってるわ」


「わかった・・・」


 僕たちは少し急いでイズモ様の元へ向かった


 急いだってのは違うな・・・むしゃくしゃして全力で走ったらとんでもなく早く着いただけ


 島に着くと結界の前でミンシャが待っていた


「イズモ様の準備はできているかしら」


「できてるけど中に入るのは私だけでいいってさ。私の中に入ってからのほうが話しやすいから。あと結界が解かれたら入ってこいっていってるわ」


「わかった。じゃあ、待ってるよ」


 アレンは何言ってるんだみたいな顔してるけどこれは見たほうが早いから説明しなくていいや


 少しして島の結界が全て解かれた。イズモ様がちゃんとは入れたみたいだ


 僕らは石橋を渡って島に入った


「おまたせ」


 華蓮に代わったところは特にない。中に入ったていっても見た目は変わらないらしい


「イズモ様は?」


「ここにおるのじゃ」


 どこからともなく小さく白い粒が集まってきてイズモ様が現れた


 どういう原理かわからないけどなんとも幻想的な光景だ


「おはようございますイズモ様」


「うむ、おはよう。皆おるようじゃな」


 僕に華蓮、ユンファとジンにオオカミ七匹、今日からはアレンも一緒だ


「お主がアレンじゃな」


「は、はい。よろしくお願いします」


「うむ」


 アレンが何事もなく話せてる・・・これが華蓮の中に入った効果か


 これなら普通に旅できる。現地で人に会ったとしても問題なそうだ


「では参ろうか。最初の転移陣はこっちじゃ」


 イズモ様は巨石に向かって歩き出す


 遂に旅が始まる


 準備は万端、全員体調良好だ


 散らばってしまった壁を抜けるためのものを探して


 どんな旅になるかはわからない。きっとつらく厳しい旅になるはずだ


 それでも僕らは目的のために向かわなくてはならない


 僕らは壁を抜けるために


 イズモ様は何かしらの用を済ますために


 アレンは強くなるために


 諦めることは許されない。そう自分に言い聞かせて


 そしてみんなで生きて帰るために




「最初はどこに?」




「ここより北方の地、カランソラス王国じゃ」



          第三章「外の世界」終

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ