第4話「君は何型?」
「血は苦手でも、人の血液型を当てるのは得意なんだから!」
名誉挽回のためか、ミナちゃん先生が食い気味にそんなことを言い出した。
「一号くんの血液型も当ててあげる」
「面白そうですね。お願いします」
僕が居住まいを正すと、ミナちゃん先生はあっと声を上げた。
何か思いついたようだ。
ミナちゃん先生の瞳が、期待でキラキラと光り出す。
「当てたらなにかくれる!?」
「えー? そうですねぇ。ものによりますけど……ジュースとか?」
ミナちゃん先生の瞳が、一際キュピーンと輝いた。
「! 言ったわね! 今ジュースって言ったわね!」
「え、嫌ですか?」
「まさか! ――ふふふ、あとで泣きを見ても知らないんだから」
ジュースを奢らされたくらいでは泣かない。さすがに。
けれど売り言葉に買い言葉で、僕も軽口を叩く。
「もし外れたら、逆にジュース買って下さいね」
「ジュースはやめましょう」
「!?」
即答だった。
ミナちゃん先生の瞳から光が失せる。
「どうして!? すごい乗り気だったのに」
「外してジュースを買うことを想像したら、ちょっと……」
ミナちゃん先生的にはジュースは大きな出費なのか、尻込みしたようだ。
まぁ、10才の金銭感覚を思えば仕方ない。
「一号くんも、そんな軽々しくジュースとか賭けちゃだめよ。お金遣いが荒いのはよくないわ。先生としては、生徒がギャンブルをするなんて、許しかねるわ」
「かねますか」
「ええ。それによく考えたら、血液型を言い当てられてびっくりする一号くんを見れるだけで十分ね」
ミナちゃん先生はそう言って、にししとイタズラに笑うのだった。
びっくりする準備をしておこう。
☆ ☆ ☆
こほんと小さく咳払いしてから、ミナちゃん先生はいよいよ本題に入る。
「わたし、たった3つの質問をするだけで相手の血液型が大体わかっちゃうのよね」
「へえ」
「していい?」
「どうぞ」
「一号くんって、待ち合わせとか時間通りに来るタイプ?」
なるほど。行動パターンから血液型を割り出すのが得意なのか。
僕は正直に答える。
「五分前には着くように心掛けてます」
「ふむふむ。お買い物に行ったら、お目当てのものしか買わない? それとも、他に気になるものがあったら買っちゃう?」
「……割りと衝動買いとか、興味本位で買っちゃうこと多いですね……」
「そう。ご両親の血液型は?」
「それはずるくないです!?」
しれっと聞いてきたけど、親の血液型を聞くのは反則でしょうに。
「……ふひゅひゅ~」
「口笛で誤魔化すとか、なんか古いですね……。下手ですし……。あと、僕の両親、A型とB型なんで、別に答えてもよかったんですけどね?」
「! それAにもBにもABにもO にもなるやつ~!」
自信満々で血液型を当てるなんて言い出したくせに、やることがセコい。
せっかくこっちはびっくりする準備していたのに、もう台無しだ――とか思っていたら、
「……あーあ、ご両親の血液型次第では、この答えに確信持てたのになぁ~。でも一号くん、B型でしょ」
「え」
しれっと言われ、素でびっくりしてしまった。
僕はこんな性格だから、人から血液型を言い当てられることはまずないのだが……。
僕の驚きように、ミナちゃん先生は「おっ」と眉を跳ね上げて、そのまま得意げな笑みを咲かせたのだった。
「あの、どうして……」
「かーん」
勘て……すっとぼけてるように見えて、ミナちゃん先生、侮れない。