↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/37

第23話「虫虫パニック」

 とある日の昼休み。

 

 芽野先生から呼び出しのラインが入った。

 

 一体何の用かと第一保健室へ行ってみると、珍妙な光景がそこにあった。


「あ~。よかった~。一号くん来てくれた~」

「! 一号くんまで巻き込むなんて! 

どうしてそう被害者を増やそうとするのよも~!」

「ばっ、一号! 

だから敵の呼び出しにノコノコ顔出すなってば~! 

あぶねーだろー!?」


 芽野先生だけでなく、ミナちゃん先生と朱雀井さんもいた。


 しかも三人とも、川の字に並ぶベッドの上にそれぞれ立っていた。


 ……さっぱり状況が掴めない。


「タカオニでもしてたんですか?」

「惜しい~。あのね、オニよりも怖い虫が出たの」


 芽野先生は両手の人差し指を頭の上に立てて、ぴょこぴょこ動かした。

 触覚のつもりだろう。


「あー、Gですか」

「そうなの~。

でね? 私そういうの苦手だから、最初はミナちゃんに退治してもらおうと思って呼んだんだけど……」

「呼び出された理由が虫退治だって知ってたら来なかったのに……! 

無理だからわたし!」

「――と、この通り。

あーあ、子供は虫に強いと思ったのにな~。

ミナちゃんったら、私が思ってる以上に大人だったみたい」

「……わたしが、大人……? ……ふふん」

「何をまんまと喜んでるんですか。

芽野先生はこれ、絶対ミナちゃん先生が虫無理ってわかって呼んでますからね」


 ともあれなるほど。

 事情は大体把握できた。


「それでミナちゃん先生の次に、朱雀井さんが呼ばれたと」

「おお! そうなんだよ! 

急に知らない番号から電話掛かってきてな。

『話がある』っつーから、いよいよ喧嘩かと思って来てみたら、この有様だ」

「朱雀井さんも虫ダメだったんだね」


 怖いもの知らずな朱雀井さんらしからぬ、可愛らしい一面だ――と思ったが、朱雀井さんは首を横に振った。


「いや? あたしは退治できるぞ?」

「え? じゃあなんでベッドの上にいるの?」

「こいつらに上から見下されて顎で使われるのが癪だったから」

「…………」

「それをしていいのは、あたしが〝同格〟か〝それ以上〟と認めた相手――つまり一号、お前だけだぜ」

「そう……」


 朱雀井さん、気位が高いのはいいんだけど、将来働く時とかには苦労しそうだなぁ……。


 そんな僕の懸念をよそに、ミナちゃん先生がベッドの縁から身を乗り出して、手を差し伸べてきた。


「そんなことより一号くん! 

早くわたしのベッドに避難して! さあ!」

「! ……おいおい、避難ならあたしのベッドに来るべきだろ!

 一号を守るのはあたしだ! なぁ一号!?」


 負けじと朱雀井さんも、僕を自分のベッドへと呼ぶ。


「私のベッドにおいでよ、一号く~ん。お姉さんとイイコトしよ~?」


 芽野先生もなんか言ってるが無視して、僕は流し台の下の戸棚を開けた。


 そこに収納されているのは洗剤や石鹸――そして殺虫剤。


「で、どの辺にいるんですか? Gは」


 僕は殺虫剤の缶を手に取り、三人に指示を仰いだ。


 ☆ ☆ ☆


「ほら~。やっぱり一号くんを呼んで大正解~。

次からは真っ先に一号くんを呼ーぼおっと」と、ご満悦の芽野先生。


「うあ~! ありがとう一号くん~! 

もう二度とベッドから降りれないと思った~! 

ほんとに頼りになるぅ~!」と、安堵のあまり半べそのミナちゃん先生。


「はっはっは! どうだ、一号の凄さがわかったか? 

これからは気安く話しかけんじゃねーぞ。

敬語使え敬語」と、なぜか偉そうな朱雀井さん。


 Gを片付けたあとの反応はこの通り。


 けど別に、たかだかG一匹に大げさな――なんてことは思わない。


 僕も本心では、全然へっちゃらだったわけじゃないから。


 嫌々、渋々、気持ち悪いなーと思いつつ、平静を装って退治した。


 まぁ、それくらいのカッコはつけないとね。男として。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。