表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/39

第八話 当て馬後押し

アル王子はとてもいい人だった。

礼服に包まれてもその肉体が鍛え抜かれているのが分かる。


長身でガッシリと安心感のある印象なのに、笑うと目じりに出来る笑い皺がとてもかわいくて魅力的だった。


タシーの話では、王子は昨日から続けて夜は各国の姫や国内の要人の令嬢に対応している。だけど、疲れた表情もみせず私の話を聞いてくれた。


王と王妃と王子が現れたのは、優雅な食事がすんでしばらく経ってからだった。


城から馬車で劇場に入り用意してある個室まで見事な待遇で誘導。既に劇場内からは音楽が聞こえる。


柔らかい赤絨毯が続く白い大理石の床。狭いけど心地よい光に満たされた階段や通路。柱や天井に施された彫刻が目に入って楽しい。

席に着くと目の前のカーテンが開けられ見下ろす舞台にはフルオーケストラが並び演奏している。


舞台の前面は座席があり、普段はここに大勢の客が入ってるのだろう。


ここは舞台から正面に位置していて3階部分みたい。


見上げるとまだまだ高い天井にお城のエントランスと同じぐらいの、大きいシャンデリアが柔らかい橙色の光を湛えている。


その天井にはペガサスに乗った英雄が人々を光に導く絵画が描かれていた。ピコランダの英雄譚だろうか。そんな話がきっとあるのだろう。


下の座席5個分の奥行幅はあると思われる広さの個室の入り口の扉は、花と蔦のモチーフが刻んであり可愛らしい。


その個室に時間差で姫を誘導、食事を済ませたころに王子が現れるように時間配分してあるという。


準備してる時にタシーが仕入れた情報を聞いた。

アル王子は今まで特に色恋沙汰は持ち上がっていないという。


要注意人物、幼馴染的な関係者は女性はいない!よし!


男所帯で育ち、幼いころから武芸に才能を発揮していたアル王子は女性人気より男性からの支持があつい。とにかくまじめな彼は

体を鍛え、王子としての勉強を積み重ねる間異性に気を取られている時間がなかったという。


でもさすがにいい年になってなんの浮いた噂もない王子を心配し

さり気ないお見合いは何度かセッティングされていたらしい。


ところがアル王子はまったく気が付かずじまいだったという。


責任感の強い王子には変に隠し立てするより大々的に公表し、どうせなら盛大にお見合いをしましょう!という家臣などの猛烈な押しもあり王子もやっとその意味に気が付いたという。


そして、この度の花嫁選定の流れになったという。

お見合いするからには、まじめにしっかりと選ぶと気合が入っているという。


王子の女性の好みは、今までの傾向はないとの事。


母を大事にする気質なので、とりあえず可愛い系よりはセクシー系で攻めてOKだろうと判断するタシー。


ただし、まじめな王子に変に色気で迫るよりは、

「チラ見せ作戦です」

とガッと拳を握った。


過去7回の失敗データーにより、タシー達の情報収集能力は磨きを増している。


御者も騎士もピコランダで姫がうまくいくにはと短い間で情報を集めてくれた。


そして結論は。

このお見合いの以前に、本命と思われる怪しい影はない!!

とのことだった。


これはとても大事な情報である。

それがあった場合は、結構無駄足に終わることが多い。


わかっちゃうんだよねそういうの…

初めましてで速攻、お邪魔しましたと言いたくなる場合もあって、犬も食わぬ喧嘩に巻き込まれただけになった事なんかもあった。


そうそう、その時に「この泥棒猫!」って言われたのは今ではいい思い出。言った本人が「遊びに来てねって」手紙をくれるほど今は仲がいい…ね?いい思い出でしょ?


話を戻して…女の幼馴染もいなければ、記憶喪失だった過去もなし忘れられない過去の恋人もいなければ、怪我をしたとき看病した娘とかの存在もなし!というか、大きなケガは今のところなしだそうだ。


つまり、本当にこのお見合いで決着がつくのだ。

第一印象で好感度が高ければ、よいに越したことはない。


そんなデーターを元に、アル王子の為にとタシーが気合を入れた今日の私は?


金色のハイネックのシースラインのドレス。

胸の谷間よりも今回は体のラインを強調する。

流れるようなデザインで配置されたシルバーのストーンが、胸・腰・お尻のラインに目線を誘導する。その先にスリットが深く上がっているので太ももからの足のラインに自然と目が行く。


王子の目線が予想通りに動いて心の中でタシーとガッツポーズをした。


ドレスと合わせた金のミュール。

脚の爪の先にまで磨きをかけた。


髪はストレートにして金の布で大きめのカチューシャを付ける。

その布にはスパンコールで花がかたどってある。


銀色の長い髪を耳にかけ首辺りで後ろに手ではじきなびかせる

このしぐさでこのドレスの背中が大きく空いている事に気づいて王子が唾を飲んだのが分かった。


ふふ、いい感じ♪


先に部屋に入ってきた王と王妃に挨拶をして、本日招かれたことの謝辞を述べる。お二人は退席されて王子だけが残った。


二人で音楽を聴きながら静かに言葉を交わす。


この国にきて最初に目にした遊牧の民の勇猛さ、王都の華やかさ、劇場でお食事をいただけるというこんな素敵な趣向に感謝する事などを語った。


王子はファルゴアについてお聞きになる。ここよりは田舎であるけどよい国だという事。民の皆が優しいこと、武芸に秀でたというアル王子だから父の腕を口実に腕試しなら父は喜んでお受けするので是非お越しくださいとさりげなく誘う。


アル王子は父親、つまり今のピコランダ王にそっくりだった。

王子は将来髭を生やしたらああなるんだなーと想像して和む。


私の話を聞く王子は少し緊張している様子もありながら、会話は終始笑顔で、ちょっとした冗談には笑ってくれてとてもいい人だという事がわかった。


ほんとに女性慣れしてない。

なんか、悪い女に引っ掛からないか心配になる。

まー私を選んでくれれば悪い様にはしないわよ♪

つか、そんな私も豊富なのはお見合い経験だけなんだけどね…


時間はあっという間にきてしまって王子の退室を促すため執事が呼びに来た。


「それでは、また」

と去っていく王子の心を覗く好意あり。

楽しかったという思い、次へという心の切り替えその後の私の太ももへの目線チラリも確認♪


第一印象はかなりよかったんじゃないでしょうか?

手ごたえを感じながら王子の背中を見送った。


扉の外まで見送ったタシーが帰ってきてニヤリとする

「姫どうでした?」

小声で聞くタシーに、

「好意をもってくれたわ、楽しいと思ってくれてた。あーんど…」

目を指してから太もものスリットを指さす。

タシーは「でしょう?」といって肩をすくめて親指を立てニカッと笑う。

「さて、あとはこのまま音楽を聴くもよし。帰ってお休みになるもよしだそうです。」

グラスにお水をついで渡してくれるタシー。

フカフカの椅子に深く腰を下ろして水を飲む。

私もやっぱり緊張してて喉がカラカラだった。


「他の姫と、なるべく合わないようになっているので、帰るとなると一旦私があちらに連絡を入れることになっておりますがどうされます?」

飲み干したグラスをタシーへ渡し

「うーん、音楽も素敵だけどお部屋でゆっくりしたいわ、タシーのマッサージもしばらく受けられないなら、ほぐされ貯めしとかなきゃ」

そういうとタシーは嬉しそうに微笑んで

「ほぐし貯めはできませんが、今日までの疲れはきちんと流しておきますわ」

連絡するのでしばらくお待ちをというタシーにお手洗いに行く為、途中までついていく。


分かれ道でわかれてお手洗いにいく。

二年前の作品ですが、私の書くものは相手役の登場が遅いですよね(汗)


さて、やっと本筋に入りました。

ブックマークありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ