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なろう書籍化で損をしている理由③

 前話で置いた序盤の会話をご覧の通り、知らずとも特に困る事が無い所為で、ほとんどの顧客が出版社やレーベルの情報ついては二の次になる事は分かって貰えたと思う。

 彼等の言い難い気持ちを改めてはっきり代弁すると、初見で購入を意識した時、大多数の人が『絵』『値段』『サイズ』によって左右される、と言う事だ。


 これが生粋のファンである読者や、巷での評価を参考に手に取る場合は少なからず「買ってみようかな?」の気持ちを持っているので話が変わって来る。

 けれど、それ以外の人は判断材料が出会い頭の『第一印象』と言う、一般世間でありふれた珍しくも無い理由である。コレクターでもない限り、シリーズものならば尚更購入者は極めて少数だろう。

 ……え、容姿だの第一印象だの、表現が生々しい?(分かりやすいと言って!)

 また場合によっては、お客様が望む条件と書店次第で、『商品自体目に留まらない』なんて事も有り得る。


 話を纏めると、出版社によって分類される文庫やライトノベルとは別物の、「書籍・・として出版する事で大いに損してない?」と言う事だ。


 ここで「書籍って何ぞや!」と叫ばれると扱う種類が豊富で更に長文になりそうなので詳細は割愛するが(面倒くさいとも言う)、一言で片付けると小説なら所謂ハードカバーの事を指す。


 有名作家が様々な出版社から新刊を定期的に出版し、暫く経つと一回り小さくなった文庫として発売されるものだ。『文芸書』とも称され、親しみやすい単語で言えば、『B6判』『四六判』『青年コミック』サイズである。

 そう、ネット小説も同じ形で排出している出版社のレーベルが存在する。作品名を挙げる事は出来ないが、この小説家になろうからでも日々出版されている類のものだ。


 「サイズ違ってもラノベじゃん?」と一括りにする人も居るかも知れないが、書籍として搬入したそれ等は店頭では売場を区切って展開している上、双方の中間に位置する『ラノベ文芸』として確立しているのだ。書店側からすれば、決してごちゃ混ぜにして良いものでは無い。

 大手の電子書籍専門店や通販サイトでもライトノベルのジャンルで統一されているので、恐らく紙媒体で入手が困難な地方に住む方なんかは特に線引きが顕著だろう。(試しに調べてみると良いよ!)

 

 実のところ、あのサイズの大半は分類コードを元に単行本(書籍)に区別されている。本の裏側、バーコード近くに英数字で印刷された『Cコード』と言うものだ。

 これもまたかなり説明を要するので一先ず省略するが、文庫とライトノベルのコーナーに書籍が割り込んで並ぶ様なものだと想像すれば、『ラノベっぽい書籍=全部ラノベじゃないの?』を否定した理由は分かりやすいと思う。(内容は確かにほとんどラノベなんだけどね!)


 さて、こうした書籍の特徴を挙げれば、理解の早い方は大方見当は付いているのではないかな?


 ネット小説から書籍化した作品を対象にしても、『値段が高い』『サイズが大きい』『持ち運びに適さない』書籍は、総じて売れない・・・・のだ。


 例えばなろう作品の場合。

 『レビュー数の多い順』『ポイント数の高い順』『ブックマークの多い順』等で検索すると、真っ先に上位に浮上する人気シリーズものや、一風変わった目新しい初巻が新刊として入荷したとしよう。

 それぞれシュリンクの加工をした上で入荷数の多いものは平台に陳列する訳だけど、早ければ一ヶ月後には、その時棚差しされた新刊はほぼ全て・・・・と言える割合で返本される。もっと言ってしまうと一冊も売れない、なんて残念な本もある。

 故に『文庫』、『ライトノベル』、『書籍』の内、どの分野で書籍化するかで後々売り上げに影響を及ぼすと断言しても良い。


 大きな理由は前述した通りだが、文庫やライトノベルとは異なり、書籍は『明確な発売日が定まっていない』点も売れない一因である。これが文庫やラノベならば、同時発売した複数の新刊を求めて来店したお客様が、隣に並んだ初見の商品に興味を引かれて手に取ってくれたりする。しかし書籍の場合、先の事情で同じ様な相乗効果を狙うのは難しいだろう。

 そんな小難しい本達を如何に売り捌くか……と言うのも、書店員の腕の見せ所でもあるが。

 ただ売り上げに関しては、本屋の業績、立地条件、平均来店客数、担当者が確りメンテナンスしているかどうか等々、書店によって差が激しいので絶対とは言い切れない。


 話を戻そう。

 こうした理由で返本すると同時に、余程の事が無い限り再度発注を掛けてまで補充する事は滅多に無い。(返本するのもタダじゃないのです)

 無論、出版と同時に逸早く商品が手に入る事や長期保管に適しているメリットもある。然れど顧客視点で考えた時、そもそもネット上で公開されている作品だと知ってしまえばどちらがコストも掛からず手っ取り早いか、自明の理だ。


「でも、彼の有名な人外小説なんかはめっちゃ売れてるよね」


 とはよく聞く言葉だが、ああ言った作品は新たな設定ジャンルの『先駆者』として『タイミング良く当たった』から、と考えられる。(文章や構成力に地力がある前提の話だよ!)

 逆に言えば、出尽くした設定だろうと王道だろうと、模倣だけで無い・・・・・・・オリジナリティーを取り入れる事でヒットするかも知れない訳だ。


 ちなみに、書籍化にあたり契約上の規則で作品を削除する所もあるだろうけど、それ等を含めても読者が購入に至る程の作品と言うのは、ほんの一握りと言える。


 したがって、こうして複数の難点を挙げてみれば、『書籍』として出版する事で生じる様々なデメリットが伺えると思う。


 実際、書籍化の話が舞い込んだ時、文庫やライトノベル、全てのレーベルの特徴を調査してる物書きさんは居ないだろうな、と思う。

 ネット上で独自に出版社の評価を調べたり、出版経験のある作家の意見を聞く事はあっても、『出版した後』についてまで視野に入れて書籍化を検討する人は、それこそ同じなろう発商品の発行部数だとか、書店がどのレーベルに力を入れているのか数件巡ったりする様な、用心深い人逹だ。


 結局、「先の事は分からないのだから無意味だ」と言う考えも間違いでは無い。


 けれど、物書きとして一歩先まで視野を広げてみる事で、例えば『書籍化への可能性』とか、数年前に起きた様な許し難い悲劇だったり、もしかしたら起こり得るかも知れない『出版後の後悔』——とやらを減らせるのではないのだろうか。




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