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出逢い
ふと人の気配を感じ目を覚ます。
既に辺りは暗くなり、月が登っている。
あわてて携帯を取りだし、時間を見ると19時になろうとしていた。
「ヤッベ!寝すぎた!!」
(目覚ましかければ良かった、てかよくこの寒い中を寝れたな俺)
ぶるるっと寒さを思い出したように身体が震える。
(そう言えば、さっき人が居た気がしたな)
ふと周りを見渡すと、少し離れた所にその人は座っていた。
「えっ…」
胸がドクンと弾む。
長く綺麗な髪、整った容姿、格好こそ違うが何度も夢で求めた人が、夢と同じように月明かりを背負いそこに居た。
さらさらと髪が風によって流れる。
風に乗って香るその人の良い香りだけが、これは現実なんだと教えてくれる。
俺は呼吸やまばたきすら忘れ、神秘的な雰囲気に呑まれていた。
きっとその瞬間、世界から俺と彼女は切り離されていたんだと思う。
ーーやっと出逢えましたーー
何処からか声が聴こえた気がした。