茨城に暮らす365日
私は出身はもとより在住も茨城であるのだが、その茨城が全国魅力度ランキングで最下位を独走しているせいで色々と思うところはある。
別に、もう最下位であることには慣れたのだ。これと言って観光名所もないし、温泉もない。なので今年も最下位ですねと言われても、ああそうですねという感じだ。
けれどテレビ等では、最下位の茨城とはどんなもんやということで、たまにちょっと抓まれたりする。すると出てくるのは納豆だったり干しイモだったり、日本一デカイ牛久の大仏だったりして、日本一とかすごいとか言う割にローカル感炸裂で、見ている側が薄笑いしてしまうような内容であることが多い。むしろその扱われ方の方に、こちらとしては小さな殺意を憶える訳である。
私的に県外の人に言われたイラッとするセリフというやつがあって、一つは電車が異常に混んでいた時に、今日は何でこんなに電車が混んでるとの聞かれて、ちょうど夏の頃だったので、ロッキンだからじゃないですかと答えたら、「え、いばらぎでフェスとかやるの!?」と本気で驚かれたことだ。(因みにこのいばらぎというやつは、言われると指摘はしないもののかなりイラッとくる。茨城はいばらきと読んでください。リピートアフタミー。いばらき)
フェスやって悪いのか。いまどき日本全国どこだってやっているだろう。東京を遠く離れた島とかだってやってるだろう。なぜ茨城でやっちゃいかんのだ。東京から二時間程の場所に無駄に広い土地が広がっているのだから、開催するにはいい場所じゃないか。宿泊場所は少なめだが。
このロッキンこと2000年から毎年開催されているROCK IN JAPAN FESTIVALは、年々チケットが取り辛くなることで地元の人間おも嘆かせている。今年もおそらく、夏になれば私のフェイスブックはこれの写真で埋め尽くされることだろう。私自身は行かない。人込みが苦手なのだ。
でもこのロッキンが開催されるひたち海浜公園と言う場所が近年、『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』という本に紹介されたおかげで、プチブレイクした。一面にネモフィラという薄青の花が広がる、みはらしの丘の光景だ。
私も愛犬を連れて一度行ってきたが、よく晴れていたのでとてもきれいだった。見渡す限り小さな青い花が海風に吹かれている。このみはらしの丘、写真には写っていな事が多いがすぐ向こうは海なのだ。そしてそこから見えるのは港の巨大クレーンだったりする。
しかしながら、プチブレイクしたといってもその規模は所詮プチであって、そこから一躍一大観光地になったりしないところが茨城っぽいと思う。一応春がネモフィラだというだけで、秋には同じ場所にコキアという丸くふさふさとした低木が並ぶ。このコキア、実は紅葉するので真っ赤なふわふわが延々広がるのである。興味のある人は一度画像検索してみてほしい。
因みに、前述の「え、いばらぎでフェスとかやるの!?」発言は東京在住熊本出身の人に言われたものだ。熊本かい。関東どころか本州ですらないんかい。東京在住になった途端地方を馬鹿にできる訳じゃないと思いますよ。東京出身の人こそ意外にこういうことは言わないものだ。
他にもイラッとしたのは「この辺の人って買い物とかどこ行くの?柏とか?」って言われたりだとか。なぜわざわざ柏まで行かなければならんのだ。大抵はイオンで手に入るのに。じゃなければアウトレットだってあるのに。それでなくても日常的にポイント目的で買い物はほぼ楽天であるというのに。
向こうにそのつもりはなくても、こっちは言われたことは忘れない。その闘志を胸に、意地でも上京なんぞするかと思ったりもする。
茨城はほぼ観光客を見かけない県だ。皆茨城にくるぐらいだったら栃木の温泉に浸かりたいと思う。私だって常日頃から、温泉が近くにあればなと思っている。
ところが企業立地面積は全国一位だったり、農業産出額は北海道についで二位だったりするわけだ。そう言われてみれば、日立や鹿島をはじめとしてなんだか工業地帯が多いし、あとは広々とした平地であるので延々と田畑が広がっていたりもする。
だからなんだと言われればそれまでだが、つまりは茨城は観光以外の産業で稼いでいる訳だ。
もういい。それをわかってくれとは言わない。最下位でもいいじゃないか。むしろ他県と不毛な最下位争いをする方が面倒くさい。
しかしこういうところが、またしても茨城がなかなかイメージアップできない要因のような気もする。つまり住人の気質として、わざわざ人に理解されずともいいと思っている節があるのだ。あまり知られてはいないが、茨城出身で幕末ファンには聞き覚えのある芹沢鴨や新見錦(新撰組初期メンバー)も、この辺が原因で土方さんに暗殺されたんじゃないかと私は思う(絶対に違う)。
他にも桜田門外の変で井伊大老を殺してみたり。つまりは言葉が足りないのだ。カーッっとなって思いつめて実力行使に出てしまう。坂本竜馬のように後々まで観光資源になる様な人を輩出していればいいのだが、それがないのは県民性ゆえか。
とか考えていたらああ、水戸のご老公がいたっけな。日本で最初にラーメンを食べたお人がいたのだから、本格的に水戸ラーメン的なものがあってもよさそうなものだが、当時水戸黄門が食べたとされるラーメンを再現した水戸藩ラーメンも、知名度がいまいちときたもんだ。
水戸と言えば、一応日本三大庭園に列挙されている偕楽園では、そろそろ梅まつりの時期だ。でも今行っても寒いし殆ど梅は咲いていないので、もう少し暖かくなったら行くのがいいと思う。
他にも、日本三大花火大会の一つである土浦全国花火競技大会があったり、関東三大祭のひとつである石岡のおまつり(常総國總社宮例大祭)、或いは関東最古の神社である鹿島神宮、日本三大瀑布の一つである袋田の滝、日本で二番目にでかい霞ヶ浦、日本で最初の本格的ワイン醸造所であるシャトーカミヤ、岡倉天心の設計した六角堂(大震災により流出したが再建)などなどなど。他にも城の跡地や古墳がゴロゴロしていたりする。私の出身小学校も城の跡地だった。学校を作る様な広い敷地が他になかったんだろう。おかげで小学校六年間は外敵を阻むために高台に作られた学校に、毎朝ひーこら言いながら登ることになった。通学路には落ち延びた殿様の首塚まであった。今考えれば怖すぎである。
しかしどれだけ観光資源になりそうなものがあっても、ダメなものはダメ。商品が良くても営業力がなければ、商品は売れないのだ。
しかし、捨てる神あれば拾う神あり。
その無名さがいいのか、首都圏から近い立地がいいのか、映画やドラマのロケは数多く行われていたりする。茨城は各地にフィルムコミッションを用意して、映像作品などの撮影に協力に意欲的だ。
つくばみらいにあるワープステーション江戸は、時代物にかなりの確率で登場するので実物を知っている方は笑ってしまう。太秦や日光江戸村ほど観光客を意識していない場所なので、瓦屋根の木造建築の中には普通に自動販売機が並んでいたりする。医龍の舞台になった病院は茨城県庁だし、三丁目の夕日に出てきた喫茶店は石岡にある。前述したシャトーカミヤは初代のイケメンパラダイスで校舎だったし、ジャニーズとAKBが山ほど出てきたバカレア高校の劇場版はほぼ土浦が舞台だった。ちなみに、この土浦は他にもクローズZERO等なぜか異様なほど不良作品の舞台になる事が多い。理由は多分、地元では有名な歓楽街があるからだと思う。仮面ライダーの撮影はカウントするのも面倒なほどあちこちで行われているし、ドラマや映画の撮影もエキストラ募集の話をよく耳にするので多いのだろう。東京でロケをしようものなら大混乱になるであろうジャニーズのドラマだろうが、茨城では普通にやっているのである。
注意しておくが、これは決して自慢ではない。というか自慢出来ない。なんせこれだけ映像作品の舞台になっていても、それを利用して観光に生かせたりはしないのだから。ある意味見事なまでの茨城県の営業力のなさ。しかし私はそんな不器用さが好きだ。
ああ、夜中のテンションで地元愛を原稿用紙九枚近くも語ってしまった。暑苦しいまでの地元愛。どうせ読む人も少ないだろうから、少しぐらいお目こぼしいただきたい。まだまだいくらでも語れるのだが、眠いので今日はこれぐらいにしておく。