第二章 aventure ~予期せぬ冒険~
フレーゼと再開を果たした風花。
フレーゼはメイド長に、ハンドシグナルで、ちょっと下がってての合図をする。
そして、「ようきたなあ。ずっと会いたかってんで?自分。ホンマに。」というのが姫さまの口から出て、ファ!?となる風花。
「あら?これはうけませんでしたか?」と言うフレーゼ。わからない。姫さまがわからない。風花は心の中でそう思った。焼きそばと間違えて、焼きサバを買ってくるくらいわからないと思った。そのわからなさに逆に惹かれ、もっと話したい衝動が込み上げてきた。しかし、そろそろ仕事に戻らなければならない。衝動を抑えて、仕事に戻ろうとしたら、「ウェイウェイ!」と言われ、手招きされる。何故に英語と思いながらも、そこはツッコまずにフレーゼのところに行くと、「あとで読んでくださいな」と折りたたまれた紙を渡される。風花は手紙の中身がものすごく気になったが、仕事に集中しなければならないので、鉄心モードになる。鉄心モードは、風花が体得しているモードの一つで、まあ要するに、完全に仕事に集中し、誘惑に打ち勝つということだ。そして、今度こそ本当にフレーゼと別れた風花は、仕事を開始する。
ここで、風花の屋敷のメイドの業務を少しだけ紹介しよう。
メイドの業務には、城内外掃除兼見回り、姫様の給仕、護衛、侵入者退治などがある。
掃除では、風花が腕を振れば、部屋の埃が全て消し飛ぶ。
とは言われていないが、彼女が掃除したあとは埃ひとつ残らないということで、メイドの間では、師匠と勝手に呼ばれている。とても人気なのだ。
まあ、中にはお姉様と呼ぶ年下のメイドもいるが•••••。
侵入者退治の仕事では、侵入者を撃退するときは、心の中で、ごめんなさい!と言ってから、戦闘する。メイドたちは訓練されているので、滅多には負けないのだ。
まあサボる奴もいるが。
先刻クビになったメイドはそのサボってたやつらだ。
ちなみに彼女は、次期メイド長候補と言われている。
風花が行くとこ行くとこに後輩で風花を慕っているメイドたちが集まるので、呆れて注意したことがあるが、メイドたちに、
メイド長、ただ師匠を独占して見たいだけじゃないですか?私見たんですよ。メイド長が師匠の写真を買ってるの。
と言われてしまったので、注意しづらくなっている。
そのお屋敷では、風花とフレーゼの写真が秘密裏に撮られ、売買されているのだ。
そんなことは露知らず、午前中の仕事を終え、昼休憩に入る風花。
そして昼休憩後、いつものように午後の仕事に取り掛かろうとしたら、
「風花さん。ちょっと・・・・」
と、メイド長に呼ばれたので、行ってみる。
「なんでしょうか?メイド長」
メイド長のところに行くと、そっと耳打ちされ、
「今日、大事なお客様がお見えになるので、地下のワイン倉庫から、どれでもいいのでワインを持ってきてください。」
と、小声で言われる。
なんで小声なんだろうと思ったが、
「では、頼みましたよ。」
と言われたので、
「分かりました」と、了承する。風花は自分が超人気者であり、どこかにファンのメイド達が潜んでいる可能性があることを知らないのだ。
「では、私は用事があるので、これにて失礼。」と、どこかへ行ってしまう。メイド長が向かった場所は、フレーゼの部屋だ。部屋いついたメイド長は彼女に、ちょっと居間にいってくださいますか?と言う。
「わかりました」と言い、彼女は居間に向かう。
風花はメイド長と別れ、風花はワイン倉庫へと向かう。歩いていると、見覚えのある人影が歩いているのが見えた。フレーゼだ。風花はドキッとしてしまうが、すぐに、「姫さまと私じゃ、身分が全然違うんだから、変な気を起こさないようにしないと。」と、感情を振り払う。そうしていると、
「あら、風花さん?おはようございます。どこかへ行かれるのですか?」
と、話しかけてきた。
「ええ。メイド長の指示で、ワイン倉庫へ。」
「ワイン倉庫ですかー。あそこは私もあまり行ったことがないのですよー。」
「そうなんですかー。」
「では、お仕事の邪魔してはいけませんし、私はこれで失礼しますね。」
といい、フレーゼは去っていった。そして、風花は再び、ワイン倉庫に向かい始めた。風花が完全に見えなくなった頃、フレーゼは思った。
「なーんて、こんな面白いそうなこと、私がほっておくわけがないじゃないですかー。よーし!こっそりついて行っちゃいましょー!」と。そして、風花を尾行し始めた。
ちなみに、今回は、地下に行く風花ファンのメイド達は一人もいないわけだが、その真相はこうだ。案の定隠れて見てたメイド達は、風花がいなくなったころ、こっそり付け始めたフレーゼを見て、何やってんだろうとほかのメイド達と話していたら、「本当になにをやっているんでしょうね。あ・な・た・た・ち・は!」という声が後ろから聞こえたので、恐る恐る振り返ると、後ろにメイド長がたっていた。「仕事に戻りなさい!」とメイド長に怒られ、慌てて自分の持ち場に戻るメイド達であった。
一方風花は、ワイン倉庫に着いていたが、妙に視線を感じていた。
後ろを振り向いても誰もいない。
が、よく見ると、姫さまらしきドレスの一部が見える
どうやらついてきたようだ。
姫様のことだ。おそらく、面白そうだから、とかそんな理由だろうと風花は推測する。まああたっているわけだが。
「もうバレちゃいましたかあ。では仕方ありませんね。」と、フレーゼは風花に近寄ってきて、彼女の手を掴み、駆け出す。
縦横無尽に行きたい方向へ駆け回るフレーゼ。
あまりの嬉しさに惚けていた風化だったが、
われに帰り、姫様に引き返すように説得を試みる。しかし、姫様の究極奥義、上目遣いでおねだり(計算しているわけではない)が発動し、風花壊れる。
「ま、まあ、すこしぐらいならかまいませんよね。。。。あは、あはははははは。」
そして、フレーゼとともに倉庫を駆け回っていたら、なにやら大きな扉が見えてきた。そして姫様が走りながら、ひらけごま!って大声で言うと、ごうんという音を立て、ドアが開き始めた。
ネタで言ったひらけごまで開いてしまった扉。フレーゼは、冗談で言ったら本当に開いてしまいましたどうしましょうとでもいいたげな顔をしているフレーゼに、開いたものは仕方ありません。ラッキーだと思ってこのまま駆け入りましょう、と言って、フレーゼにそのまま直進するように促す。そして、二人はダンジョンへ入っていった。
ダンジョンに入り、息を整える2人を歓迎するかのように待ち構えている存在がいた。あの暗闇に光る目••••••。間違いない。あれは、コウモリだ。
2人をめがけて、飛んでくるコウモリ。風花は身の危険を感じ、しゃがみこんだ。しかし、風花には一匹もコウモリが飛んでこなかったので、おかしいと思い、見上げてみると、全部のコウモリがフレーゼを襲っていた。なので、急いでコウモリ郡を撃退し、フレーゼを守った。
しかし妙だ。私がよけてもコウモリたちは向かってこなかった。どころか、まるで姫様以外は眼中になかったみたいに、姫様に向かっていった。これは、もしや•••••、と風花はある推測をする。しかし、この推理が正しいか否かは、答え合わせができない。なぜなら、それを確かめようとして行動した結果、推理が当たってしまった場合、フレーゼをもう一度危険にさらすことになるからだ。そんなことは、断じて否だ!あってはならない。
ならば、答えは一つ。簡単だ。私がどんなモンスターからも姫様をお守りすればいい。そんな簡単なことだ。風花はそう決心して、フレーゼと共に進む。
フレーゼと風花はずんずんずんずんずんずん進んでいく
フレーゼに向かってくるコウモリを、風花が撃退しながら進んでいく。進んでいくと、なにやら扉らしきものが見えてきた。近くまで行ってみると、こう書かれていた。
「この先、入りなさい。」
警告だかそうでないのかわからないような文章だなあと風花は感じた。
しかし、入れと言っているなら、入るしかないよね!と自分を納得させ、中に入っていく。続いて、フレーゼも入る。と、同時に、ドアが閉まった。
二人部屋に入ると締まる仕掛けだったのかと理解した。
扉が閉まり、部屋に閉じ込められる2人。風花だけが、罠!?と身構えたが、杞憂だった。すぐ別のメッセージを見つけたからだ。
そこには、
「第一の試練!ここで、一緒に部屋に入った人と、手を握っちゃってくださーい。」
と書かれていた。ちなみに、フレーゼは、部屋に入るや否や、部屋に仕掛けはないかと部屋を物色し始めた。
「手?手を繋ぐ?テヲツナグ?誰と?あ、この部屋に一緒にいる人か。この部屋にいる人間と言えば」
と言って、部屋の中を見る。
「私と姫様だけね。つまり、私と姫様が手を繋ぐと。そういうことね。
•••••••••••••って、ええええええええ!?ワタシトヒメサマガテヲツナグ!?手を!?繋ぐ!?」
と、風花がまごついていると、後ろから、部屋の物色を終えたフレーゼがメッセージを読み、
「手をつなぐ?それだけでいいんですか?簡単じゃないですかあ。こうでしょ?ギュッ」
「!!??」
一瞬、何が起こったか、風花はわからなかった。しかし、我に返り、フレーゼの手が自分の手をしっかり握っているのを見て、状況を把握した。
そして直後に、赤面した。それをみたフレーゼが、「あらま?風花さんがゆでたこみたいになってしまいました」
と言った。そんなやりとりが続いていると、
「ピンポンパンポーン。」という音が鳴り響き、「いいものを見せてくれて、ありがとっす。第一関門を見事突破したっすね。そのドアのロックは解除したので、ちゃっちゃと通ってくれて構わないっすよー。」というアナウンスが流れ、ガチャッという音が聞こえた。
そしてフレーゼが風花の手をぱっと離し、ドアのほうに走って行った。風花が、ホッとしたようなさみしいようななんだか良くわからない気持ちを感じていると、アナウンスの人が、「あ、走って行ったそこの女の子、待ってくださいっす。言い忘れてました。ここから先は、二人で手をつないで進んでくださいっす!」という、風花にとっては余計なことを告げる。風花唖然。
しかし、それを聞いたフレーゼは、風花のほうへ走ってきて、風花の手を握り、「そうだったんですかー。では、このまま行きましょー!」と、風花と共に?扉のほうに向かった。風花、当然のごとく、またゆでたこである。
しかし、風花は知らなかった。この第一関門が、序の口に過ぎないことを。この先には、もっとハードか試練(あくまでも風花にとってだが)が待ち受けていることを!
そして、フレーゼは第一関門の扉を開け、第二ステージへ!
進んだのだが、風花がへにょへにょで、更に赤面のあまり気絶してしまい、、フレーゼがダッシュで駆け抜け、短時間で扉まで着き、大した物語にならなかったので、道中の話は割愛させていただく。
「••••••••ん。••••••••さん。風花さん。起きてください〜。」
風花が目を覚ますと、先ほどと同じ天井が見えた。
「あれ?同じ天井?姫様、ここはまだ、第一関門なのですか?」
「いいえー。ここは第二関門の部屋の中ですわよー。私が風花さんを担いで、ここまで来ちゃいました。」
「最初からこれじゃ、先が思いやられるっすよ?当然のことながら、この先は試練の内容がよりハードになっていくっすからね。よくある設定じゃあないですか。とまあ、雑談はこれくらいにして、第二の試練を始めましょうかね。では、第二のしれーん!第二なので、当然第一よりハードルが高いっすよ。では、課題を言うっすよー。では、お二人さん。四秒見つめあってくださいっす。」
「見つめあう?それもたった4秒?なんだ。さっきよりも簡単じゃないですか。これならさっきのような醜態を晒さないですみますね。」
「お?言うっすねー。まあ、うだうだ言ってないで、とっと始めるっすよー。では、第二の試練スタート!」
そう言われ、風花とフレーゼは部屋にあったベンチに座り、見つめあった。
「いーーーーーーーーーーーーーーち!」
と天の声がカウントをし始める。
「!?」
風花は驚いた顔をする。
なっが!一秒がなっが!
「ちょっと!一秒が長すぎませんか!?」と風花が反論するが、「私は4秒見つめあってとしか言ってませんよ?一体いつから、一秒が短いと錯覚していた?」と返され、言葉を失う。
「では気を取り直して。第二の試練再開っす。」
風花とフレーゼは再び見つめあった。
「いーーーーーーーーーーーーち。」
カウントが始まる。風花はすでに目が泳いでいる。き、きつい!と風花は内心そう思っていた。「そりゃそうですよね。姫様の天使でかわいい顔をこんな長くみるのは初めてですから。」
しかし、カウントは進む。
「にーーーーーーーーーーーーい!」
耐えきれず、風花は目を一瞬そらしてしまったが、すぐにもどした。
「ば、ばれてないですよね•••••••?」と不安になったが、その後すぐに、
「さーーーーーーーーーーーーん!」のカウントが聞こえたので、安堵する。
天の声がすぐさま4とカウントし、第二の試練が終了した。
「いやー。すごいですねー。第二の試練、突破おめでとうっす!」と祝福した後に、ボソっと、「風花さん•••••なるほどねえ。にひひ。」という意味ありげなことをつぶやいた。風花たちには聞こえなかったみたいだが。
「何はともあれ、第二の試練突破しましたから、ドアのロックを外すっす。ガチャっとな。」
と、天の声が言った直後、ドアから開錠を意味するガチャっという音が聞こえてくる。
「風花さん。先に進みましょうか!」
この先どんな冒険がまっているのか楽しみだと言わんばかりの表情で、フレーゼが言う。
そして、彼女がドアを開ける。
さあ!第三ステージへ!
ドアを開けた瞬間、風花は固まった。なぜなら、ドアを開けた先には、
魚魚魚!
魚がたくさんいたからだ。それも、ガラスケースの中に!
これではまるで水族館じゃないですか!と、風花が思うのも無理はない。そんな風花の心を読むかのように、
「あなた今、これじゃまるで水族館じゃん!って思ったっすか?あたりっすか?正に解けたと書いて、正解っすか!?そうですよ!水族館なんですよ!ここでじゃじゃーん!第二の試練延長線っす!その内容とは!一緒にいる女の子を、楽しませてくださーいっす!そうすれば、第三の試練への扉が開かれるっすよ!じゃ、そゆことでー。」と言って、ガチャッと切れてしまった。
「風花さん!風花さん!」
「なんですか?姫様。」
「ここ、魚がたくさんいますねー。こんなに魚を見たのは初めてですー。楽しいですねー。楽しいですねー。」
あれ?もう楽しんじゃってます?と風花は思う。
「これ、もう条件クリアしてるんじゃないでしょうか•••••••?」
と風花が呟いたら、
「ダメですよー!クリア条件は、あなたが女の子を楽しませることっす!今楽しんでるとしても、それは水族館の功績であって、あなたの功績ではありませんからね!」と天の声がいい、再びガチャッと切れてしまった。
「姫様を私自身が楽しませる•••••••ですか。これ以上なく楽しんでいる姫様を、さらに楽しませる••••••。ふーむ。」
と考えて、
「あ!そうだ!」
と手をポンってやる。
「姫様姫様!」
「なんですか風花さん」
「私が姫様をもっともおおおおおおおおおおっと!楽しませてあげましょう!」
「わあ!何やってくれるんですかー?わくわく!どきどき!」
「姫様。あの魚は当然分かりますよね。」
「ええ。あれはサメですね。それはわかりますよぉ。」
「では、そのサメで面白いこと(多分)をします。いきますよ~。」
ごくり、とフレーゼがつばを飲む。
「サメが・・・・・」
「サメが・・・・・・・・!?」
「サメザメ鳴く。」
風花が言った瞬間ブリザード(ものすごく寒いことを言ったときに吹くアレ)が、ひゅおおおおおおおおおおと吹き(もちろん比喩だよ!比喩!本当に吹いたわけじゃないよ!)、風花は凍りついた。
言ってみて初めて感じたこの寒さ。自分のシャレのセンスのなさを痛感してしまった風花であったが、フレーゼの、「サメが・・・・サメザメ・・・・鳴く・・・・・」というつぶやきが聞こえ、我に返る。
「ふ、フ、フレーゼ様!大変申し訳ございません!こんな自分でもレベルの低さが分かるようなギャグを!}
と、必死に謝罪したが、
「サメが・・・サメザメ・・・・ぷ、ぷくく・・・あはははははははははははははははははははは!」
と、大笑いするのを見て、
「・・・・・ほへ?」
と、今までしたことのないだらしない、しかし可愛い顔をする。
漫画でよくあるアレだ。首をかしげ、目が白い丸になって、頭上にハテナマークが出現するあれだ。風花のそんな顔をファンのメイドたちが見た日には、レアだと写真を撮られまくるだろう。
風花はまさか・・・・・・と思い、念の為に
「あそこにいる魚はキスですね。そして、キスが、キスにキスします。」
「タコもいますね。あのタコがたこ焼きになります。」
「別の水槽にアンコウも。。。。。って!ちょうちんアンコウじゃないですか!深海魚がなんで水槽に存在していられるんですか!まあいいです。アンコウの好物は、アンコウロ餅です。」
と、普通なら凍りつきかねないダジャレを三連発し、その三つとも、フレーゼは大爆笑した。ちなみに、聞かされた天の声は、凍りついていた。
「風花さん」
「は、はい!」
「さっきもっと楽しませてくれるとおっしゃいましたが、本当に楽しませてくれました。ありがとうございます。」
と、優雅にお辞儀をされる。
「そうですか。楽しいですか。天の声さん。姫様が楽しいって言ってますよ。これで、ここは突破ですよね!」
「なーんか釈然としないっすが・・・・・。ま、条件クリアには変わり無いっすね。そいじゃ、第三の試練への扉を出現させるっすから、ちょっと待っててくださいねー。ぽちっとな。ちなみにチョウチンアンコウがなぜに水槽の中に存在していられるかというと、水を深海と同じ仕様にしてるからっす。ガラスもとおおおおおおおおおっても頑丈な特注品っすよ。」
風花は一瞬、深海と同じにするとかどうやって!?と思ったが、口には出さなかった。相手は超がつくほどの金持ちだ。金持ちのやることはよくわからない。そう考えているうちに、ごががががががががっと音がして、扉が現れた。
「あれが第三の試練の扉・・・・・・・。」
今までの二つは、女の子同士で何かをやるみたいな内容だったから、第三の試練もその可能性が高いな・・・・・、と風花は推測する。そして、フレーゼと試練の部屋に入っていく。風花が先に入り、部屋を見渡す。
「液晶がいくつかありますね。ひとつはわかりますが、ほかのは何のためでしょう?」と疑問に思う。そして、フレーゼが部屋に入って、ドアを閉めた。
直後、施錠され、ごがががががという、先ほど聞いた音がまた聞こえてきた。そして、恒例のアナウンスが入る。
「ピンポンパンポーン!もはやおなじみになった、天の声っす!これから第三の試練の内容を設営するんですが、その前に重要なことを一つ。お察しとは思いますが、さきほど扉への道を再び封鎖したっす!そして、ここからは元来た道を引き返すことは許されない。。。。しかし、今すぐ帰りたいですわ!そんな風に考えているあなたに朗報っす!部屋の右手を見ててくださいっす!」
と言われたので、風花たちは見ていると、ウィイイイイイイインという音が聞こえ、エレベーターらしき構造のものが現れた。
「まあ、見ての通りエレベータなんすけど、なんと!ここから!地上に!引き返すことができるっす!ヒューヒュー!ドンドン!パフパフ!さて、ではここで、今からあなたたちに意思を問うので、答えてくださいっす!あなたたちはここで、エレベーターに乗って引き返しますか!?それとも、先に進むっすか!?」
と、問われ、風花はまよわず、「決まっています。進みます。エレベーターには乗りません。」と答えた。
「いいっすか?本当に乗らなくていいっすか?ここを突破できるかもわかりませんし、この先の4つ目の試練、ネタバレしちゃうとハードルが一気に上がるっすよ。それでも、進みますか?」
という若干いやな問いに対し、
「何を言われようと、私の答えは変わりません。」
と即答。
そして、ウィイイイイイイインという音とともに、エレベーターが再びただの壁に戻っていく。
「あとで後悔しても、遅いっすからねー。では、改めて。お待ちかね!第三の試練の内容を発表するっす!部屋の液晶を見てくださいっす!」
そして液晶に発表されたその内容は!
『その部屋にいる二人でぎゅーっと抱き合ってください』
というものだった。
嬉しい!姫さまと抱き合えるなんて!しかし、予測はなんとなく出来ていた分、第一の試練ほどの衝撃はないなあ。と風花は感じていた。そしてそのとき歴史は動いた。いきなりフレーゼが風花の耳をかぷっとしてきたのである。
「姫様!?な、何を!?」
ここですこし考えればわかったことだろう。複数のモニターの意味が。しかし、そこまで考えられるほど、冷静さを保つことができなかった。要するにこういうことだ。フレーゼが向いている方向にあるモニターにだけ、こう書かれていた。
「第三の試練βの内容っす!お姫様は、今抱いている人の耳をカプってかんでくださいっす!」
そして、姫様の
「これで第三の試練突破・・・ですねぇ。」
の一言で、先ほどの行為がフレーゼにだけくだされた試練の内容であることを悟る。
「いやー。いいものみせてもらったっす!十分に堪能したので、第四航路への扉を開けるっす!」
といい、アナウンスが切れてしまった。直後、ガチャっという、音とともに、扉のロックが解除された。
「しかし、あの天の声、『第四航路への扉』と、言いましたね・・・・。航路・・・・まさか・・・・・・・まさかね・・・・・・。」
と、いやな考えが脳裏をよぎる。
そして、どうか冗談でありますようにと、願い、扉を開ける風花だったが、その願いはは見事に打ち砕かれることになる。
扉を開けた先に二人を待ち構えていたのは、あたり一面の水だった。
「これ、どうやって先に進むんでしょうか・・・・・・。」
と、途方にくれ、あたりを見渡していると、扉の横に、小さなボートが止められていることに気がついた。その上になぜか、ハンカチに包まれたなにかが置いてある。
「これに乗って進めということでしょうか・・・・。」
と考え、ボート(といっても手でこぐタイプだが)に乗り込む。幸い、風花はこういうボートの特訓も受けていたので、沈んだりはしないのだ。フレーゼが乗ったところで、置いてあった包みをフレーゼに渡して、風花は漕ぎ始める。
ギーコギーコ
ギーコギーコ
船はどんどん進んでいく。そして、何が起こることもなく、扉の前についてしまった。
これを作った人は一体何がしたかったのかと風花は考えてしまった。
しかしここであえて言おう!
特に、意味はない!
そして、扉を開け、第四の試練の部屋へ!
ふたりが入ると、案の定扉が施錠された。
そして、またまた案の定、アナウンスがかかる。
「案の定とか言わないでくださいよー。」
モノローグに突っ込みを入れてきおった!
「さーて。では、第四の試練を始めるっすよー。ボートに乗ってた包みには気がついたっすかな?」
「まあ、あんな目立つところに置いてあったら、いやでも気が付くでしょう。」
「さて、では、今それ持ってますかな?」
「はい。姫様がお持ちに。」
「これですねぇ。」
といって、フレーゼが包まれた謎の物体に指をさす。
「では、今ここでそれを、開けてくださいっすー。」
「あけましたわ。これは・・・・・・、お弁当箱?」
「そうっす。弁当箱っす。では、ここで第四の試練の内容発表っす!そのお弁当箱を使って・・・・・・・・・・。一番好きな人にだけしか行わない行動をしてくださいっすー!あ、お弁当以外にも使っていいっすよ・・・・。例えばそう。自分の身体とか・・・・。あ、でも、アダルティーなことは禁止っすよ!では、そういうことで!」
そう言って、ガチャッと切ってしまう。
「なん・・・・・・・・・・・だと・・・・・・・・・・・・・」
確かに第三の試練までとはハードルの高さが違いますね・・・・・・・・・と風花は思った。
「一番すきな人だけにしか行わない行動ですかあ。私が恋愛をしていたら、どんなことをするのでしょうかねー。まあ、思いついた先から試していきましょー。風花さん風花さん。」
「は、はい!姫様!」
「お弁当食べましょー。何が入ってるのでしょうかねー?わあ!私の好きなものがたくさん!」
弁当には、フレーゼの好物だけでなく、風花の好物も入っていた。
「このお弁当を作ったのは、間違いなく私や姫様をよく知る人物でしょう」
「まあまあ、今はお弁当食べましょう」
と主に言われ、風花は従う。
「では、はいあーん」
と、フレーゼがカップル定番のアレをやってくる。
やっぱそうきますよね・・・・・・。お弁当と言ったらやっぱりそれですよね。。。。。
まあここで拒否したら姫様に失礼かと思い、食べる。
「今度は風花さんの番ですよぉ。」
といって、口を開けてきた。
幸せだ!私は今!おそらく、全人類で一番幸せだ!という気持ちを理性で封じ込めて、食べ物をフレーゼの口に持っていく。
そして、風花だけだが十分に堪能したあと、各々の好物を食べ始める。一瞬、自分が今使っている箸が先ほどフレーゼの口の中に運んだことを思い出し、これってか、かかかかかか、関せttttttttttttttなどという邪な考えに思考を支配されそうになったが、再度理性で封じ込めた。そして、弁当箱を二人で平らげたあと、
「やっぱり自分の身体を使った、一番好きな人にしてあげたいことと言ったら、これですよねぇ」と言ったフレーゼは、「ひ・ざ・ま・く・ら!ですよねぇ。」といい、自分の太ももを軽く叩いて、風花を誘導する。
風花は「し、失礼しまーす。」と、言って、頭を乗せる。風花に取って、
絶対に忘れられない時間になるだろう。
もっと長くこうしていたいな~と風花は思ったが、展開は残酷である。突如、ガチャっという、ロックが解除される音が聞こえた。
「あ、解除されましたよ~。風花さん、先に行きましょう。いよいよこの先が、ゴールですよー。」
と、言われたので、渋々ながらも頭を上げて、先に進んだ。
「今回はいつもみたいにアナウンスがなかったな~。」と考えながら、第四の試練を突破した。ちなみに、今回アナウンスがなかった理由は、百合を見た天の声が、テンションが高くなりすぎて気絶してしまい、その時に、ロックを外すスイッチを押してしまったからだった。風花たちが扉をあけると、岩で出来た丸いトンネルのような通路があり、その先にはまた扉があった。しかし、その扉は、今までの試練部屋の扉とは違う感じだった。
「あそこがゴールですねー。」
フレーゼは扉の前まで歩いていき、扉を開けようとした。しかし、1人の力では開けることができないようだ。フレーゼの様子を見て、状況を理解した風花は辺りを見回すと、立札を発見する。そこには、
『この先に進みたければ、絆を示せ』
と書かれていた。
「絆を示せって、姫様の行動を見る限り、あれしか無いですね。姫様!姫様!その扉、私と二人で手を重ねて押して見ましょう!」
「?二人で押すのはわかりますが、何故手を重ねる必要が?普通に押せばよいのではないのですか?」
「今までの試練は全て、私たちを密着させるような内容でしたよね。ということは、今回も、その可能性が大きいです。」
「なるほどー。わかりましたぁ。」
そして、風花とフレーゼは、扉の前に並ぶ。
「いっせーのーせで行きましょう。いっせーのー、せ!」
がこん
と音がして、扉が少し開いた。扉が開いたので、後はもう手を重ねる必要はなくなった。両サイドにわかれ、一気に押す。そして、扉は完全に開き、風花たちは中に入る。
「暗いですねぇ。風花さーん?いますかー?」
「ここにいます。どこかに電気をつけるスイッチがあるはず。探しましょう。」
と、言った直後
「ぎゅっ。」
と言う声と共に、手に暖かい感触が。
「ひ、ひひひひひ姫様!?一体何を!?」
パニック風花、再び。
まあ、意中の相手に突然手を握られれば、2度目だろうとパニックにもなろう。
「こうして手をつなげば、はぐれることはありませんねぇ。」
風花は観念して、スイッチを探すことにする。ドアの近くにあるはずと推理し、壁つたいに探すがなかなか見つからない。と、進んでいると、急に、ガコン!と、何か壁が凹むみたいな感じがした。
「まさか•••••••••やってしまいましたか?よくある定番のアレを••••••。」
と、恐怖で震え始めたその時!
部屋の明かりが付き始めた。
そう。そのスイッチは、「よくあるアレ」ではなく、彼女らが探していた、電気のスイッチだったのだ!
「紛らわしいですね。一瞬ひやひやしました。」と、この仕掛けを考えた人を恨みながら、改めて部屋を見渡す。「見た感じ、ここはワイン倉庫のようですね。でもなぜ?ワイン倉庫はあちらにもありましたよね?ここと繋がっているのでしょうか?先ほどみたいに壁に隠しスイッチがあるとか?」
疑問に思ったので、壁つたいに一周回ってみたが、先ほどのようなスイッチはなかった。
と、そこで突然、フレーゼが、「思い出しましたわ!」と言った。
「思い出したとは?」
「そういえば昔、メイド長から聞いたことがあります〜。このお城の地下には、先祖代々から受け継がれる、特別なワイン倉庫がありますよーって。でも、危険なので、入っちゃダメですよ〜って言われてましたぁ。」
「それが、このワイン倉庫ということですか?」
「でしょうねぇ。」
「まあ、せっかくワイン倉庫に来たことですし、メイド長から言われてた仕事をやりますか。えーと、大事なお客様が来るのでしたね。だったら、とびきりのいいワインがよろしいですね。」
そして、一つ、ワインを手に取り驚愕する。
それが、200年ものだったからだ。
「は、初めてみました•••••。200年ものなんて••••••。向こうにはなかったですね。確かに、特別っぽいです。」
「風花さん風花さん!ここに、ワイン倉庫全体のマップがあります!棚に年号が書いてありますね。」
フレーゼに呼ばれ、図を見てみると、ワインが年号ごとに分かれているのがわかった。どうやら、1番すごいのは、500年もののようだ。
「500年もの••••••。一体どんななんでしょう?見当がつきませんね。まあ、この棚のワインを持っていきましょう。」
袋を出し、ワインを2,3本入れる。
「これで完了ですね!さあ、帰りましょう•••••、と言いたいところなのですが、どうやって帰ればいいのでしょう?きた道をもう一度戻るのは、ナンセンスですし。」
と、考えていると、フレーゼが、「エレベーターを使えばいいのでは?」と言ってきた。
「エレベーターなんて、あるのですか?そして、何故姫様がそれを?」
フレーゼは、「ここですぅー」と言って、いつの間にか引っぺがしていた地図の上の方を指差していた。
引っぺがしてはまずいのでは!?と思ったが、言うわけにも行かず、フレーゼが指をさしている箇所を見ると、思いっきり、「エレベーターここ↑」と書かれていた。
地図を見ると、入り口の正面にエレベーターがあるようだ。
風花たちは入り口まで戻り、正面をまっすぐ歩いて行くと、確かにエレベーターがあった。ボタンを押して待ち、来たので、乗り込んだ。中に入ると、ボタンは二つ。「ワイン倉庫」と書かれたものと、「屋敷」と書かれたもの。なんてアバウトな!と風花は思ったが、屋敷のボタンを押す。
扉が閉まり、エレベーターが上昇。風花たちは、やっと、屋敷に戻れるのか。無駄に疲れたなあ。と、安堵したその時!エレベーターが止まり!扉が開いて風花たちを待ち受けていたものは!
ゴゴゴゴゴゴ!
屋敷だった!
「お屋敷に戻ったので、私はこれで〜。」と言って、フレーゼは行ってしまった。
風花は内心、あああああ!姫様が行ってしまうー!と思ったが、止めるわけにもいかず、平静を装って、どうもありがとうございましたーと言った。そして、メイド長捜索作戦を始める。作戦と言っても、単なるメイドたちへの聞き込みだが。「メイド長をみませんでしたか?」「メイド長をみませんでしたか?」と、メイドたちに聞いて行く。「キッチンで見たよー」や、「姫様の部屋に入っていくのを見たよー」など、有力な情報が集まるのだが、すれ違いばかりだ。中には、「お姉様!」など、質問の答えになっていないものもあったが。そのメイドは、きっと今ごろ幸せな妄想の中だろう。風花は、聞き込みを続けていた。そして、ついに最有力情報を得た!
それは、あるメイドに、同じことを聞いた時だ。そのメイドはこういった。「ええ。見ましたよ。っていうか、私ですよ?」と返ってきたのだ!
「あ!メイド長!よかった。探したんですよ!これ、メイド長に頼まれたワインです。」
ワインを渡して、風花が立ち去ろうとした時だ。
「風花さん」
とメイド長に呼び止められた。
何かまずいことをしてしまったのでしょうか?と思ったが、
「何故私があなたにワイン倉庫へ行かせたか話しましょう。結論から言うと、この仕事は、次期メイド長候補のものに行う未来のメイド長昇格試験だったのです。まず、あなたが姫様と鉢合わせし、一緒にワイン倉庫へ行ったのは、偶然ではありません。私がそう仕組みました。姫様なら。あの姫様なら、きっとダンジョンに行くだろうと、確信がありました。そして、あなたはここにこうしてワインを持って戻った。合格です。あなたは必ず、次のメイド長になります。合格祝いとして、このワインの中の一本をあなたにあげます。元から、戻ってきたら、あげるつもりでした。」
展開に風花の頭はついていけてなかったが、次期メイド長の試験に合格した、ということを理解して、ワインを一本貰い、では失礼しますと言って去って行った。風花が去った後、メイド長は台本と書かれた冊子を取り出し、あんなテンション高いアナウンスは黒歴史ですね、「〜っす」なんて、私のキャラじゃありません!ああ、一刻も早く忘れたい、と小声で言う。それをその場にいなかった風花は知る由もなかった。
どう?
そして、ここにも、風花が知る由もない展開が。自室に戻ったフレーゼはぼそりとつぶやく。
「風花さん。風花さん、ですか。少し、会いたいです。何故でしょうか?」
自身の心の変化に、フレーゼはまだ気づかないのであった。
ダンジョンという波乱の展開を終え、日常に戻った風花とフレーゼ。しかし、その日常は長くは続かなかった、というのは、二次元ではかなりよくある話だ。風花たちも、例外ではない。その波乱をもたらすかもしれないし、もたらさないかもしれない1人の人物が今まさに、この城に向かっていた。そして、その人物は不敵な笑みを浮かべて、「待っておれよ。今行くでな。クク、ククククク」と言った。
こいつは一体!?
何者なのか!?