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(22)

江島は、何度会っても、この海堂を好きになれない。


その第一の理由は、彼が「ヤクザ」だからである。

そして、ふたつには、一人娘の明子をまるで略奪するかのように連れ去ったその張本人だからだ。


そうした意識で見るからなのだろう、何ともふてぶてしい態度に感じるのだ。

だが、12年前と同じで、そのグレイゾーンでなければ出来ないことを頼みに来たのだ。

人間とは、身勝手なものだと自分でも思う江島である。



「お店の方、“ぼちぼち”みたいで・・・・・。」

海堂が冒頭からそのようなことを言う。

「おかげさまで・・・・。」

江島は、常識的な挨拶言葉としてそう返した。

だが、「お前のお世話になんぞなってないんだから、おかげさまも無いものだが・・・・」と思ってはいる。


「ところで、急なお運びで・・・・」

海堂は腕時計をちらりと見る。

どうやら、まだこの後の予定があるようである。話をせかしている。

「実は、12年前に倒産した定森金属加工、当時の小出社長の行方をご存知ないかと思って・・・。」

海堂の態度に押された訳ではなかったが、江島の口から自然と「用件」が直接的に出た。

「ほぅ!・・・・今頃になって、なんで?」

海堂にとっても意外だったようである。

「別に、こうだから・・・という理由は無いのですが、少し気になって・・・。」

江島も、本音を言えなかった。というより、自分でも、なぜこの時期にそれが気になるのか、わかっていなかったのだ。


「そこまでは知りまへんが、必要とあらば、調べさせまっせ。数日だけ時間をもろうたら。分りましたら、すぐに明子からでも連絡させますわ。・・・そやけど、今更それを知って、どないされるおつもり?」

海堂は、江島の狙いが分らないようだった。


「おやっさん、過去のことはあまり拘られない方がええでっせ。過去は過去。そいつを引きずっても、決して明日のためにゃあなりまへん。」

海堂は、それだけを言い残して、「まだ人に会わなきゃいけないんで・・」と席を立った。

若い衆が入り口のドアのところに立ったのを確認してから、海堂は明子の傍に寄る。

「明子、今日はもう終わりにしろ。・・・これで、おやっさんに旨いモンでも喰ってもらってから、送っていけ。」

数万円の現金と車のキーを渡してそう言った。


ドアのところまで行ってから、海堂が振り返る。

「そうだ、わいは今夜帰れんかもしれんから、寂しかったら泊まってきてもええぞ。たまにゃあ、里帰りもええやろ。」

そう言われた明子は、嬉しそうに「ありがとう」とだけ答えた。



(つづく)




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