無謀な提案
(なにこの選択肢。なんで乙女ゲーみたいなスキルアップ条件なの? っていうか最後のオークの睾丸って…………、これが一番乙女ゲームっぽさがマシ………かな…?)
◆◆◆
その夜――。
「……というわけで、“素材集め”に行きませんか?」
私は笑顔で提案した。あくまで自然に。そう、自然に。
セオとカインが、石テーブルをはさんで私をじっと見ている。
「“素材”って、何の?」
カインが穏やかな口調で尋ねる。
「うん、あのね、ちょっと……その……アンダーオークの、えっと、タマ……あ、いや、マナ源? みたいな?」
「……」
「…………」
沈黙。
セオの瞳が、音もなく鋭く細くなった。
「お前、それはどこで聞いた」
「えっ!? あっ、いや、ほら、有名じゃないですか!? オークの魔力器官って、すっごくレアで価値があって!」
「…………どうしてそんなものが欲しいの?」
カインが鋭い質問をしてくる。
「ていうか、オークの“睾丸”って、要するに何か知ってるの……?」
「みたことはないですけど、アンダー層にしかいないオークであることは知識としては知ってます。
価値があるなら、ミドル層を目指しながら、資金集めと修行を兼ねて獲っておいた方がよいかもって……」
「いや普通に危ないよ!?」
「……なぜそれを今、集めようと思った?」
「……その……あの……えっと……」
二人からの視線があまりに痛く、私は椅子に沈み込んだ。
◆◆◆
結局――危険すぎるということで睾丸集めは却下された。
これまで碌に戦ったことがないことや、これまでの記憶が曖昧であることをユイが告げると、カインがこう提案してくれた。
「じゃあ、まずはユイさんの“魔力適性”を調べてみよう!」
「僕、勇者学園で基本の“魔力測定”は習ったからさ!」
洞窟の一角で、即席の“魔力測定”が始まった。
「じゃあ、ユイさん。この石に集中して、手をかざしてみて」
渡されたのは、手のひらサイズの淡い白石。カインによると、魔力に反応して色が変わるらしい。
「……集中して、集中して……」
手を伸ばし、深呼吸して、ぐっと意識を込めて――
……ぼんっ!
「うわっ!?」
突然、石がまばゆく輝いた。
そして、色が……変わった。
「虹色に変わる石なんですか?すごく綺麗なんですね! 」
「えっ、ちょっと待ってユイさん! これ、普通は淡い水色とか紫に変わるんだけど……………………虹色とか聞いたことないよ!?」
セオが石をじっと見つめた。
「……まさかとは思ったが。お前の“潜在魔力”は……」
「え? 」
カインも合わせてこちらをまじまじとみる。
「よく分かんないけど、きっとすごい可能性があるんじゃないかな?次は魔力の属性の適性を見てみようか!」