神様登場、ようこそ異世界へ?
神様の声が頭に響く。
『前世のユイさん、かなりの過労状態で……魂がこの世界の“魔力の裂け目”に吸い込まれちゃったんですね。結果的に、魂がこの世界と共鳴して、自動的に転送されてしまった、という次第でして!』
「え……転送?」
『本来なら、事前説明とステータス画面、それに初期補助スキルをお送りする予定だったんですが……ほんとすみません、完全に手違いで……!』
私は口を開けたまま、ただ虚空を見つめた。
セオはまったくこちらを気にする様子もない。
『ということで! 今から“ステータス情報”と“現在地情報”をお送りしますね!』
ぼんっ、と目の前に光のウィンドウが現れる。淡い文字が浮かび上がる。
◆ステータスウィンドウ(ユイ専用)◆
名前:ユイ=エイル(江入 結衣)
種族:人間
称号:迷子(初心者)
現在地:アンダー層・最深区画
魔力:???
ステータス:???
封印突破資格:未所持
『あ、ちなみに、あなた、“上層特有の潜在魔力”を持ってまして! まだ発現してないですが!』
「なにそれ……」
『今後は“試練の門”を目指して、成長していくことで、その力が開放されていきます。この世界は三層構造――アンダー層、ミドル層、ハイヤー層。今いるのはアンダー層の最も深い地域です』
(ダンジョンみたい……)
『ドキドキな冒険してくださいね! では、また!』
……《通信終了》
ウィンドウはふっと光の粒になって消えた。
セオは変わらず、剣の手入れを続けていた。彼には神様の声は聞こえていないらしい。
(ほんとに……転生してたんだ、私)
私は石の壁に背中を預けて、ぽそっと呟いた。
「……っていうかさ……」
言葉がぽろぽろ出てくる。
「あのエクセル地獄、誰のためだったの……? 月末の会議資料、あれものすごく大変だったんだよ……?」
「私の人生………知らないうちに終わってたの!?」
「今月の残業代100時間分、全然もらってないよ……?」
プルニャンが胸元で「ぷるん」と鳴いた、ような気がした。
そのときだった。
ウィンドウの右上に、小さなアイコンが現れた。
【chappy_GPT - 転生者専用サポートAI】
(……は?)
試しに念じてみると、アイコンがくるりと回転し、ミニウィンドウが開いた。
《ユイ様、どんなこともお尋ねください♡ ドキドキ恋愛イベント・攻略対象の落とし方・ベッドシーンまでの道筋まで! ……あ、他のご質問ももちろん対応可能です。成長イベントはぜひクリアしてくださいませ。》
「乙女ゲームかッ!成長イベントってなんだろう。。?まあいいか。」
プルニャンが「ぷるん」と笑ったように揺れた。
(……いや、これ普通にすごくチートなのでは?)
このときの私はまだ、“成長イベント”の内容が、あんなにも際どい内容だとは知らなかったのだった……。