初めての出会いはスライムでした
……沈黙。
「はい出ませんでしたー! 夢じゃなくてガチ系異世界でしたーー!」
岩壁に背中を押しつけて、じわじわと現実を受け入れ始めたその時。
ずる……ずるるっ……
ぬめった音が、すぐ近くから聞こえた。
「っ……きた……!」
ごくりと喉を鳴らす。
暗がりの向こうから、青くぷるぷるした球体が、ぬるん……と出現した。
「うわ、スライムだ……!! 実物で初めて見た!!・・」
小さめのバスケットボールサイズくらいのぷるぷるしたスライムがこちらを見つめていた。
スライムはこっちを見た(ような気がした)かと思うと――ぺちん、と跳ねた。
「やだ、近い近い近い! お願い、私、添加物とストレスまみれだからおいしくないよ!?」
そのとき。
ぴたり、とスライムの動きが止まった。
(……え、通じた!?)
そして――
ぺち、ぺちっ。
二度跳ねた。
「……え、なにその反応……あいさつ!? 好意的なやつ!?」
恐る恐る手を伸ばすと、スライムはぷるんと身体を寄せてくる。
「……わ、やわらか……冷たい……」
不思議と、怖さはなかった。
むしろ――癒されている。
(こんな……異世界の最初の出会いがスライムって、なんか……)
――ガラララッ!
突然、岩の奥で石が崩れる音が響いた。
「ひっ……なに!? 地震!? またモンスター!?」
身をかがめて身構える。砂煙の向こうに、長身の影が浮かび上がる。
人……?
いや、違う。
黒のローブ。鋭い視線。フードの奥に光る金色の目。
「……そのスライムに話しかけたのか」
低く無機質な声が、空気を震わせた。
「え、あ、はい!? 誰ですかあなた!?」