ユイの魔力
「この辺に……あ、使えそうな石、あった!」
カインが地面をあさりながら、小さめの石をいくつか拾い集める。
「即席だけど、これで魔力の属性を測ってみようか。勇者学園では魔道具を使ったけど……こっちじゃ無理だから」
「えっ、測れるんですか? そんな石ころで……」
「うん、やり方をちょっと変えるけど――こうやって、僕と手をつないで」
「ふぇっ?」
「それで、石を挟むようにして……おでこ、ちょっとだけ、くっつけてもらっていい?」
「うっ、ふぇぇ、えっ、お、おでこ!?」
「うん、でも大丈夫。痛くないから」
満面の笑顔で言われ、
ぎこちなく手を伸ばして、カインと指先を重ねる。おでこを、そっと近づけて――
ぴたっ。
「っ……/////」
ユイの顔が、一瞬で真っ赤に染まる。
「よし、これで……いくよ?」
カインの手がかすかに震えた瞬間、挟んだ石がぱちぱちと輝き始めた。
そのとき――
額と額がぴたりと触れた。
びり、と微かな衝撃が背中を駆け抜け、
そのまま、じわりと全身に熱が広がっていく。
「……っ、ふ……ぁ……っ!」
思わず、喉の奥から熱っぽい声が漏れる。
身体の芯がかっと火照り、膝がわずかに震えた。
なにこれ……魔力を流されてるだけ、のはずだよね……?なんか……変な気分に……
「ユイさん……? だ、大丈夫……?」
カインの息がかかるほど近くて、呼吸が余計に乱れる。
(やだ……私、今、絶対変な声出た……!)
「……えっ!?」
「……あっ、えぇぇ!?」
ーーーカイン視点ーーーー
赤、青、緑、金、白、黒――そして、何色にも染まらず煌めく“透明な輝き”。
「……無属性……!? しかも全部持ち……」
僕は、呆然としながらも心の底から驚嘆していた。
(こんなの、伝承でしか見たことない……! 本物の勇者よりすごいかも……)
「ユイさん、君……本当にすごいよ。すごい才能だよ!」
「~~っ!! ちょ、ちょっと……! そういうの慣れてないんで、急に言われると……む、無理です!!」
ぶんぶんと手を振って距離を取るユイ。
カインは、思わず吹き出しそうになるのを必死でこらえた。
(……なんだろう、この人。不思議な子だな。)
(でも――ちょっと、いいなって……思っちゃったかも)