プロローグ
皆さま、お読みいただきありがとうございます!
新連載始めました。ぜひ楽しみいただければと思います。
アルポリはやや先行掲載中ですので、そちらもぜひチェックしてくださいませ!
アラサー社会人(社畜)として毎日激務をこなす江入 結衣は、何か違和感を感じて目を覚ました。
目が覚めた瞬間、まず最初に思ったのは――
(……ああ、また月曜か……)
だった。
だけど、すぐに違和感が襲ってきた。
背中が冷たい。いや、冷たすぎる。
布団とかベッドのぬくもりじゃない。これは――
「……ん、なにこれ……地面?」
手のひらをずらして触れてみる。ざらっとして、ひんやりしていて、固い。
「……っていうか、えっ、ちょ、まって!? 地面、冷たすぎない!?」
思わず跳ね起きた。その勢いで頭がぐらっと揺れる。
視界に映ったのは――
岩。天井も岩。壁も床も全部岩。しかも、どこまでもゴツゴツしてて、ほこりっぽくて、暗くて、なんかもうRPGのダンジョンそのまんま。
「……え、えええ? え? え? 地下……? 洞窟……? なにこれ、映画の撮影現場?」
とっさにスマホを探すけど、ない。そもそもポケットがない。代わりに指先に触れたのは、ざらついた布――
「……服が、いつものじゃない……」
くすんだマント。しわくちゃのチュニック。重めのブーツ。なにこの“ファンタジー村人スタイル”。
思わず立ち上がって、ぐるりとその場を見渡す。
(いやいやいや、これ、ちょっと……)
「私、仕事してて……デスクに突っ伏して……」
脳裏に浮かぶのは、ギリギリの納期、止まらないチャット通知、エナドリ3本目、壊れたコピー機への八つ当たり。
(それで……気づいたら、ここ?)
まさか――
「……死んだ……? いやいや、そんな。夢だよね? ちょっとした、悪夢系のやつ……」
心臓がどきどきしてる。でも、やけに感覚がリアルすぎる。
「もし本当に、これが“転生”ってやつなら……」
そうつぶやいた、そのとき。
ぬめ……
奥の闇から、聞きたくない系の音が響いた。
「……え、まってまって。モンスターってやつ? うそでしょ? まだ心の準備……」
ずるっ、ずるずるっ。
確実に、こっちに近づいてる気配。
私は本能的に背後の岩にぺたりと張りついた。
(まずい。武器もないし、スキルもないし……ていうか、職業なに? ステータス画面とか……出ないの!?)
「ステータス! ウィンドウオープン! メニュー! 神様ーっ!」
……沈黙。
「はい出ませんでしたー! 夢じゃなくてガチ系異世界でしたーー!」