4. 私の今の想い
ある日の昼休み、斎藤は会社近くのカフェで休憩を取っていた。
コーヒーを飲みながらぼんやりとしていると、ふと入り口から入ってくる真と麻衣の姿に気づいた。
「斎藤君もここにいたんだ!ちょっと混んでるみたいだから、ここ座ってもいい?」
「全然大丈夫ですよ!」
「ありがとう」
麻衣はさりげなく斎藤の隣の席を選んだ。
麻衣はこの前のレクリエーションイベントの話題を持ち出し、楽しそうに真に話し始めた。
「謎解きゲームを斎藤君と一緒にやったんだよね、楽しかった」
「へえ、そうなんだ」
真は微笑みながらも、どこか寂しそうな表情を浮かべていた。
「そうだ、今週末また3人でご飯行かない?」
「あ、いいね。空けとくね」
斎藤は真の表情に気づかずに、カレンダーアプリを操作し始めた。
「じゃあ僕、そろそろ休憩終わりなんで。お二人はまだ時間あるんですよね?」
「そう。まだゆっくりしてるから先行ってらっしゃい~」
「分かりました。お金だけ置いていきますね」
「別にいいのに、でもありがとう」
カフェには真と麻衣の2人だけが残った。
ふとした沈黙の中、麻衣が口を開く。
「真ってさ」
「ん?」
「斎藤君のことどう思ってるの?」
真は驚いて目を見開き、言葉を詰まらせた。
その様子を見て、麻衣は言葉を続けた。
「実はね、私、斎藤君の事気になってて」
「…えっ」
「真にその気がないなら、私のことを応援してほしいなって思ってるんだけど、どうかな。週末のご飯の後、自分の想いを伝えようかなって」
真は戸惑い、うつむいた頭を動かすことができなかった。
その日の夜、帰ろうと会社を出ると、彰が真を待っていた。
「あ、真。ごめんね、時間取らせて」
「大丈夫、全然忙しくないから」
「真に伝えたいことがあって。ちょっといい?」
「うん…?」
3人でご飯の約束をした日がやってきた。
仕事終わりに斎藤と真は準備を整え、麻衣のいるフロアに向かおうとしたところで、真のスマホにLINEが届いた。
「ちょっと待ってて」
メッセージを確認した真は、一人で麻衣のところへ向かっていった。
少しして真が戻ってきた。
「麻衣が、今日は忙しいから2人で行ってきな、だって」
「そうなんですか。待ちますか?」
「あ、えと、結構時間かかるみたいだったし、3人ならすぐリスケできるから今日は2人で行こう」
「そうですね、行きましょうか」
平然とした態度を取っているつもりだが、内心緊張でいっぱいいっぱいだった。