2. 僕の方が先に!
次の会議の日がやってきた。
今回も真のことを考えて電車で彰の会社へと向かった。
「おはようございます。会議室行きましょうか」
彰と真の後ろに付き、2人の会話を聞いていた。
「そういえば、この前のお店良かったよね」
「そうだ、すごい美味しかったよね。あの後調べたら妊婦の方向けのメニューもあるみたいで、今度あおいとも行きたいなって思ってるんだよね」
「それいいね!」
どうやら自分の知らない間に食事まで行ったみたいだった。
心の中のもやもやがどんどん溜まっていくのが分かった。
自分たちの会社への帰り道、真は機嫌がよさそうだった。
「やっぱり、知ってる人がいるとやりやすいですよね。順調に進んでよかった」
楽しそうに話す彼女を見て、つい感情が口から出てしまう。
「楽しそうなのは良いんですが、仕事なんだからあまり余計な話しないでください」
「あ、ご、ごめんね…」
「…あ、いえ、言いすぎました。本当にすみません」
申し訳なさそうに謝る真の姿を見て、強く言いすぎたとすぐに後悔したが、雰囲気は重いままだった。
数日後、こちらの会社で彰と一緒に小さなプレゼンを行うことになった。
プレゼンは大成功し、社員たちは中心で動いていた真と彰を称賛した。
プレゼン終了後、彰は斎藤に歩み寄ってきた。
「お疲れさまでした、斎藤君にはとても助けられました」
「いえいえ、高野さんのおかげです」
「ところで、真と斎藤君って、もしかして、そういう関係だったりする?」
「…え!?いや、違いますけど…」
「そうなんだ、てっきりそうなのかと。ごめんね、失礼しました!」
彰はそう言ってニコニコしながら真の方へと歩いて行った。
彰と真の姿を遠くから見ることに限界を感じ、何も言わずその場を離れた。
自分の仕事を終え、荷物をまとめていると、偶然真と帰るタイミングが重なった。
目的の駅も同じなので、そのまま2人で歩くことになった。
「色々、ごめんなさい。あんまり仕事に集中できてなくて、迷惑かけました」
「ううん、大丈夫。あの事件から仕事に不安があって、その中で久しぶりの大きな仕事が彰とだったから気が緩んでしまってました」
斎藤は一瞬胸が痛んだ。
「天野さんがストレスを感じていないのなら、それでいいです」
「ありがとう」
真は斎藤をじっと見つめた。
「ちょっとまだ自分の気持ちの整理がつかなくて。…今度、告白の返事返すから」
少し恥ずかしそうに言う真に、斎藤は心を奪われた。