行き詰まった小説家の最終手段
私は小説家としてデビューして五年になるが、
最近行き詰まっているのだ。
とにかく何も浮かばない、ネタがない、頭の中がスッカラカンなのだ。
しかし、雑誌に毎月掲載される短編の締め切り日が近づいている。
困った、どうしよう、いっそうの事熊みたいに洞穴に入って冬眠するか?
それとも、狸になって狸寝入りするか?
それとも、荷物をまとめて夜逃げするか?
いやいや、そんな事したら小説家としての人生が終わってしまう。
あの怖い鬼のような編集者の足音が近づいて来る幻聴が聞こえて来る。もう末期症状MAXだ。
私は頭を抱えて悩んだ、寝るまも惜しんで悩んだ。そして、悩んだ挙げ句今思った事をそのまま全て書いた。
そして、編集者が来たのでそのまま原稿を渡したら、原稿を呼んだ編集者が渋い顔で言った。
「怖い鬼のような編集者じゃなく、優しい聖母マリア様のような編集者に直して下さい」と。
私は心の中で嘘は書きたくないと思ったが、
鬼のように睨んで来たので渋々直して原稿を渡した。
すると、編集者はニッコリ笑って満足して帰って行った。
間に合って良かったが何か釈然としない一日だった。