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三題噺もどき3

帰宅後

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくななじゅうろく。

 


 窓を叩く音が聞こえた。


 自室のベッドで横になり、グダグダとしていた。

 時刻はもう夕方過ぎという所だろうか。今日は一日曇りだったので外の明るさからは時間の感覚は得られない。そろそろ晴れ間をのぞかせて欲しいものだ。

「……」

 そういえばさっきの音は何だろうと思ったが。

 ぽつぽつと雨が降り始めたようだ。ホントに天気が安定しない。おかげで気分も体調も安定しない……そんなことはないのか。

 それを口に出していってみれば母から文句が飛んでくる。私の方が疲れてるわって。

「……」

 殆ど一日中母に連れまわされて、数時間前に帰宅した。

 妹たちは部活があったり学校の用事があったりで、まだ帰ってきていない。

 でもそろそろ帰宅の時間ではある。

「……」

 そういえば、今朝はそれぞれ自転車で行っていたけど、帰りは大丈夫だろうか。

 まぁ、この感じだとそこまで降ることもないだろう。ずぶ濡れになるまでの雨が降る感じでもなさそうだし。最悪母がいるから連絡が来れば勝手に迎えに行くだろう。

「……」

 私は大人しく部屋でグダグダとしているさ。

 風呂もすでに済ませたし、あとは妹たちが帰ってきて風呂に入ってから、夕食に呼ばれるはずだ。父はもう帰ってきていた。丁度入れ違いになったのか、父の車はなかったのでまたパチンコにでも行っているんだろう。

「……」

 しかし、今日はいつも以上に疲れたな。

 母の愚痴を聞くのも相手をするのも慣れたもののはずなんだけど。

 どうにも疲れて仕方ない。いつもならもっと気力も若干残っていたりするのに。

「……」

 まぁ、会話が母の愚痴だけじゃなくて。

 私の今後のことについての話もしたりしたから、必要以上に削られた感があるにはある。

 母ではあるが、私ではない以上他人である。その他人と会話をするには、色々と演じる必要があるわけで。

「……」

 いやまぁ、家族ではあるから表面を取り繕う必要もないんだろうけど。

 いうて、他人ではあるし。他人だと認識してしまっていると、無意識に、当然のように演じてしまう癖があるものだから、そのあたりはどうにもならない。そうでなくても、外出先で話している以上内にある何かがこぼれてはいけないと思ってしまうので、演じないといけなくなるだろう。何もかもさらけ出すわけにはいかない。誰が聞いているかも分からないのに。せめて車内とかならよかったけど、飲食店で話し出すから……。

「……」

 なんといか。

 何年私の親をしているんだろうと言う感じなんだが……。

 私は、自分のことを話すのがとても苦手なのだ。

「……」

 問われても、問われなくても。

 自分の考えとか、思いとか、そういうのを口に出すのが大の苦手で。

 なぜだか知らないが、そういうことをしようとすると、喉がしまって頭が真っ白になって目の奥が熱くなるのだ。

「……」

 それで言葉に詰まっても待ってくれれば……まぁそれでも無理なものは無理なんだけど。

 そこで待たずに詰められると余計に言葉が出なくなってくる。

 ……そんな状態になるのを、外出先で、誰が見て誰が聞いているとも分からない場所で、良しとするわけがないだろう。

「……」

 人前で泣くのが、恥ずかしいのは誰でもそうだと思うんだけど。

 以前私は、自分のことを話そうとするとそうなるんだと言ったはずなんだけど。

 聞いていなかったのか関係ないと思ったのか嘘だと思ったのか知らないが。

「……」

 ほんと、私に対する興味がないというか、関心がないと言うか。

 まぁ、いい年した、いわゆる大人に分類されるような人間が甘えたことを言うんじゃないと言いたいんだろうけど。私なんて、年だけ重ねた中身も何も成長していない愚か者なんだから。そう育てたのは誰だろうな。

 ……そんな言い訳聞きたくないってさ。全部自分が招いた結果だってさ。

「……」

 知ってるさそんなもの。

 何もかも周りに流され続けて生きてきた結果だって。

 だけどそうでも言い訳してないと、今までのすべてが無駄に思えて。

「……」

 今ここに居る意味が分からなくなる。










 お題:ぽつぽつ・ずぶ濡れになる・演じる

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