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第98話 ギルド長との話

 鍛冶ギルドでは2年前と同じ応接室に通された。以前と変わらず、剣や鎧と言った武具とともに包丁など生活に使うものも陳列されている。

 すぐにギルド長はやってきた。

「お待たせいたしまして申し訳ありません、聖女様」

「いえ、お忙しい中お時間をいただきありがとうございます」

「ふたたびお目にかかれ、光栄です」

「前回は任務上身分を隠しており、失礼いたしました」

「とんでもないです」

「申し訳ありませんが、お人払いいただけますか」

「承知しました」

 ギルド長が合図すると、ギルドの人達がすっといなくなった。部屋の中はギルド側の人はギルド長のフーゴーさんただ一人、あとは親衛隊を含め私の側の人間ばかりになった。親衛隊は武装しており、ちょっと気の毒である。

 しかも私の親衛隊はお飾りではない。私も含め実戦経験があるのだ。


 威嚇しているわけではないので、さっさと話を始めることにした。

「フーゴー様、ご紹介します。こちらはステファン第二王子殿下です」

「し、失礼いたしました」

 フーゴーさんはあわてて立ち上がろうとした。

 ステファンは、

「お忍びで来ているので申し訳ありません、どうかそのまま」

 と詫びた。

「は、はあ。聖女様、お人が悪いです。聖女様と直接お話しているだけでも緊張するのに、殿下までいらっしゃるとは」

「すみません。殿下であることを隠しておかないと、警備が倍以上になりますので」

「それもそうですね」

「それで今回のお話ですが、フーゴー様は錬金術をなさってますね」

 そこでフーゴーさんはちらっとステファンの方を見た。ステファンは、小さく頷いた。

「それで殿下がご同行されたのですね」

「そう言うことです。私は陛下のご許可を得て、こちらに参っております」

「なるほど、で、ご用向きは何でしょう」

「純粋な金属がほしいのです。それもなるべく多くの種類を」

「純粋な金属ですか」

「そうです。たとえば青銅ですが、いくつかの金属が混ざってできていることを私は承知しております。真鍮もそうです。鉄もまた、用途に応じていろいろと混ぜていることも知っております。自然界では、純粋な状態で存在する金属など、金くらいでしょうか。合金ではなく、純粋な状態でほしいのです」

 フーゴーさんは、その知識をどこで、と言う顔をしている。しかしそれを聞かないだけの分別はあった。まあ聞かれても「聖女の秘密」としてごまかすが。

「わかりました。それで、どれくらいの量が必要でしょうか」

「最初はひとかたまりくらいでいいのですが、研究の結果、特定の金属に大量の需要が出る可能性があります」

「わかりました。今ここでお渡しするわけにもいかないので、後日お送りします。送り先は聖女室でよろしいですか?」

「いえ、第三騎士団につめていることが多いので」

「失礼しました、そうでしたね」

「お手数おかけします。で、代金ですが……」

 それから各種条件などについて話し合った。金額はまあ、それなりのものになった。


 話し合いが終わったところで席を立とうとしたとき、フーゴーさんに注意された。

「あの、聖女様、このままお帰りになるとこちらにいらした理由が無くなってしまいますが」

「あ」

 なんにも考えていなかった。横ではステファンが笑いをこらえている。フローラとネリスは呆れている。みんな当然、私がなんか考えていてしかるべきだったと言う顔をしている。

 いや、ちょっと待て。コイツラには私をフォローする職務があるのではなかろうか。

 ギロッとまわりを見回す私を見て、フーゴーさんは笑い出した。

「聖女様は、大変失礼ながら面白いお方ですね」

「そうなんです、一緒にいると飽きないんです」

 ステファンはなんか和んでいる。

「そうですか、そういう方がご伴侶としてはいちばんですね」

 フーゴーさんはさすが国家機密の錬金術師だけあって、素晴らしい人である。


「聖女様、お話すすめないと」

 脳内お花畑になっていた私を注意したのは、フローラだった。

「そ、そうですね」

 返事はしたものの、ノープランの私の脳はまだ立て直せていなかった。

「それでは聖女様、懐剣とかを新調されてはいかがですか」

「懐剣ですか」

「聖女様ご自身がお使いになるものでも、どなたかに贈られるのでもいいのではないでしょうか」

 するとステファンが、

「そうだ、ヴェローニカ殿に贈るのはどうだ?」

と言った。

「あ、それ、いい。さすがステファン」

「ははは、それよりあまり長時間フーゴーさんを拘束したらまずいよ。デザインとか考えようよ」

「聖女様、一昨年こちらにいらしたときは、ヴェローニカ様の剣を注文されたのですよね」

「そうです」

「でしたらまた、そちらの工房に行かれたらどうですか。特注品をお作りになったのですから、ヴェローニカ様のお好みとか、お手の大きさとか、熟知しているはずですから」

「なるほど、仰るとおりですね。そちらに伺います」


 ネッセタール訪問の目的は、果たすことができた。だが、私にはまだ、ネッセタールでやっておきたいことがあった。

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