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第35話 騎士団長代理

 武官長、第一騎士団長、第二騎士団長との面会にOKを出すと、なんとお三方はすでに到着していた。会議室でお待ちだという。そのまま会議室を使って話をすることにした。フローラたちには、

「もとの予定の仕事たいへんでしょ、武官長様たちとはとりあえず私一人で話聞く。やばい話だったら呼ぶ」

と言っておいた。


 実は私は、緊急にこの三人に話をしたかったのである。ただ話の内容が問題で、フローラたちに聞かれたら思いっきりブレーキをかけられそうな気がしていたのだ。


 会議室では、聞いていた通り武官長様たちが待っていた。お茶菓子が並んでいるところをみると、結構待たせてしまったようだ。私が入室すると、つきそいの参謀たちが追っ払われた。私も同行していた親衛隊のメンバーに廊下で待ってもらう。

 ドアを閉め4人になると、なんだかみんな緊張している。

「お忙しいところお越しいただいたうえお待たせして申し訳ありません」

 私から切り出すと、武官長様は、

「いえ、お忙しいスケジュールに割り込ませていただき、感謝致します」

とかしこまっている。さらに3人はお互いに目を合わせ、話を始めるのを譲り合うと言うか押し付け合っている。しかたがないので、私から用件を切り出した。

「皆様、私の方からいいでしょうか」

 3人はなんだかホッとしたような顔をしている。

「私が伺いたいのは、第三騎士団についてです」

 3人はギクッとした顔になった。

「第三騎士団長の任を、一時的にだれかに代行してもらえないか、と私は考えています」

 武官長様が質問してきた。

「どういうことでしょうか」


「皆様、ヴェローニカ様のお年をご存知でしょうか」

「「「はい」」」

「ヴェローニカ様は任務に忠実であると同時に、私にもいろいろとお力をお貸しいただいております。私はヴェローニカ様のご厚意に甘えすぎました」

 私は話を続ける。

「私は回りくどい話が苦手ですから、直截に申し上げます。私はヴェローニカ様には、ミハエル殿下となるべく早くご結婚いただきたいのです」

 武官長様は、ホッとしたように言った。

「実は私達の話も、そのことです。大変失礼ながら、聖女様はこのお話に反対なされるのではないかと思っておりました」

「私の不明をお詫び致します。今回ヘルムスベルクで王子殿下とヴェローニカ様のご様子を拝見して、私がまちがっていたと悟りました」

「では、聖女様は殿下のご成婚に賛成なのですね」

「はい、賛成というよりできる限り急ぐ必要があると考えます」

「それはまた何故でしょうか」

「最初のお話しに戻りますが、ヴェローニカ様のお年です。お年から考えて、なるべく早くお子様をお作りになるべきだと思います。ですから、子育てが終わるまで、ヴェローニカ様を第三騎士団団長の任から一時的に退いていただきたいのです。その間のお力添えを、皆様にお願いしたいのです」


 私としては、ヴェローニカ様にはとっととお子さんを少なくとも二人、できれば三人くらい作っていただきたい。女としてそれが簡単なことだとは思えないから、申し訳ないが一旦ヴェローニカ様を騎士団から切り離したいのだ。初期の子育てが終わった段階で騎士団に復帰していただき、ミハエル殿下がご即位されるまでは第三騎士団を率いてもらいたい。


 そのあたりを説明していたら、第三騎士団長のジークフリート様がしみじみとおっしゃった。

「やはり女性のお考えはちがいますね。私はそこまで考えが至りませんでした」


 最終的に武官長様がしめくくった。

「では聖女様は、ミハエル殿下とヴェローニカ殿のご成婚に賛成ということでよろしいですね」

「ちがいます、ご成婚を最大限早くすすめるべきだという意見です」

「承知いたしました。それでヴェローニカ殿が不在の間、聖女様は我々からどのような支援をご希望でしょうか」

「これはここだけの話にしていただきたいのですが、第三騎士団では次期騎士団長の候補が見当たらない気がするのです。副官のソニアや参謀たち、親衛隊のレギーナたちは優秀です。でもそれはスタッフとして優秀ということで、トップに立つものとしての訓練が遅れているように思えます」

「なるほど、それは我々もいつも悩んでいるところです。ですが私見ですが、臨時騎士団長ということであれば、第三騎士団はご心配には及ばないと思います。なあ、ダミアン殿、ジークフリート殿」

 するとダミアン第二騎士団長が発言した。

「そうですね、第三騎士団には団員からの絶対の信頼があり、実績もあり、指導力・決断力がある。そんな方がいらっしゃるじゃないですか」

 だからその人が思いつかないから困っているのだ。

 困っていると、ダミアン様が笑いながら言葉を継いだ。

「聖女様、あなたですよ」

 他の二人も笑い始めた。

「私のような子供では無理でないですか? 実績も決断力もありませんよ」

 笑いを収めないまま、ダミアン様は続ける。

「何を仰っているんですか、ヘルムスベルク防衛戦、城壁で先頭にお立ちになったお話、知らない国民はおりませんよ」

 まあ、それは勢いだ。ジークフリート様も言う。

「国王陛下の御前で、涙ながらに戦死者の報告をされたの、騎士団の者たちはみな感謝しているんです。さらに貴族たちの増援遅れについて非難されたのもです」

 それも勢いだ。

 マティアス武官長様は、姿勢を正しておっしゃった。

「聖女様は体を張って先頭に立つ気概をお持ちであると同時に、政治的にも戦うこともなさる。聖女様でなければ、まちがいなく次期第三騎士団団長候補、いや武官長候補ですよ」

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