てのひら
りょうほうは、むずかしいかと。
欲しいものをつかむ右手と
好きなあなたと繋ぐ左手の
てのひらのおおきさはちがうんだって
あたしはおもいしらされた
握力もないくせに おとなの指をはやした
右のてのひらばかりおおきくしてきたけど
こどもの指のくせして わりとつかむちからの強い
左のてのひらは いまもこんなにちいさい
もしも 左の手のひらにはえてるぶんまで
おとなの指だったなら
ちいさなてのひらにおさまらないのを
ちゃんとわかってたあたしは
ききわけよく あなたから手をはなしたことだろう
それって すごくかなしいことだとおもうけど
だからといって てのひらにおさまらないのを承知で
あなたから 手をはなせずにいるのも
なんだか さびしいもんだよね
あたしったら ばか
なんで ちゃんとりょうほうのてのひらを
おなじように おおきくしてこなかったんだ
左のてのひらばかりおおきくして
好きなひとと手を繋いだまま
ちいさなままの右のてのひらで
欲しいものをつかみきれないどこかのだれかと
にらみあって うらやましがりっこしてるのも
あんまり 楽しいことでもないや
右手に欲しいものをしっかりつかんで
左手に好きなあなたと手を繋いで歩けたら
そりゃあ 幸せだろうけど
りょうほうのてのひらを
おなじように おおきくできるほど
器用なあたしじゃないことも
とっくに あきらめがついてる
だから あたしは
欲しいものを右手につかんだまま
好きなあなたから そっと左手をはなす
どこかのだれかも
好きなひとと左手を繋いだまま
欲しいものから そっと右手をはなすことだろう
そのあとに
べつに楽しくはないけど
あたしと どこかのだれかは
またにらみあって うらやましがりっこをする
やっぱり 楽しいことでもないけど
そんなやりかたもあったんだって
忘れないためには 意外とだいじなこと
そしたら うらやまがりっこにあきたころ
ふたりして くるりとせなかをむけあって
ちがうおおきさをした りょうほうのてのひら
そこにおさまったものを
ちゃんと愛していかなきゃなって
そう おもえるんだろうから
あたしや どこかのだれかの
ちがうおおきさをした りょうほうのてのひら
それもちゃんと愛してやれたらなって
そう おもえるんだろうから
かたほうだけでもつかめたら、しあわせなのでしょう。