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 老いた荷馬車に揺られ、無辜の罪人達は処刑台へひた走る。若い女、幼い子供、壮年の男、壮年の女。石を投げられる中、諦めた者、泣き喚く者、今まで首を刎ねられた者たちにも見られた様相だ。

 ただ一人、ボロ布のような修道服を纏った修道女だけが、怒りなのか、怨みなのか、はたまたこれから戦に臨むような、今まで見てきた罪人達とは違う表情を見せている。

 罪人の彼女を見て、群衆の一部からは泣いて処刑に異議を唱える者も居る。それ程、彼女は慈愛に満ちた修道女だったのだろう。



「降りなさい。」



 馬車がとうとう、処刑広場へと着く。

 処刑台の傍らでは、司教達が罪人の死後の安寧を願い、聖火を焚いて、ひたすらに祈りを捧げている。

 先ずは、若く泣き喚く女が、領地の財産を浪費した罪で首切り台に登った。首が飛ぶその瞬間まで、女は浪費する程の財産などないと、声の限りに叫んだ。実際、この女ードルチェグスト男爵夫人ーの領地は、高々知れており、貴族有罪の憂き目を辿ったことは明らかだ。

 続いて、幼い子供が泣き、震え、動けないためか、執行人に抱えられて処刑台に登った。群衆も幼い子供の処刑には、流石に堪え、静まり返る。首が落とされる寸前、彼が母親を呼ぶのを、何人が聞き取れただろうか。

 更に処刑は続く。あの、何とも言い難い目をした修道女の番が巡ってきた。処刑台に登る際、執行人の足を、修道女は踏んだ。



「ごめんなさい。わざとではないのよ。」


「…お気になさらず。」



 冷血な処刑人が微笑み、彼女を処刑台までエスコートした。

 断頭台へ修道女の首が置かれた。司教達の祈りが、より一層強く、大きく、広場へと響き渡った。



「執行せよ!」



 罪状も読み上げられる事なく、刃が落ちる。



「私の願いを聞け」



 刃が落ちると同時に修道女が呟くのと、司祭の一人が聖火へ何かを投げ入れたのは同時だった。



『 ᛋᛟᚾᛟᚾᛖᚵᚪᛁ  ᚴᛁᚴᛁᛏᛟᛞᛟᚴᛖᛏᚪᚱᛁ 』



 広間に響き渡ったのは言葉か、はたまた雷鳴か。それを知るものは、どこにもいない。


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