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第3話 留学生③





 突如、彗星の如く現れた、超絶美少女留学生、サニーサ・コーラ。


 いえ、冗談です。言ってみただけ‥‥‥‥。



 男性の存在が強い、僕らの国。

 その中でアマリア村という外地からやってきた、男子にも物怖じしないキャラの女子。


 初日早々のトラブルで、「こりゃ一年先が思いやられるな‥‥」なんて思ってたんだけど。




「ボール回せ! 行ったぞコーラ!」

「アタシに任せろっての!」

「ナイスアシスト!」

「ナイス!」

「やるなコーラ!」


「へへ~ん! だから任せろって言ったじゃん」


 男子に混じってのサッカー。みなと市は昔からサッカー盛んだからな。隣のれんげ市が「元祖サッカーの町」だからなんだけど。

 地元の中高生男子に時間と場所を与えたら、サッカーやりだす率98%説。ちなみにボールはちゃんとしたサッカーボールじゃなくていい。ガチャポンの空きケースでも石でも、なんでも成立させてしまうよ。


 コーラが来てから一週間。


 そんな事情のみなと市で、コーラは男子に溶け込んでいた。もともと男っぽい性格だし、身体能力やセンスは軍のお墨付きだしね。


 僕ら男子としても、男子並みに戦力になって女子みたいに気を使わなくていい――でもよく見れば健康的で華もある――コーラは面白い人材だった。そして


「「コーラさ~~ん!!」」


 いつの間にか女子の応援団もできてた。そうそう。女子って「ボーイッシュな女子に憧れる」が一定の需要があるんだよね。愛依情報だけど。



 女子の中でも小柄な体格なのに、男子に当たり負けしない。反射神経や体幹、瞬発力はトップクラス。さらに勝負への執念。


「コーラサッカー部来いよ~」

「いやいやパイロットだしね。学生の球蹴りには構っていられないのだよ」

「あ? 言ったなコイツ!」

「おっと言っとくけどアタシ。サッカーより格闘術のほうが得意だかんね?」

「マジかよ? じゃ勝負だ」

「おうさ。アマリア女子なめんなよ?」



 そうだった。コーラはこれでも「元・武娘(たけいらつめ)候補生」。戦火の絶えないアマリア村。女性しかいない「女耳村(じょじそん)」で女性だけで軍人として戦っていて、しかもドーピング兵士である武娘(たけいらつめ)になる寸前だったんだ。


 軍隊格闘術なんて、物心ついた時からやってたらしいからね。スポーツとかじゃなく、ガチでの生死のやりとりを想定したヤツで。



 悪態をつきながら、周りの男子の腹をボコボコ殴るコーラ。一方で男子も、頭や背中くらいなら平気ではたいている。そっか。サジタウイルスで男子が減っておかしくなってしまったけど、50年前。ビフォーアサジタ世代じゃあ当たり前の光景だったそうだよね。


「一婚懸命」、「結婚難民」なんて言葉があるくらい、この国は女性が余ってしまっている。だから女子は男子に嫌われないように必死だ。萎縮したり遠慮するのが通常(デフォ)


「いててて! くそっ!」

「そりゃそうさ。これは武娘(たけいらつめ)にならないか弱い女子が、大男から身を守る武技なんだから」


 ちょうどその瞬間を見ていた。ふざけて(でもけっこうマジで)身長180センチはあるバスケ部のヤツが、コーラの肩と二の腕を掴みにきた。

 コーラの身長は愛依と同じくらい、‥‥だから155センチくらいか。


 その腕を一瞬で躱すと、相手の左腕に組み付いていた。男の手のひら(たぶん小指と親指をグーで掴んで、足を蹴り上げて逆上がりの要領で相手の腕の付け根に足を絡める。

 当然、男のほうは左前にのめって倒れて。


 着地と同時にコーラは、そのまま手を取りながら後ろ手に極めて、さらに背後から相手の首も裸締めをする。

 なんのことはない。「ふれあい体験乗艦」中に僕がコーラに何度もやられた組技だ。紘国柔術でいう「組み付き腕十字」に近い、らしい。



 バスケ部のスタメンの親指と首根っこを掴み、組み伏せたコーラが見えた。小鹿のように跳ねてたな。運動部の男子が取り囲んでやあやあ言い、少し離れて目を丸くした女子達が、こっそり拍手喝采をしているよ。


 こんなお国事情だからコーラのキャラは新鮮なんだよな。嫌味も無いし。



 あ、ちなみにこの技は。


 ①手を取った時に相手の親指小指をへし折る。

 ②組み付いた時に相手の左ひじを折る。

 ③肩に絡んだ足で、相手の前歯を狙ってかかとを振り下ろす。

 ④同じく、反対の足で延髄を蹴る。

 ⑤腕を固めて動けない方向から、首の中心に蹴りを入れる。


 などなど。実に豊富なバリエーションがあるそうだ。


 今、わが校のバスケ部スタメンの、指や延髄が無事なのを確認してほっとしたところだよ。はは。


「お? 暖斗くん。キミもこのオトコのようになりたいか?」


 は? オマエがやりすぎてないか、バスケ部エースの無事を確認しに首を出しただけだけど。


「うるさいな」


「素直じゃないなぁ。久しぶりに格闘術やるか? ラポルトの武道場以来に」

「あ~~。僕もうパイロットとかじゃないんで。柔術部とかと遊んでやれよ?」


「そんなこと言って。アタシに近づいて来たってことは、あっという間にこの高校の人気者になってしまったアタシが、どうにも気になってしまったと?」

「それ自分で言うか? だいたい何だよ? みなと市学生との交流は週二日だろ? 何で毎日こっちの高校に来てんだよ?」



「うぐっ‥‥‥‥はっはっは。昔のよしみで、特別に稽古をつけてやってもいいぞ。ほれ。あの時はお互いいい汗をかきながら、何度もカラダを重ねあったじゃないか」

「図星だな。苦し紛れの自爆攻撃ヤメロ。僕を巻き込むなよ?」


「いやいや暖斗くん。あの時のキミときたら、アタシに手も足も‥‥‥‥あれ? ‥‥‥‥暖斗くん!?」



 なんかまたコーラが暴走しだしたので、さっさとこの場を去ることにした。



 なんかさ。

「クラスで知り合いなのは僕だけだし、気にかけとくか?」なんて殊勝に考えてた時間が懐かしい。それくらいコーラは、一昨日より昨日、昨日より今日、という感じで僕らの高校に馴染んでいった。


 ハイテンションなコーラを中心にした、にぎやかな人だかりの円。そこを離れて教室の席に着くと、不意に愛依の言葉を思い出した。


「でもね、コーラさんが留学先をみなと中央高校にしたのは――――」




「ぼ~~~っとして! キミも少しは運動したらどうだね!」





 いつの間にかコーラが隣の席に戻ってきていて。綺麗に光る白い歯を見せていた。






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