表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/34

第4話 逢初愛依、宵闇に覚醒す③





「なんか雲行き怪しくなってきた。『コーラの話聞かせて欲しい』って言ったからしただけじゃん?」


「む~~っ」


「愛依なんで怒ってるの?」


「怒ってないもん」


「あ、いや、そうか。コーラの話題止めよう! えっと他に話題を‥‥」


「じゃ、泉さん」


「ああ。泉さん? えっと泉さんね。コーラが暴れた時に援軍で来てもらったなあ。的確に振る舞って場を落ち着かせてくれたよ。彼女コーラには貸しがあるし。‥‥‥相かわらず大人っぽいよ。『初対面で先生が敬語使った』とか『名前の花音を称した通貨を創造した』とか、都市伝説が生まれてる。いつも落ち着いてて上品なのは、さすがお嬢様だよね」


「‥‥‥‥庶民の娘ですみません」


「うお?」


「素敵なレディよね。泉さん。ラポルトの時も出しゃばらずに操舵手に専念してくれてた。あの人聡明だからもっと活躍できたはずなのに。影のMVP。自分の役割をわきまえて全体を生かす、ってそんな人中学生じゃまず無理だわ。べびたんの近くにそんな素晴らしい女性(ひと)がいるのね‥‥」


「‥‥次の話題行こか!」


「じゃあ、姫の沢さん。わたしがべびたんとこうなって一番影響受けた人。でも高校同じになった人」


「ひめちゃん? また同じ展開になるだけじゃあ?」


「だって。教えてくれたらわかるもん。知らない方が不安だよ?」


「そう? ホントに? ‥‥えっとじゃあ、ひめちゃん。コーラが騒ぎを起こした時に呼んだ援軍その2。バッチリだったね。ひめちゃんが来るとみんなそっちに気を取られるからさ。芸能人オーラ! 附属中3人娘もビックリの僕の作戦勝ち! あいかわらず手足が長いし僕より背が高いよ。あ、これ禁句だった。ひめちゃん的には僕より背が高いのはイヤなんだって」


「それはべびたんが昔『僕のお嫁さんになる人は僕より背が低い人がいいなあ』って言ったからでしょ?」


「え? そうなの?」


「麻妃ちゃんに聞いたよ?」


「小学生の頃だよな? そんな事言ったかなあ。‥‥でも言ったとしても今はあまり気にしてないし。別に僕より背が高くてもね。あはは」


「‥‥‥中肉中背のぷにぷに娘ですみませんね」


「‥‥ヨシ次の話題行こ! 次! 桃山さん。実は僕に来る質問で一番多いのは、実は彼女なんだ。ほら、『さいはて中』だったから中学時代を知る男子がいないんだよ。だからって僕に訊かれてもなんだけど」


「彼女もあいかわらず、なのね?」


「そうなんだ。僕の周りの(ヤツ)も『清楚でカワイイのはもちろんだけど、色々気づかいしてくれるから』とか『あのにっこり笑顔がいい』とか『気立てがいい。恋人というより嫁候補』とか。いつの間にかみんなと知り合いだし」


「相かわらずのコミュ力お化け、なのね」


「そうだねえ。別の(ヤツ)が言ってたんだけど『姫の沢は手の届かない高嶺の花、お姫様で、桃山はだんご屋のお花ちゃん』だって。言い当て妙だね。確かにそんな感じだ」


「コミュ障の元陰キャで‥‥すみません」




「んん? 泣いてるの? 愛依?」


「泣いてない」


「でも目に涙が」


「だって。中央高校のお話聞いて安心しようと思ったのに、どんどん不安になるんだんもん。やっぱわたしも中央行けば良かった」


「え? それはしょうがないじゃん」


「でもべびたんのまわりには素敵な女の子ばっかり。サバサバ健康美のコーラさん。大人お嬢の泉さん。幼馴染でモデルの姫の沢さん。コミュ力最強町娘の桃山さん。‥‥‥‥他にもいっぱいいるんでしょう?」


「いないよ! ‥‥ってか、いたとしても全部僕と絡む訳ないじゃん?」


「でもべびたん、救国の英雄だし撃墜王だし名誉騎士様だし実は爵位あるし‥‥」


「うわあ。爵位の件は秘密だよう!」



「ごめんなさい。‥‥‥でも、まわりの女の子がほっとかないよきっと? ‥‥‥‥ぐすん」



「しまった。そうだった。愛依はこう見えて自己評価ものっすごい低い人だった‥‥!」


「‥‥‥‥そうよ? 中一の一学期まで陰キャだったんだから。まわりに良い人ばっかりだと不安になってきちゃうよ。‥‥う‥‥う‥‥」


「愛依」


「ぐす。婚約破棄とかだってありえるよね? 『逢初愛依、君との婚約を破棄する!』」


婚前同居(コハビ)は婚約なんかより効力強いよ。そんな小説読みすぎだよ?」


「ぐすん」


「なんかさあ。他の女子褒めると愛依にダメージ入るんだね? これ愛依の弱点だ‥‥」


「自分に自信が全然持てないの。わたしはそもそも無価値なの」


「それは『婚前同居の調印取得(キャトル・エピス)』で克服したんじゃ!?」


「それはがんばったけど‥‥」


「そんな人間急に変われないかぁ。‥‥まあそうか。‥‥僕だってそうだ」


「ぐすん。せっかくべびたんが腕まくらしてくれて、お腹ぽかぽかしてくれてるのに。さっきはこの部屋を残してこの惑星(ほし)が爆発してもいいって思ってたくらいなのに」


「何それ!? まさか56億7000万年漂流するヤツ!?」


「む~~っ。寝れない‥‥かなしい‥‥」


「一体どうすれば‥‥‥‥‥‥?」




「‥‥‥‥!!」




「愛依?」


「‥‥‥‥‥‥これからわたしがやること、べびたんは受け止めてくれる?」


「何だろ? いいけど?」


「どうしてもしたいの」


「『したい』事? えええ!?」


「べびたんが他の女の子の事褒めるの聞いたら、したくなっちゃったの」


「‥‥え? ‥‥まさか? ‥‥婚前同居(コハビ)ルール破るのは!?」


「いくよ? いい? だめ?」


「‥‥う。どうぞ」


「まずはわたしがべびたんの上の乗っかるね?」


「‥‥はい‥‥(愛依まさか???)」





「‥‥‥‥がぶ」



「わ!? 痛!? 痛い! いだだだだ!」



「うふふ。痛い? 反対側も。がぶ」



「いたた! 耳? 耳たぶ噛んだぁっ!?」


「がぶがぶ」


「いたたたた」


「ふふふふ! 痛がるべびたんおもしろい。がぶ~!」


「ぎゃあああぁ!」


「ふふ~~っ!」


「甘噛みにしては痛い! 痛いって!」


「が~ぶ~」


「させるか!」


「あっ! 力ずくなんて。いやっ。やめて」


「そんな甘い声出してもだめだよ。ほら捕まえた!」


「‥‥‥‥じゃあここ。がぶ」


(あご)!? そうきたか! いてててて」


「うっふふふふ! さてここで問題です。わたしがべびたん噛むのは婚前同居(コハビ)ルールに抵触するでしょうか?」


「しらね~よ!!」



「うふふふふっ! ‥‥‥‥がぶ!」





「ぎゃああああ!」







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ