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第4話 逢初愛依、宵闇に覚醒す①

 





「いいよね、べびたんは。中央高には泉さんも桃山さんも姫の沢さんもいて。おまけにコーラさんまで?」


「たまたまだって」


「でもみんな一緒で楽しそうじゃない? わたしはやっぱりべびたんと同じ高校通いたかった」


「いいじゃん。こうして婚前同居(コハビ)で一緒に住んでるんだし」


「ぜったい中央高校の方が楽しそう。東校って『自分がイチバン頭良い』って人の集まりだから」


「クセが強い人の割合が多いのはまあ‥‥。でも毎晩一緒に勉強してるじゃん? 今だってこうして」


「学校でも一緒がよかったもん」


「わかった。‥‥ごめんよ。今日はもう勉強止めてこうしてよ?」


「‥‥ん‥‥こんなハグされたって誤魔化されないもん」


「まだ体調悪い? お腹痛くなったらまた人間湯たんぽやるからさ‥‥」


「‥‥う‥‥うん。まだ悪いけど‥‥‥‥」


「昼間はさみしい思いをさせちゃうね。ごめんね。僕もできれば愛依と同じ高校が良かったな‥‥」


「べびたんはちゃんと努力してたよ」


「でも合格圏には入れなかった。それは事実」


「でもすごくがんばってた。わたし見てたから。担任の先生も驚いてたし」


「そうだ。昼間逢えない分、夜どうするか考えようよ?」


「え? いいけど、何かどんどん勉強しない方向に向かってるような?」


「コバビ会議だよ。こうして僕と愛依がハグしてるのは、婚前同居(コハビテシオン)のルール的にセーフでしょうか?」


「セーフよ。きっと。‥‥だってあったかくて気持ちいいんだもん」


「なんか全然答えになってなくない? まあいっか。じゃあこうしてもっとぎゅ~~ってしたら?」


「んん~~!」


「あ、ごめん痛かった?」


「ううん大丈夫。もっとして」


「愛依さん答えは?」


「OK。ぎゅってされたら逃げられないから」


「それも答えになってないような」


「だって。べびたんとこうしてるのって幸せなんだもん。べびたんと話してると心がトゲトゲしてたのが、取れてくるよ」


「ふうん?」


「不思議だよね。‥‥‥‥あのね。わたしの個人的な感覚なんだけど、コーラさんはべびたんのこと気にしてるよ? ラポルトの頃から」


「ええ!?」


「そうよ? きっと」


「コーーラが~~!!?? マジか」


「雑なリアクションしないで。彼女の気持ちも大事にしてあげて」


「だってコーラだよ? 180cmのバスケ部を組み伏せて卍固めキメるヤツだし‥‥」


「聞いて。あのね。このまま婚前同居(コハビ)が順当に進めば、わたしはべびたんの第一席妻(ファースト)になれちゃう。あくまで順当に進んだと仮定した不確定な未来の憶測の予想のお話よ?」


「ずいぶん予防線張るね? 僕はもうそのつもりだけど? でないと婚前同居(コハビ)なんてしないよ?」


「‥‥‥‥今さらっとものすごく重要なこと言った気がするけど‥‥ええと‥‥どこまで話したっけ? そうそう、第一席(ファースト)になったら、やっぱり『次』のお話が出てきちゃうじゃない?」


「『次』ってつまり第二席(セカンド)第三席(サード)の事?」


「そうよ。お義父(とう)様だってだいたい4年おきに娶られてるし。最初が決まったら『次』の準備になるでしょう?」


「う~~ん。今は愛依の事しか考えられないなあ」


「‥‥ひゃっ!? ‥‥やだ」


「あ、でも言いたい事はわかるよ。男子の生まれが少ないこの国じゃあ『ちゃんと4人と結婚しろ!』って同調圧力ハンパ無いし」


「そうよう。そうしないとわたし達がおばあちゃんになる頃には国が亡んじゃうよ」


「で、なんだっけ?」


「うんそれでね。第一席(ファースト)ってだんな様を独占できる一番いいポジションだと思うんだけど、次、その次、って奥さんが増えちゃうと、独占比率がどんどん下がっていくさみしいポジションだとも思うのよ」


「100%、50%、33%かあ。あ、第四席(ラスト)なんて『ロマン枠』なんて呼ばれてるしねえ」


「そうなのよ~。一夫一妻制の時代ですら、若くて綺麗な後妻さんが全部持って行ったなんてお話残ってるしね」


「女子はそういう話詳しいな」


「だから、わたしが第一席(ファースト)になれそうなのはうれしいんだけど、その先の将来が不安なの。だからわたしの見えない中央校で女の子とどうしてるのかな? って気になっちゃうの」


「う~~ん。何とかみんな幸せになる方法は無いのかな? 一夫一妻制にする?」


「それはそれで別の問題が。赤ちゃんの数が確保できないし、べびたんと結婚したかった女の子が3人不幸になる、って事よ?」


「そっかあ。愛依は冷静だね。うちの家はどうなんだろ?」


「べびたんのおうちは理想的よ。全員集まってわいわい食事して。楽しかったよ」


「そりゃ良かった」


「うちは通い婚家(コミュート)だったから。大勢で食事をするのも、お父さんが家に帰ってくるのも、家族が仲良くしてるのも、全部うらやましい」


「愛依!」


「‥‥んん‥‥!」


「大丈夫?」


「大丈夫だけど、急にぎゅ~~ってされたからびっくりした」


「つい力が」


「何?」


「えっとね。そういう物、全部僕が用意するから。全部僕が満たすから。愛依には今までも、これからも、ずっと笑って暮らして欲しいんだ」


「‥‥べびたん‥‥」


「うん。誓うよ」


「違うの‥‥‥‥」


「え?」


「‥‥‥‥耳元でそうやって、こしょこしょってささやかれると、くすぐったい」


「‥‥‥‥‥‥こう?」


「ひゃああ! うふふふ」


「ははは。止めようか?」


「え~~。やめなくていい。‥‥‥‥‥‥べびたん」


「何?」






「ありがとう」




「うん」




「‥‥‥‥じゃあ、そろそろ勉強に戻ろっか?」


「そこは冷静なんだ」






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